表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから――  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第三章 勇者冒険編・山

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/284

第67話 四天王バリアムーク!

 俺は砂漠を進んでいた。

 はるか前方で繰り広げられる戦いを《千里眼》と《多聞耳》で見ていた。


 直径数キロメートルの世界樹の切り株の上と下で、四天王バリアムークと大海神リリールは対峙していた。



 バリアムークは金色の体を光らせて笑う。

「さあ、3回攻撃して来い。俺には一切通用しないことを教えてやる! ふははは!」


 俺は《真理眼》で見る。

--------------------

【ステータス】

名 前:バリアムーク

種 族:魔造鬼人

職 業:魔王軍特殊部隊長

属 性:【怨闇】


 攻撃力:9999

 防御力: 800

 生命力:1900

 精神力: 500

自動回復: 300


【スキル】

殴打:

蹴り:

衝撃波ソニックウェーブ:腕を振って衝撃波を飛ばす。範囲攻撃。


【データ】

すべての攻撃は通用しない。

【装備】

布マント

布パンツ

聖金箔の肌:聖金を金箔にして貼り付けてある

--------------------

 あれ? あんまり強くないぞ?

 攻撃さえ通じたら、セリカやミーニャでも倒せる。

 司令官でもない。

 あの金箔。張ってあるのか。趣味が悪い。



「いいでしょう。では、まず――」

 リリールは地面を蹴った。白い修道服が翻る。

 砂を巻き上げてバリアムークに襲い掛かった。

「ハァッ!」

 鋭い気合とともに、水に覆われた拳で殴る――。


 ドゴォォンッ!


 空気が、地面が、激しく震動する。

 攻撃力888万の神の一撃。



 しかしバリアムークは平然と立っていた。

「んん~? 何かしたかな? 痛くも痒くもないぞ、ふははは!」

「くっ。噂どおりですね」

 リリールは後方に下がって構えた。


 なぜ、効かないと分かっていながら攻撃をしたのか疑問に思った。

 が、すぐに俺に見せるためだと気がついた。情報は助かる。


 でもどういう理屈だ?

 物理攻撃は無効でも、ふっとばされるはずだが。

 生み出したエネルギーもすべて吸収している?

 いや、そんな反応はないぞ?



 リリールは腕を振った。それだけで彼女の後方に巨大な高波がザアッと現れる。

 ――ほう。海の一部を召喚して、海自体には影響が出ないようにしているのか。


「大海の波よ 我が手に集まれ……」 

 リリールの手に後ろの高波が青い帯となって流れ込み、青い光が凝集していく――。


「――轟圧水波アクアレーザー!」

 超圧縮された水が一筋の線となって、手から放たれる。


 ドラゴンの鱗すら紙のように切り裂く!


 バシィッ!


 激しい衝撃がバリアムークを襲った。

 しかし、その金色の体の前にバシャバシャと跳ね返るのみ。

 腕を組んで平然と立っている。


「んん~? これが貴様の全力かぁ!? たいしたことはないなぁ!」

 あっはっはっと高笑いするバリアムーク。



 チッとリリールは舌打ちした。

 美しい顔が険しさで歪む。


「やはり効きませんか……ではもう一度」

 リリールは細い腕を振る。また背後に巨大な波が現れる。


「芸がないぞ? もっと俺を楽しませてくれないとなぁ!」



 リリールは無視して手を胸の前で合わせて祈った。

「大海よ 空間を満たせ ――大水域アクアプール


 バリアムークを中心にして、100メートルほどの青い水の柱が出来上がる。

 直径は太く、数百メートル。何百万トンもの水が輝く。

 リリールは同じ水柱の中に入っていた。白いベールと修道服がゆらゆらと揺れる。



 単純に水を集めて満たすだけの魔法。


 しかしバリアムークは喉を押さえて、口から白い泡を吐く。

「グボッ……ガボッ!」


 バリアムークは泳ごうとするが、それに合わせて水柱は移動する。


 ――お。これは倒したか?

『どうでしょう……。油断はできません』

 


 バリアムークがさらに白い泡を吐いて動きが止まった。

 1分がたち、2分が過ぎ。


 5分後。

『これは、倒したのでしょうか?』



 ――と。

 バリアムークが顔を上げた。ニヤリと強い笑みを浮かべる。

 そして金色の豪腕を振った。


 ズドォンッ!


