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勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから――  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第四章 勇者村内政編

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第78話 ケイカ村の屋敷

 第三章エピローグに、たまごを真理眼で探しても見つけられなかったからバリアムークは持たされていないようだ、というような文章を付け加えました。

 前話の森の魔法陣の説明を少し変えます。解除できないのは同じです。

 翌日の昼頃、俺は王都の北にある村へ帰った。1ヶ月以上離れていた。

 いくつかの麦畑はもう黄金色に色付き始めている。

 秋の訪れを感じさせた。


 ブーホースに乗るフィオリアが畑を眺めて呟く。

「よく実ってます。気持ちがいいものですね」

 一緒に乗るリィも、こくっと頷いた。心なしか微笑んでいる。



 まずは、俺の屋敷へと向かった。東の端にある。

 村の外れの広い敷地。柵で覆われた中は縦長の長方形をしている。幅30メートルほどで、奥の建物も同じぐらい。

 敷地だけなら村長の家より広かった。そのために村はずれの空き地を指定したんだが。


 建物は3つあり、すべて平屋建て。一番奥に俺たちの住む屋敷。敷地の真ん中には壁のない板張りの舞台。そして右手には5部屋続きの長屋があった。

 正面からは見えないが裏庭もある。


 ようは、本殿、拝殿、社務所という、典型的な神社の間取りで作ってもらった。

 こっちの技術で作ったため、和洋折衷な屋敷になっているけれども、俺の社に違いない。

 ニヤニヤ笑いが止まらない。



 セリカが見渡しながら言った。

「立派なお屋敷ですわ。静かで、素敵だと思います」

 ファルが頷いて同意した。

「なにやら神聖な感じもします。よい雰囲気です」

 ――さすが修道士。肌で感じ取ってくれたらしい。


 俺は満面の笑みで頷く。

「うんうん。勇武神になる俺が住むんだから、これぐらいでないとな」

「しかし二階建てや三階建てにはされなかったのですね」

「この村の技術じゃ難しいだろうし、出来るまで時間がかかってしまうからな。農作業もあるから、あまり人手はかけられない」

「ああ、そこまで考えられていたのですね。さすがケイカさまです」

 セリカは心の底から感心していた。


 ミーニャが尖った耳をぴこぴこさせて首を傾げる。

「厨房は、どこ?」

「奥の屋敷の裏手になるはずだ」

「ん。楽しみ」

「家も見てみようか」


 俺たちは拝殿を迂回して奥の屋敷へ向かった。

 ――これ石畳にしたほうがいいな。大勢が歩くと地面がえぐれてしまう。周囲は玉砂利で覆いたい。この世界にあるといいが。

 あとは外周に沿って背の高い木を植えたいな。

 信者を集めるためには、それなりの威厳がないといけない。



 そんな事を考えていると、横手の長屋から太ったおばさんクラリッサが出てきた。幼い少女が一人、後ろにいる。確か一緒に連れてきた奴隷。

「おかえりなさいませ、ケイカさま」

「おかーりなさーませ」

「今帰った。みんな元気そうだな」


「ケイカさまのおかげです。お屋敷の方は毎日掃除をしております。家具は村長さまの家具をいただきました。私ども奴隷はこの長屋に住まわせてもらってます」

「ふむ。メルビウス夫婦。こちらが奴隷長のクラリッサだ。クラリッサ、インダストリアからきた2人の面倒を見てやってくれ」


「わかりました――遠路はるばるようこそ」

「よろしくお願いする――あっ」

 メルビウスの隣にいた、妻がよろめいた。メルビウスが抱きとめる。

「大丈夫か、オリビア!」 

「ええ……大丈夫、ちょっと疲れが……」


「メルビウス、奥さんをすぐに休ませてやれ。クラリッサ、頼む」

「任せておいてください――さあ、こちらですよ」

「すまない、クラリッサさん」

 クラリッサに案内されて、メルビウスは妻を抱えて長屋へ入った。

 荷物は少女が持って入った。



 俺は首を傾げる。

「薬や魔法で全快したと思ったのにな」

 ステータスに異常は見当たらなかった。


「朝はとても元気でしたのに。旅の疲れでしょうか」

 セリカが心配そうに顔を曇らせた。

「まあ今は様子をみよう。何かあったら知らせてくれるだろう」

「はい。あとで具合を聞いておきますわ」



 俺たちは奥の屋敷へと向かった。

 南に面した横長の屋敷は土台が石で上は木造。正面には丸太が柱のように並んでいる。パルテノン神殿のような外観を模したらしい。平屋の木造だけど。


 扉を開けて入ってすぐは広い玄関。

 屋敷の真ん中を仕切るように長い廊下があり、南西側に3部屋。南東側に3部屋。

 北側に5部屋並んでいて、北東が食堂と厨房になっていた。


「入ってすぐの西側の部屋は応接室にしよう。その隣を俺の部屋。いろいろ応対がしやすい。その隣はセリカの部屋にするか」

「えっ? あ、はい」

 不意打ちを喰らったような挙動不審さ。金髪が揺れた。

「ひょっとして俺と一緒の部屋になるつもりだったか」

「そ、それは……どちらでもかまいません」

 頬を染めて俯いてしまうセリカ。



「ラピシアも 部屋欲しい!」

「そうだな。廊下を挟んで北側にミーニャとラピシアの部屋を。フィオリア親子とファルは屋敷東側の部屋を使ってくれ。玄関正面の部屋は物置とする」

「えっ……? 普通、物置部屋は屋敷の端を利用するものですが……まあ、ケイカさまはいつも深い考えがありますから、お好きになさってください」

 セリカは首を傾げたが否定はしなかった。

 まあ普通はそうだろう、普通の人の家なら。


 実は玄関正面の部屋は、物置に見せかけた御神体置き場にしようと考えていた。

 こうすることにより、拝殿に参拝した人々の願いが、俺が世界のどこにいようともわかるようになる。


 

 するとラピシアが目をキラキラさせて言った。

「ラピシア、玄関前の部屋がいいっ!」

「却下。お前は入ることも禁止な」

「むう……わかった」

 可愛らしく唇を尖らせるラピシア。


 お前がそこに住んだら、ラピシアの社になってしまうだろうがぁ!

