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勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから――  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第四章 勇者村内政編

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第77話 レオの報告

 王都クロエの夜。

 酒場で夕食を食べていた。


 ミーニャが旅から持ち帰った新メニューが提供されていた。

 ドラゴン風ステーキ、エルフに伝わる木の実パイ、職人ご用達フィッシュバーガーなど。

 厨房でつまみ食いした親父の叫ぶ声が聞こえる。

「なんぞこれ! もう店持てるレベルじゃねぇか!」

 確かに美味い。

 このまま世界を旅したらミーニャは料理王にでもなりそうだった。



 おいしい夕食をセリカとともに楽しんでいると、黒いロングコートを着た長髪の男が傍へ来た。

 俺より高い背丈から見下ろして言う。

「ケイカさん。お久しぶりです」

「ダークじゃないか。元気そうだな」

「……部屋のほうでお話してもよいですかね?」

「わかった。俺の部屋に行こう」


 立ち上がって案内する。

 するとどこにいたのか、頭からすっぽりとローブを被った2人がダークの後ろに続いた。青年と少年の背丈。



 3階の部屋へ入った。

 俺はベッドへ腰掛けつつ言う。

「ダーク、それにレオとティルト。久しぶりだな」

 2人はローブを脱ぎながら答える。

「お久しぶりです、ケイカさん」

「……」

 不思議なことにいつもうるさいティルトが、頬を染めてモジモジしていた。


「どうしたティルト?」

「いや……その、ケイカ。仲間から聞いたよ。世界樹救ってくれて、ありがとうな」

「気にするな。ていうか、お前の獲物横取りして悪かったな」

「……呪いだったんだろ、あれ。オレじゃ倒せなかったよ。――だからもう何でも言ってくれ、手伝うからさ」

「いいのか?」

「ああ、結構生意気な口聞いたし、これぐらいしなきゃな」

 ティルトはますます顔を赤くして、頭を掻いた。


「ふふんっ、なにをしてもらうか楽しみだな――その前に、レオ。たまご捜索はどうなった?」



 椅子に座ったレオが答える。

「魔物たちに聞いたら、グレウハデスは持っていなかったそうです」

「聖女の持っていたたまごが、グレウハデスのだったらしい」

「やはり、そうだったのですか。念のために北の森を捜索してみました」

「どうだった?」


 レオが眉間にしわを寄せる。

「森には昔の街道があります。今はもう木や草で覆われてしまってますが。北へ抜ける途中に使われなくなった関所の砦がありまして、グレウハデスの私物がいくつかありました。あと街道沿いを歩いてるときは何もなかったのですが……」

 ダークが後をついで言った。

「森の木々を使った多重結界が張られていましてね。森の奥へ踏み込むと3人ばらばらにされて迷わされるんですよ」

「迷いの森か……」



 ティルトが腕を組んで頷く。

「あの森はやべぇ。何かがおかしいんだよ」

「エルフであるティルトにまで効果があるのか……ダークでも解除できなかったのか?」

「何万本もある木を使って、無数の結界が重なるようにありましたからね。すぐには無理でした」

 

「そうなのか。俺が歩いたときは何も感じなかったけどな……魔王軍が撤退する時に仕掛けていったのかもな。まあ、迷わされてしまうんじゃ調べようがないか」

 レオが青い髪を揺らして頷く。

「魔物の仲間たちも森には何もないと言ってますし、森はいったん置いといて、別の場所を探そうかと思います」

「それがいいな。心当たりはあるのか?」

「はい。魔物が言うには、世界樹にいる四天王バリアムークが持っていたそうです」


 俺は思わず、あっと叫んだ!

「あったのか! 探したのに!」

「切り株をくりぬいて、魔物の死骸と一緒に埋めてあるそうです。場所は北側のくぼ地だそうです」

「そんなとこに! ちょっと待ってくれ」



 俺は頭を掻きつつ、リリールに心話を飛ばした。

 ――リリール。リリールいるか!?

 反応がない。

 ――海ばばあ。

『……っ!』

 今、反応があった気がした。


 ――リリールは美しい。大きな瞳に長い睫毛。整った小顔には女神のような微笑みが似合う。均整の取れた長い手足はしなやかに。海のように豊かな胸。くびれた腰、引き締まったお尻。波のようになだらかな曲線。肌は真夏の砂浜のように白く。髪は長く……。

『や、やめてくださぃ! 恥ずかしいです、ケイカさん! 私の全裸をイメージで伝えてこないでくださいっ』


 ――聞こえてるじゃないか! それより、今どこにいる?