 水柱は吹き飛ばされ、辺りの砂漠に水を散らせた。


「ふはは! いかなる攻撃も、魔法も、俺の前には無力化されるのだ! 思い知ったか!」

「な、なんですって! アクアプールすら!」



 ――ば、ばかな!

 相手を対象に取らない攻撃外魔法ですら跳ね返すというのか!

 

 これで俺の考えていた方法は無理になった。

 真空を作って窒息させてやろうと考えたのに。


 いったいどういう理屈で無効化してるのかさっぱりわからなかった。



 心話で話しかける。

 ――とりあえず、逃げろ! リリール!


 バリアムークはニヤニヤ笑いながらリリールへ近付く。

「3回終わったな? ――次はこちらの番だ!」


 バリアムークは世界樹の切り株の上から飛び掛った。

 あまりの速さに金色の光の帯を引く。

 繰り出される速度の乗った拳。



「くっ!」

 リリールはとっさに避けようとしたが間に合わない!


 ドゴォォッ!


 バリアムークの金色の腕が、リリールのお腹に突き刺さった。


「ぐはっ!」

 口から息をすべて吐き出し、吹き飛ばされるリリール。


 防御値1700万ぐらいあったはずだぞ!?

 攻撃なんて通用しないはず!


 俺はとっさにリリールを《真理眼》で見た。

--------------------

名 前:リリール

生命力:7976万/8865万

精神力:8933万/8935万


攻撃力:888万

防御力:1770万

魔攻力:2670万

魔防力:1794万

--------------------

 1割減った!?

 ダメージ889万……!?


 リリールの攻撃力にバリアムークの攻撃力(1万)が加算されてる!?


 え、防御値無視!? 意味が分からん!

 こんな攻撃、聞いたことないぞ? 



 砂漠に横たわるリリール。

「かはっ! ……効きましたね」

 彼女は上体を起こしながら喀血した。


 バリアムークが腕を伸ばした。

「効くのは、これからだぞ! ――ふんっ!」

 金色の腕を素早く振る。

 巻き起こる旋風。ほとばしる疾風。

 含まれているのは強大な魔力!



 ――よけろ、リリール!


 リリールはふらつきながらも立ち上がり、横へ飛んだ。


 ズァンッ!


「あぁ……っ!」

 胸から左腕を風の刃が切り付ける。赤いしぶきが飛び散った。

--------------------

名 前:リリール

生命力:5306万/8865万

精神力:8933万/8935万


攻撃力:888万

防御力:1770万

魔攻力:2670万

魔防力:1794万

--------------------

 3割減った。――いや、正確には2670万減ってる!

 魔法防御力を無視して、魔法攻撃力分のダメージを与えてる!


 ダメージ反射か!?

 それにしては条件がおかしい。

 バリアムークのステータスを見たが変化はなかった。

 どういうことだよ、これ!



 ――とにかく逃げろ、リリール!

『私が……死ぬわけにはいきませんものね――』

 

 リリールは立ち上がると口の端から血を流しつつ唱える。

「――波流神脚フローフルーレ


 ザザザッと砂煙を上げてリリールは駆け出した。

 風よりも早く駆け抜ける。まさに神速。



 バリアムークは大股に歩き出す。

「どこへ行く気だ? 俺から逃げられると思うな! はっはっは」

 そしてリリールのあとを追いかけて駆け出した。


 驚くことに、神の速度についてくる早さ。

 盛大に砂煙が巻き上がった。



 ――ダメだ、追いつかれる! こっちにこい!

『あなたがたに迷惑が掛かってしまいます――』

 ――海が死んだらもっと迷惑だ! 俺の夢も終わる!

『そうですね……ごめんなさい。そちらへ行きます』


 リリールは方向転換して俺たちの方へ向かってきた。



 俺は全員に止まるように指示した。

 最後の砂丘の手前。これを超えたら世界樹の切り株が見える場所。


「全員、止まれ! 戦闘態勢用意っ! フィオリア親子は逃げろ!」

「はい!」「わかった」「わかりましたっ!」

「ラピシアは聖女の回復だ」

「わかった!」



 砂煙を上げて、砂丘の上に白い修道服が現れた。

 疲れたように微笑む。

「ごめんなさいね、迷惑かけ――あぁっ!」


 ザァンッ!


