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勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから――  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第四章 勇者村内政編

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第79話 リィを治療(全力で)

 村長宅を出て、屋敷に戻る頃には夕暮れになっていた。

 厨房の辺りから夕餉の支度をする煙が昇っていた。


 屋敷に入ると、東側の部屋にいるエルフのフィオリアを訪ねた。

 扉をノックして尋ねる。

「ちょっといいか?」

「うん、いいよ。ケイカさん」

 リィの明るい声が聞こえたので中に入った。



 ベッドとテーブルとイスがあるだけの簡素な部屋。

 今はみんな似たようなものだった。

 リィはテーブルに紙を広げて、何か書いていた。見た目14歳ぐらいの少女。

 ハーヤは部屋の隅でごそごそしている。


「お母さんは夕飯の手伝いしてるよ」

「そうか。リィは勉強でもしてたのか?」

「ううん、違う。お屋敷の庭に植える木は、どうしようかなぁって考えてたの。ケイカさんは高い木を並べるのがいいのね?」

「そうだな……目隠しや風を防げたらいいと思ってな」


「なるほど~。だったら、柵から1~2メートル離れたところに等間隔に木を植えて、柵の傍は密集しても育つ低木がいいかなあ? 種類を選べば2メートルぐらいになるし」

「生垣か。それいいな」

「わかった。そうするねっ」

 リィは、ふんふーんと鼻歌を歌いながら屋敷の見取り図にペンを走らせた。肩で切りそろえられた緑髪がさらさらと揺れる。


 

 俺はハーヤに近寄った。

「ハーヤ、ちょっと頼みたいんだが」

「なんでしょーか、ケイカさん」

「これ、改良できるか?」

 村長から借りてきた咎人判定の玉を、懐から出した。


 村長宅よりで見たときよりも、強く紫の光を発している。

 傍に光属性のリィがいるからだろう。

 やっぱり新式に対してはステータス表記を変えただけじゃダメなんだな。



 玉を見たハーヤは細い眉を寄せた。とても嫌そうだった。

「まがまがしいオーラが出てます。気味が悪いです」

「咎人判定機だそうだ。おそらく光属性がいると紫に光るんだろう」

「そのよーですね」

 玉を受け取ったハーヤは、眉をしかめながら、小さな手で回して叩いて調べていた。


「これを……そうだな、魔物が来たときに紫に光るよう改善できるか?」

「むう……できなくはないですが。魔物と普通の生き物を区別する定義がわかれば、可能です」

「あぁ、そうか」


 グレウハデスやエビルスクイッドは完全な魔物だ。

 しかし大きな狼やトカゲなんかは普通の生き物とも考えられる。

 結局のところ、人の意識の違いに過ぎない。

 例えばナーガ族を魔物とするかどうかは人それぞれ違うだろう。



「うーん。じゃあ、闇属性が来たら光らせるようにはできるか?」

 ――今のところ、人は四大元素か光ばかりで、闇はほとんど見かけなかった。

「それならお安い御用です」

 ハーヤは短い手で、とんっと胸を叩いた。三角帽子がふわっとなびいた。


「じゃあ、そういうふうに改造してくれ」

「いえっさー。仕上がりは明日の朝になりますー」

「わかった」

 ハーヤは小さなハンマーやノミ、バーナーなんかを取り出して改造を始めた。


 俺は紙とペンを借りて魔法陣を描いた。咎人判定を誤魔化す積層型魔法陣。

「あと、これを鉄片に刻めるか? 小型化していくつか作って欲しい」

「はーい。これは玉の力を無効化できますね。がんばりまーす」

「よし、頼んだ」

 ハーヤはるんるん♪と楽しげに、道具を持って工作を始めた。

 これでファルやリィやセリカ、他の咎人たちも安全を確保できることだろう。



 ふと顔を上げると、リィが興味津々な視線で俺たちを見ていた。いや、ハーヤの手元を熱心に見ている。


 ――ああ、ちょうどいいな。

「リィ。体の悪いところを治すから、ベッドへ横になってくれないか。上は脱いでくれ」

「え……今?」

「ああそうだ。前にやったのと同じことだ。すぐ済むから」

 ティルトに教えてもらったので、種族と年齢が分かっていた。

 あとはステータスを改変するだけ。



 リィは顔を赤らめて俯いた。

「は、恥ずかしぃよぉ……」

「治さないと、またおかしくなるぞ?」

「う……わかった」

 ゆるゆると時間を掛けて服を脱ぎ、ベッドへ横たわった。

 

