第7話 魔法実技
次の日、俺達は魔法の実技を行うために学園の練習場へ来ていた。
練習場は思ったよりも広い。そして周りが石壁で覆われている。最悪壊れるのを防ぐためなのだろう。
「では、今日は炎魔法〈火炎〉の実技訓練を行うわ。気を引き締めるようにね!」
「「「はい!」」」
怪我人とか出たらどうするんだろうか。まあ異世界だし責任問題とかは無いのかな。
「それでは三つのグループに別れてやってもらうわ。全員ができるように順番にやっていって。」
そう言って先生はグループを発表していく。生徒達は言われたグループに別れる。
「雫さん。同じですね。」
「雫様。私も同じです。」
「あぁ、よろしく頼む。」
偶然にもマインとアリスは同じグループになった。
「このグループでこれからの授業も受けることになるわ。仲良くするように。」
このグループでずっとやるのか。改めて同じで良かったと思う。
「それじゃあ始めっ。火をつけられるレベルまでいけたら先生に報告して。できたら今日は終わりよ。」
生徒達は一斉に魔法を撃ち始める。
バァンッという音
スッと不発の音など様々だ。
途中まで上手く行っていても射出ができない、というケースが多いようだ。
射出は魔力を外に出す、というイメージは案外難しいらしい。
術式の構築、魔力を外に出すイメージ、魔力を射出するイメージ。この三つを同時にイメージすることがコツだ。しかしこれが簡単にはできない。
俺は辞書の性能に頼って魔法を使っていたので調整が苦手だった。それ故に学校の時間もフルに使って練習した。おかげで今では調整もできる。
火をつけて授業を終わらせて帰ってもいいのだが、この学園の目的は他者より強くなることだ。今のうちに周りを見て、その上で周りの人の強さを判断するに越したことはない。
なので俺は今周りを見ながら初級編の魔法を辞書から見ているところだ。
まあ見た感じ誰も火をつけることに成功する気配はないので現状は注意する必要も無いかと思う。
それが分かっただけでも十分な収穫だ。今日はもう帰ろう。
「先生。」
「ん?どうしたの?もうできた?」
「はい、できました。」
「へ、へえ。すごいわね。」
「帰ってもいいですか?」
先生も出来る子がいるとは思ってもいなかったのだろう。
「じゃあ見せてくれる?」
そう言いながら先生はロウソクのようなものを出す。これに火を付けろということなのだろう。
「炎魔法〈火炎〉」
俺は魔力を調節してロウソクに火を付ける。
先生は驚いた顔をして見ていた。
「できてますよね?」
「え、えぇ。たしかにできてるわ。」
「今日は帰っていいですか?」
「帰っていいわ。明日は武術についてやるから、体を休めるように。それじゃあ、さようなら。」
「ありがとうございました。さようなら。」
軽く挨拶をして部屋へ戻る。武術は元の世界での経験もあるし得意な方だ。でも異世界の武術は特殊かもしれない。
武術について少し不安に思いながらも早く終わってしまった分、この一日を無駄に過ごすのだった。