 と思ったがみんながいるので言えなかった。

 きっと本能的にこの屋敷の機能を理解したんだろう。

 子供とはいえ、さすが神。



「では、各自、部屋をチェックな」

 突然、ミーニャの背負った袋が暴れ出した。

 妖精のハーヤが顔を出す。

「ボクの部屋はどこですか?」


「物置の隣の部屋でも……いや、玄関に誰か来たとき見られるかもしれないな。――セリカ、妖精が普通の家にいていいのか?」

「妖精は不思議な力を持ってるといわれてますので、見つかったら捕獲されるか、金で売ってくれと言われるか、面倒なことになる可能性が高いです」

「また強制労働の生活はいやですー」

 ふるふると頭を振った。三角のとんがり帽子が揺れに揺れる。


「ハーヤはどうやって暮らしたい?」

「楽をして暮らしたいです。趣味は道具作りと蝉のマネです」

「俺もハーヤには道具を作ってもらいたいんだがな……屋敷の裏庭に小さな工房でも建てるか」


 するとフィオリアが言った。

「でしたら、それまでは私たちが面倒みましょうか? 妖精のことは人間よりも詳しいですから」

「それがいいか。エルフも妖精の一派と言われてるようだし。頼む」

「わかりました、ケイカさま」

「2人が面倒見れないときは、セリカが守ってやってくれ」

「はいっ、ケイカさま」



 リィが手を広げる。

「おいで、ハーヤちゃん」

「はーい」

 ミーニャの袋から飛び出して、リィの腕の中に飛び込んだ。

 少女に抱えられていると可愛らしい人形にしか見えない。


「それじゃ、部屋の確認だ。フィオリアは荷物置いたら表に来てくれ」

「はいっ」

 それぞれの部屋に入って荷物を降ろし、部屋をチェックした。



 俺はすぐに屋敷を出た。

 高い青空と広々とした敷地がすがすがしい。


 拝殿に近付いて眺める。

 四隅の太い柱で支えられた、板張りの舞台。広くはないが、神楽なら舞えそうだった。

 いつかミーニャに舞ってもらおう。



 すぐにフィオリアが出てきた。

 緑髪を風に巻かせて近寄ってくる。胸は布地を押し上げて大胆に揺れた。

「どうされたのですか、ケイカさま」

「エルフは木や植物の扱いが得意だと聞いたが本当か?」

「ええ、世界樹の世話が私たちの役目ですから。他の植物についても詳しいです」

「だったら、この屋敷の回りに、壁のように木を植えることはできるか?」


 俺の問いに、彼女は柵で区切られた敷地を見回し、またしゃがんで地面を触った。短いスカートから色気のある太ももが覗く。

「そう、ですね……宅地用の場所で少々土地が痩せてます。肥料を使うにしても、見栄えのいい異国の木々は難しいかもしれません」

「なるほど」

「近くに森か林はないのでしょうか? 同じ土地に育つ若木を持ってきたほうが根付きやすいかと思います」


「さすがエキスパート。そのほうが良さそうだな。頼んでもいいか?」

「はい、お任せください」

「じゃあ、利用してもいい林の場所を聞いてくる」

「いってらっしゃいませ」

 乱れる緑髪を手で押さえてフィオリアは見送った。


 俺は村長の家に向かった。


       ◇  ◇  ◇


 村の中央にある、2階建ての大きな屋敷。

 入口から勝手に入り、2階へと上がる。

 廊下ですれ違った女中は「ひぃ」と俺を見て驚いた。

「ゆ、勇者さま、おひ、お久しぶりです」

「村長はいるか?」

「は、はい、2階の書斎に」

「わかった」


 ノックもなしに書斎へ踏み込む。

 村長は飛び上って驚くと、俺を見て卑屈に笑った。

「こ、これは。お久しぶりでございます、ケイカさま」