 細い腕で胸を隠しているが、隠し切れない白い肌が眩しい。

 幼さの残る端整な顔とエルフの長耳だけが赤かった。



 俺が横に座ると、ベッドがギシッときしんだ。

 胸を隠す細い両手を、片手で掴んで彼女の頭の上で押さえた。

 それから薄い胸や華奢な体に手を滑らせる。


「あ……っ。ああっ……」

 リィは育ちかけの華奢な肢体を震わせた。我慢できないのか、長い脚が交差する。短いスカートがめくれて下着が見えた。


「できるだけ動かないでくれ」

「だ、だってぇ。くすぐったいんだもん……ぁんっ」

 指先の動きにあわせて、ビクッと肢体が跳ねるように揺れた。


 またステータス表記をミスったら大変なので、白い肌に優しく触れて、慎重に動かした。指先にすべすべした温かさが伝わる。



 リィは整った顔を歪めて目をつむり、ぐっと歯を噛み締めていた。

 それでも花のように赤い唇から我慢できない喘ぎを漏らす。

「うぅ……。あぅっ……!」

「痛いか?」

「だ、大丈夫だから、早く終わらせてぇ……」

「じゃあ、動くなよ」

 さらに指先を動かす。


「や、やっぱり――むりっ!」

 リィは身をよじって逃げ出そうとした。肩までの緑髪が激しく乱れる。

「こら、危ないっ」

 変更途中で終えたら、余計に危険だった。


 俺は強引に彼女の薄い腰の上にまたがると、左手で肩を押さえつけながら、右手で胸の形をなぞった。

「やだぁ……ッ! んぅっ」

 俺の下で暴れるが、華奢な細腕は俺の胸を力なく押すばかり。


 手を少し強く動かしては、脇腹や首筋に指を這わせた。

 リィは頬を赤く上気させて、はぁはぁと荒い息を吐く。



 押さえつけたため変更しやすくなった。

 数値と表記を一気に書き換える。

 ――信者数1000人。

 今の俺なら、表層じゃなく少し下の部分まで書き換えられるはず――。

 華奢な肢体へもぐりこむように指先に力を込める。湿った汗が指に絡む。 


「ああ――ッ!」

 痛みが走ったのか、リィが切なく喘いで、華奢な肢体を弓のように仰け反らせた。

 最後は額に手を添え、真理眼で見た。

-------------------

【ステータス】

名 前:リィ

性 別:女

年 齢:72

種 族:ハーフエルフ

職 業:精霊使い

クラス:精霊術師Lv8 魔道具技師Lv1 庭師Lv1

属 性:【木】【光】

-------------------

「よし。成功だ……どうだ、体の調子は?」

 俺は横へ移動しながら言った。

 リィは答えず片手で目を覆って、はぁはぁと薄い肩で荒い息を繰り返していた。スカートがめくれて細い足が付け根まで見えてるのに隠そうともしない。

 俺はくしゃくしゃに丸まっていた上着を拾うと、彼女の体にかけてやった。


 ぽつりと、リィが息の合間に言った。

「頭が、ぼぉ~っと、する」

「え? 大丈夫か? ちゃんと治したはずだが」

「……それは、わかってる、けど、違うのっ」

 怒ったような口調で言いながら上体を起こすと、半裸のまま俺の胸にもたれかかってきた。じかに触れる火照った肌が、溶けるように柔らかくて熱い。



「本当に大丈夫か? 体も熱っぽい」

「……体はさっきよりもっと軽くなった感じがする」

「それはよかった」

 ほっとして、離れようとしたら、和服をつかまれて逃げられなかった。


 至近距離から上目使いで見上げてくる。大きな黒い瞳は熱く潤んでいた。