『今、エルフの村にいますよっ。ネビュラさんは無事に村へ帰しました! 世界樹がまた弱ってきてるそうなのでしばらく様子見です!』

 ちょっと怒った口調で言うリリール。顔が真っ赤になってるところが想像できて可愛い。


 ――ああ、よかった。世界樹のところにバリアムークが持ってたたまごがある。

『えっ!? 本当ですか!! 調べたのになかったではありませんか』

 ――切り株を掘って、魔物の死骸と一緒に埋めてある。場所は北側の一段低くなった辺りだ。探してみてくれ。

『そんなところに! ……わかりました。すぐに探しますわ』

 ――頼んだ。



 俺は、ため息を吐いた。

「何やってんだ、俺。あそこまで行っておきながら埋められてる可能性まで考えてなかった」

 ――真理眼に頼りすぎたな。


「かなり巧妙に隠したそうですから、仕方ないですよ」

「まあ、バリアムークのたまごは回収してもらうよう依頼したから、たぶん大丈夫だ」

「えっ、今ので!? ケイカってすげぇな」

「どういう魔法でしょうか。想像が付きませんね」

 ティルトとダークが感心していた。

 神の力だとは言えないので黙っていた。



 レオが言う。

「じゃあ、もう一つのたまごを探してみます。四天王に次ぐ実力者が持っているそうです」

「そんな奴がいるのか。どこにいるんだ?」

「吸血鬼の王らしいのですが、王国の東南辺りに住んでいるらしいです。詳しい場所はまだ不明です」


 なんだかぼんやりとした情報に、俺は首を傾げる。

「魔物の仲間の情報なのに、えらくアバウトだな」

「その吸血鬼、魔王軍に協力しているはずなのですが、なぜか情報が出てこないのですよ。魔王にすら情報を隠しているとか」

「え? そうなのか。よく魔王が許しているな。実力者か、もしくは寵愛を受けているか」


「とても恐ろしい奴だそうで。領地は地獄のような惨状になっているとか」

「ほう。気をつけて調べてくれ」

「特定できましたら、また知らせます」

 ――これで4つか。



「もう1つは最後の四天王だな」

「5つ目がゲアドルフですね。6個目は調査中です」


 椅子に座ったティルトが頬杖を突きながら言う。

「ゲアドルフは組織運営のためにあちこち飛び回ってて、魔物仲間でも所在が掴みにくいってよ」

「一人で運営するとなると寝る暇もなさそうだな」

「必ずスケジュールを掴んで知らせてみせますよ」

 ダークが長髪を揺らして余裕で答えた。



「ドラゴンはどうしてる?」

「ダンジョン作ってるみたいですね」

「それがいいな。下手に動かれると『人間とは不干渉』という前提が崩れる。レオの身がやばくなるしな」

「そこはもう、あなたは動かず我々に任せてくださいと、お願いしておきましたからね」

 ダークが眼鏡をくいっと指で押し上げながら言った。


「まあ、自分で探して一つも見つけられなかったんだから、頼ってもらったほうがありがたい」

 というかドラゴンにとっては、自分の力を超えたデウス・エクス・マキナに等しい。まさに神による直接救済。

「あの図体は目立ちますしね。言い訳ができないですよ」

 ダークが、苦笑しながら言った。



 ふと、思いついた。

「レオにお願いがあるんだが」

「なんでしょう?」

「今は正体を隠して活動してるんだよな?」

 彼が手に持つローブを見ながら言った。


「そうです」

「だったら、勇者ケイカの仕業に見せかけてくれたら助かる」

「なぜでしょう?」

「魔王を倒すためには多くの人々に信頼される――つまり、名前が知られていないといけないらしい」


「なるほど。みんなの祈りが必要なのですね。わかりました、なんとかします」

「手柄を横取りするようですまない」

「いいんです、救っていただいた身ですから。この命、ケイカさんのものですよ」

 レオは青髪を揺らして、爽やかに笑った。

 本心から言ってるのがわかり、感心しつつ苦笑した。いい人すぎる。

 ダークとティルトは手を広げて呆れた仕草をしていた。



 ――と。

 コンコンとノックの音がした。

「誰だ?」

「わ、私です、ファルです。ケイカさんっ」

「ああ、入ってくれ」

「失礼します」


 濃紺の修道服を着たファルが部屋に入ってきた。

 レオを見るなり一瞬、立ち止まる。

 そして泣きながらレオへとしがみついた。

「レオ兄さぁんっ!」

「ファル、無事でよかった」

「もう、とっても心配したんです! よかったぁ。生きてて本当に良かったぁ!」

 ファルはぎゅうっと抱きついた。

 レオは微笑みつつ、頭を撫でた。

 ――見てるだけで癒される。助けてよかったと心から思う。