 へこへこした態度で出迎える村長。怯えのためか白く長い鬚が震えている。

 自業自得なので気にしない。


「久しぶりだな」

「屋敷のほうは、もう見られましたか?」

「ああ、いい出来だった。望みどおりだ」

「それは良かったです」

 村長は心の底から安堵する息を吐いた。



「村のほうはどうだ?」

「畑の結界を広げていただいたおかげで、育ちの早い菜っ葉や根菜が収穫できました」

「よかったな。もっと畑を広げたくないか?」

「え? よいのですか?」

「ああ、いいとも。その代わり、村の名前を勇者ケイカ村に変えて欲しい」

「え、村の名前を!? 私の一存ではとても……一度村の会合で話し合ってから決めたいかと……」


「ああ、すまない。誤解させたようだな。勇者ケイカ村に変更するよう、村人や役人を説得して回れ。これは決定事項だ」

「もし、できなければ……?」


 俺はわざとらしく溜息を吐いた。

「この国のどこかに、村人総出で勇者を殺そうとした村があるんだよなぁ~。勇者はもう国王と仲良しで、王女まで助けたんだがなぁ~。次王都に行ったとき、王様に直接話してみるかぁ~」


「やります、やらせていただきます!」

 村長は顔をしわくちゃにして懇願してきた。

 ――これでますます勇者ケイカの名を広げられる。



「そうか。やってくれるか。出来るだけ早く頼むぞ――資金は」

 俺は壁まで歩いて、掛かっていた絵をどけた。大金貨が3枚あった。

「これだけあれば、話し合いもスムーズに行きそうだな」

「そ、それは、祭りの費用でして」


「祭りか。収穫祭の準備はできてるのか?」

「はい、今のところ順調です。麦の実りも多いし、大きな祭りが開けるかと」

「そうか。頑張ってくれ。……あと、木を持ってきていい林は近くにないか?」

「木材なら、東へいったところに林がありますが」

「俺の屋敷の前の道を東に行ったところか」

「そうです。春は山菜、秋には木の実を拾います」


 俺は頬に手を当てて考える。

「あんまり荒らすのも良くないな……」

 信者を一人でも多く集めなくてはいけないのに、村人の反発を招いたら意味がない。


「はい、できれば……最小限でお願いいたします」

「わかっている。林に影響が出ない範囲で持ってくるしかないな。まあエルフだから大丈夫だろう」

「エルフ!?」


「そうか、言い忘れていた。エルフの親子を2名、奴隷たちたくさん連れてきたから。あと修道士や咎人もいるな。いさかいが起きないよう注意してくれ」

「そ、そうだったのですか……わかりました。村人たちに伝えておきます」

 村長は不安そうな顔になった。



 ふと思い出して尋ねた。

「この村では、咎人はどうやって見わけてるんだ?」

「あ……この、水晶玉です」

 村長は机の引き出しから手のひらに乗る丸い玉を取り出した。紫色の妖しい光を放つ玉。

「ふぅん」

 俺は受け取ると、真理眼でじっくり見た。

【咎人判定機(新型)】咎人が近付くと光って知らせる。


 ――やはり魔王製じゃないのか。繭の中だから当然か。

 遠視のスキルは練りこまれていなかった。


「ちょっと借りるぞ」

「はい、ケイカさま」



「じゃあ、畑の結界を広げるのは明日からする」

「わかりました。よろしくお願いします」


 話を終えて書斎から出た。

 扉を閉めるとき、

「ああ、わしはなんてことをしてしまったのじゃ……努力せねばの」

 という、村長の苦悩の言葉が聞こえてきた。

内政的なことって書くの難しいですね。明日の更新は夜になりそうです。

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