「ケイカさん、なでなでして」

「ん? まあ、いいけど」

 細く柔らかな緑の髪を撫でる。

 リィは撫でられるたびに、あぁ~と甘い息を漏らして、ますますもたれかかってきた。



 しばらくして彼女の様子が収まってきたので、尋ねた。

「そういえば、リィは魔道具技師に興味があるのか?」

「……うん。さっき、ハーヤちゃんからいろいろ聞いたの。けっこう面白そうかなって思った」


「ハーヤを手伝ってみるといいかもな」

「うん! そのつもり」

「頑張れ――ハーヤもよろしく頼む」

 俺はハーヤを見たが、腕が6本ぐらいに見える速さで作業していた。

 人の話などまったく聞いていなかった。


 くすっ、とリィが笑う。

「ハーヤちゃん、すごい」

「あれはたぶんマネしなくていい」

「だよねっ」

 俺とリィは抱き合いながら笑った。



 ――と。

 どたどたと廊下を走ってくる音がした。

 リィが、はっと身を引くと、急いで上着を着る。

 間一髪で、着終わったところにフィオリアが入ってきた。


「あら、ケイカさま。それにリィ。ちょうど夕飯ができましたわ。食堂へ来ていただけますか?」

「わかった、すぐ行く。丁度、リィの治療が終わったところだ」

「まあ! どうでしたか!?」

「うまくいった。おそらく治ったが。異変がないか1~2ヶ月は様子を見たいところだ」

「わかりました、ケイカさま。その間はお屋敷が素敵になるよう頑張ります」

「とても助かる。頼んだぞ」

「ええ。お任せください。……リィもケイカさまに気に入られるよう頑張りなさい」

 チラッと意味深な流し目をすると、フィオリアは部屋から出て行った。


 リィは俺へとしがみついてくる。

「だ、大丈夫よね、ケイカさん? 怒られないよね!?」

「何が? 俺は治療しただけだぞ」

「そ、そうよね。治療、だもんね」


 俺はベッドから降りた。リィも続く。

 食堂へ向かう間、リィは、かあっと頬を赤らめたまま和服の袖を指先で摘んでいた。

 

       ◇  ◇  ◇


 食堂では全員揃って夕飯を食べた。

 大きなテーブルに全員で座る。

 ミーニャとクラリッサが腕を振るったようで、豪華な食事がテーブルに並んだ。

 干し貝と新鮮なサラダ、川魚のムニエル、カツ揚げ、野菜のかきあげ、甘酢団子あんかけ、柔らかいパン、大きな鳥の丸焼き、肉とキノコのクリームシチュー。


「さあさあ、食べておくれ。お祝いの豪華料理だよ!」

「いっぱい作った……食べて」

「いただきます」

 みんないっせいに食べ始める。どれも一口食べると頬が緩む美味しさ。


「このサラダ、懐かしいですわ」

 セリカが微笑んで手を動かす。発酵させたような酸っぱさのあるサラダ。白菜の漬物っぽい味。エーデルシュタインの名物らしい。

 クラリッサを見ると、ニヤッと笑った。


「おかわりもまだまだありますよ! さあ、食べた食べた!」

 美味しい料理と賑やかな会話。


 ――大勢で食べる料理はうまいな。

 そんな事を考えたら、ふいに笑みが浮かんだ。 



 楽しい夕食は続き。

 旅の疲れは笑い声の中に消えていった。


 しかし夕食後にショックな出来事があった。


 ――この屋敷には、風呂がなかった……。

 仕方ないので水浴びをして我慢した。

 なんとかしたいが、まだ先にすることがあった。



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