 風の刃がリリールの背中を切りつけた。

 赤い血を散らして、砂丘の斜面を転がり落ちる。

 HP2636万。次の魔法攻撃で死ぬ。


 俺は砂丘を駆け上がる。

「ラピシア! 回復はいい、全力で戦え! セリカとミーニャはラピシアのサポート!」

「「「はいっ」」」

 ラピシアの回復キュアでは回復量が少なすぎた。

 といっても魔力の3倍なので42万も回復するのだが、神相手では全然足りない。



 俺はリリールを抱きとめた。白い修道服が血に染まる。

 ひょうたんの水をかけ、唱える。

「――《快癒》」

 急速に傷がふさがり、回復していく。

 ただ、時間がかかる。HPが多すぎる!

 


 リリールを横抱きに抱えた俺を守るように、彼女たちが立った。



 ――と。

 砂丘の上に金色の輝きが現れた。

 照りつける日差しを浴びながら、バリアムークが俺たちを見下ろす。

「くはは! こんなところに仲間がいたとはな! その女を殺したら、相手してやろう」


「させませんわ!」

 セリカがレイピアを構える。刀身から青い冷気を立ち昇らせていた。

 その横ではラピシアがぐーを握り締めて立ちふさがる。


「ほう。だったらお前たちから先に死ぬか? ……まあいい。どんな攻撃をしようと無駄なことを思い知らせてやる! さあ、3回攻撃してくるがいい。そして絶望するがいい! くははっ!」

 ――また律儀にも3回攻撃させるのか。

 なんだ、なぜそこまでする必要がある!?


 俺は、はっと息を飲む。

 先に3回攻撃させることが何かのトリガーになっている可能性に思い当たった。

 しかし、情報が少なすぎる!

 もうじっくり調査している暇がなかった。



 腕の中のリリールはHPが半分回復しただけ。

 俺はまだ動けない――!

 セリカやミーニャは絶対勝てない。

 あとはもう、大地母神の奇跡に頼るしかなかった。


「いけ、ラピシア! 時間を稼いでくれ!」

「わかった、ケイカ!」

 ラピシアは小さなこぶしを握り締めながら、白いワンピースを揺らして砂丘を駆け上がっていく。


 バリアムークは砂丘の上で腕を組み、馬鹿にした視線で見下してくる。

「小さいガキだが、力はありそうだ。どんな攻撃をしてくれるか楽しませてもらうぞ!」



 ところが!

 ラピシアは、バリアムークの直前まで行ったところで、急に反転した。

 金色の瞳に涙を浮かべてこっちに戻ってくる。


「ど、どうしたラピシア!?」

「ノロイ コワイ! キライ!!」

「えっ!? 呪い?」


 どこに呪いの要素が……?

 マントにパンツの変態装備は、ただの布製だぞ。金箔貼ってあるだけで。


 呪い? 呪い――。



 俺は思わず叫んだ。

「――ああ! そういうことかぁぁ!!」

 勢いあまって腕に力が入り、抱えていたリリールが「ふぎゃっ」と鳴いた。



 ラピシアは駆け下りてくると、俺の後ろに回りこんだ。和服を小さな手でしっかりと掴んで、ぶるぶると震える。


 そんなラピシアに笑みを向けた。

「偉いぞ、ラピシア。お手柄だ。ステータスに表記されてないから気付かなかった。気配もまったくなかった。というかあの金箔は呪いを隠すためか」

「ラピシア お手柄? コワイけど いいの?」

「最高だ。呪いにトラウマがあるラピシアしか気付けなかっただろうからな」


 俺の腕の中でリリールが呟く。

「い、いったい……?」

「最初に3回攻撃させる。その方法自体が罠だったんだよ! こいつは相手の攻撃を呪いに見立てて呪い返す、いわば怨霊だ! あのありえないダメージも【呪詛返し】なら説明がつく!」

 防御値無視の反射ダメージなんて、本来有り得ない。魔法も同じ。

 物理法則的ではない呪い返しなら、それができる。


 だから神の速度で追いかけてきたのではなく、呪いの効果により取り憑いた相手から一定距離以上離れなかっただけなのだ。



 俺はリリールをラピシアに渡した。

「ラピシア、りり……聖女を回復させてやってくれ」

「わかった! きゅあああ――きゅあああ」

 ラピシアの手のひらから強い光が何度も放たれる。


 俺はひょうたんを持って立ち上がった。

 バリアムークは逃げようとしている。

「何をする気だ、くるなっ!」



 一気に砂丘を駆け上がり頂上に出る。向こうに見えるは世界樹の切り株。

 逃げようとするバリアムークへ、ひょうたんの水を頭からぶっかける!