「部屋に戻って兄妹で久しぶりに話したらいい。ファル、出発は明日だ」

「わかりました、ケイカさん。本当にありがとうございます!」

 腰を深く折って頭を下げた。ベールが脱げて茶髪が広がる。

 レオがくすっと笑うと、ベールを拾って言った。

「ファルは変わらないね。――じゃあ、行こうか」

「はい、兄さん!」


 ティルトとダークも立ち上がる。

「ではレオ。私たちは宿に戻っていますから」

「気をつけろよな~」

「ありがとう、二人とも。ケイカさんもありがとう」

 レオはお礼を言いつつ、ファルとともに出て行った。


「じゃあな、ケイカ」

「また報告に来ますよ」

 ティルトとダークも部屋を出ていこうとする。

「あ、ティルト。隣の部屋にフィオリアがいるぞ」



 ティルトは立ち止まり顔をしかめた。

「オレ、フィオリアねーちゃん、苦手なんだよな……」

「リィもいるぞ。お前と同じぐらいの年恰好だ」

「え、ちょま、まじ! ――あ~、そっか。リィ、ハーフだから成長早いんだな。ちっちゃいころは可愛かったのによー」

「仲良いのか」


 ティルトはビシッと親指で自分を指し示す。

「オレの舎弟みたいなもんだぜっ!」

「だから母親に余計に嫌われたのか。舎弟引き連れて悪さしてたんだろ」

「うっせ! 村にいた頃のことはもう忘れた!」

「やんちゃな黒歴史か」

 ――でも、差別も区別もなく、ハーフエルフのリィと友達をしてたんだろうなって気がする。


「でも懐かしいなぁ。リィはちょうど70歳下なんだよな。誕生日も同じで」

「……な! 彼女の歳を詳しく教えろ!」

「な、なんだよいきなり……。今オレが142歳だから、72歳か」

「そうかそうか。助かった。詳細な歳が分からなくて困ってたんだよ。じゃあ父親は人間だな」


「そうだぜ。つーか、エルフは数千年生きるから年月はおおざっぱなんだよな。オレは小さい頃から人間社会に出たから細かい年数まで覚えてるけど」

「まあ、顔見せたら喜ぶかもな」

「わかったよ……ダーク、悪りぃ、一人で帰ってくれ」

「はいはい、どうぞご自由に」

 呆れたように言うものの、ダークは見守るような微笑みを浮かべていた。


 

 そして2人は出て行った。

 一気に広くなる室内。

「またしばらくは報告待ちだな。――食べかけの夕食、片付けてくるか」 

 俺は立ち上がると、酒場へと戻った。


 食事中、リリールから連絡があり、無事たまごを手に入れたと聞かされた。

 見つからなかったのは、世界樹の生命力で穴が完全に塞がっていたからだった。


 で、掘り返す際、腐った魔獣のゾンビに襲われて液体まみれになったらしい。

 ――見たかったな、濡れて透けてるところ。

『もうっ! 変なこと言わないでください! 絶対見せませんからねっ!』

 まだ怒っていた。



 話してる感じでは無事なようだが、毒や酸で怪我をしてないか少し心配だったので世界樹の方角を千里眼で見た。

 きめ細やかな肌がケロイドにでもなってたら、さすがに心が痛む。


 すると切り株の傍で泉を作って水浴びをする絶世の美女がいた。

 月光を浴びて、水滴を弾く白い肌が妖しく光る。張りのある形の良い胸。均整の取れた素晴らしい曲線美。

 腰まである桃色の髪が美しく濡れていた。

 怪我一つない完璧な女神。


 ――よかった、怪我してないな。ていうか髪の色、桃色だったんだな。珍しい。

『へ? ――きゃああっ! へんたい!』

 リリールは顔を真っ赤にして泉に屈みこんだと思ったら、パシャッと水面を叩いた。

 結界が張られて俺では見れなくなってしまった。残念。



 ニヤニヤしていたら、横にいたセリカが、じーっと見つめてきた。

「ケイカさま……? 何かいやらしいことを考えられてますね?」

 セリカの勘は鋭い。

 でも、俺は誤魔化さない。

「よくわかったな」

「もうっ……ダメなんですからっ」

 セリカは頬を膨らませて、ぷいっと横を向いた。


 その膨らみを指で突いてみた。ぷっと可愛い唇から変な音が漏れた。

「なにをされるんですかっ」

 セリカはよほど恥ずかしかったのか顔を耳まで真っ赤にして、ぽかぽかと叩いてきた。

「ごめん、悪かった」

「もうっ、もう!」

 恥ずかしがりながら怒るセリカが可愛くて、謝りながら何度も金髪を撫でて許してもらった。

とんでもないミスを今回で強引に修正。

しばらくは毎日1話更新。

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何度も改稿してなろう版より格段に面白くなってます!
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