「種がばれたら手品は終わりだな! ――山間を流れる清らかな小川よ 悪しき力を流し清めよ――《浄化清水》!」


 ジュゥゥゥ! とバリアムークの肌が焼ける。金色が剥がれて茶色の肉が見え、黒い煙が立ち上る。

「ぎゃあああ!」

 バリアムークは身をよじった。よりいっそう闇が噴出し、体が土になって崩れていく。


 最後は骸骨に腐った肉が絡みつく、ゾンビのような存在になった。

 《真理眼》で見る。

--------------------

【ステータス】

名 前:バリアムーク

種 族:魔造鬼人

職 業:魔王軍特殊部隊長

属 性:【闇】


 攻撃力:1111

 防御力: 800

 生命力:1000

 精神力: 500 

--------------------

 お。属性から【怨闇】が消えて、ただの【闇】に。

 そんなヒントわかるかよ!


 とりあえず、ただのモンスターに戻ったようだった。


 俺は太刀を抜くとひょうたんの水をかけた。

「――蛍河比古命の名に従う、神代の時より流れしせせらぎよ、一束に集まり激流と成せ」



 バリアムークは、ボロボロの体で、なおも襲いかかってきた。

「よくも……魔王さまにもらった最強の力を……許さんぞぉ!」  


 俺は青く輝く太刀を振りかぶる。

「滅せよ、怨霊! ――《魔鬼水斬滅》!」


 ズァァァン――ッ!


「ぎゃああああ!」

 バリアムークは頭から真っ二つになり、崩れ落ちながら粉となって、風に飛ばされて消えた。



 太刀を振って鞘に収める。

「ほんとに面倒な奴だった」


 砂丘の下からセリカたちが上がってくる。

「お疲れ様です。ケイカさま」

「種が分かれば簡単だったな。攻撃せずに浄化か祝福を与えて呪いを解けばよかった。でも3回攻撃してみろと煽られたら、普通は攻撃してしまうもんな。盲点だった」


 怪我の治ったリリールが言う。

「ありがとうございます、ケイカさん。世界を救ってくれたも同然です」

「それは言いすぎ……でも、ないか」

 海が死ぬところだったしな。人々が死に絶えるかも。

 危うくこっちの世界で神になれなくなるところだった。


 リリールは絵画よりも美しい微笑みを浮かべて頷いた。

「これからもよろしくお願いしますね」

「ていうか聖女。たまごは?」

「あ……逃げてる途中で捨てました。拾いに行かないと」

「いい判断だな。それなら行こうか」



 ――と。

 なにやら遠くのほう、世界樹の切り株辺りで歓声がした。

 《千里眼》で見ると、長い耳の緑髪の集団が騒いでいた。

 200人はいる。全員エルフだった。


 よく見れば、逃がしたフィオリア親子が一緒にいる。

「見てください! 勇者ケイカ様が、あの憎き四天王を、バリアムークを倒されました!」

「あれが勇者さまのお力!」「バリアムークを倒すなんて!」「なんという強さ!」「素晴らしい!」「世界樹の守り神だ!」

 おおおおお……っ、と歓声が青空にこだまする。



 そうか、砂丘の上で倒したから向こうから丸見えだったのか。

 金ぴかで目立つしな、バリアムーク。


 ミーニャが荷物を載せたサンドリザードたちを連れてくる。

「ケイカお兄ちゃん、やっぱり強い。好き」

「みんなのおかげだ。聖女の戦いを観察できたのと、ラピシアの直感に助けられたな」

「ラピシア 偉い?」

「偉いぞ」

 彼女の青い髪を撫でてやる。えへへ、と目を細めて喜んでいた。



 その後、エルフたちと合流するため、世界樹の切り株へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GAノベルより1月15日に3巻発売します!
何度も改稿してなろう版より格段に面白くなってます!
勇者のふりも楽じゃない
勇者のふりも楽じゃない書籍化報告はこちら!(こちらはまだ一巻)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