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勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから――  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第三章 勇者冒険編・山

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第66話 店主撃退! 聖女の秘密

 朝起きると、セリカたちと少し打ち合わせしてから朝食を食べた。

 そして宿の勘定を済ませようとしたところで問題が起きた。



 店主が叫ぶ。

「これっぽっちじゃ足りませんねぇ! 6人分ですから、聖金貨で6枚(3000万)払っていただきましょうか!」

「そ、そんな! 高すぎますわ! 常識的な範囲を逸脱してます!」

 金貨袋を握り締めたセリカが言った。


 俺も言葉を添える。

「今は旅の途中でこれしかない。だからこれで我慢しろ」

「はあ? そんな言い草が通用するとでも? こっちは商売でやってんだ! 金が払えねぇなら、体で払ってもらおうかい!」

「つまり、俺の旅路を邪魔するということだな?」


「金を払わねぇなら、旅なんか続けられるかい! ――おう、お前ら、少し立場ってもんを理解させてやりな!」

「へえっ」「はあはあ」「あのおっぱい、最高だぜ」「顔は殴るなよ……楽しみが減るからな」



 俺は汚い男どもを見回しながら言った。

「ふん、15人か。セリカ、ミーニャ5人ずつだ」

「はいっ!」「わかった」


 すると、たまごを抱えたラピシアが、くいっと和服を引っ張った。

「ラピシアは?」

「お前は手加減できないだろ」

「手加減! できる!」

 小さな拳を掲げると、金色の目をキラキラと輝かせた。背中に背負ったハンマーはやはり飾りか。

「じゃあ、俺と一緒に戦うぞ」

「わーいっ!」

 本当に大丈夫かと不安を感じつつ、男どもにならう。



 男たちは下卑た笑いを浮かべつつ、囲むように歩いてきた。

「金が払えないんだから、しかたないよなぁ?」「俺たちが代わりに払ってやるんだから、感謝しろよなァ?」

 気の早い奴は、ズボンのベルトを緩めて近付いてくる。


「――やれ」

 俺の合図とともに、怒りで眉間にしわを寄せていたセリカとミーニャが動いた。


 金と黒の疾風が舞う。

 シュッ、ドゴッ!

 と鋭い音や、鈍い音が響く。



 酒場内が悲鳴にあふれる。

「ぎゃああ!」「ひぎぃぃ!」「玉が、玉があぁぁ!」「俺のは千切れたぁ」

 ……二人とも、鞘に収めた剣を振るい、時には蹴り上げて、男どもの股間を潰していった。

 悶絶して白目を剥く男。口から白い泡を吐く男。血まみれの小便を漏らす男。


 う~ん、一応指示したとおりなんだが。

 見ている俺の股間まで縮み上がる光景だった。



 俺も鞘に収めた太刀で4人の男を相手した。

 まあ、俺の速度についてこれるはずがなく。

「ぎゃ!」「ひぎゃあ!」「いいいい!」「た、助け――ぐあ!」

 股間を丁寧に潰した。


 ――やり過ぎかも知れないが、この町に宿が一軒しかない以上、こいつらは今まで同じ手口を繰り返してきたはずで。

 ここで終わらせてやるつもりだった。



 横を見るとラピシアが、ぐーを握り締めていた。

「へへ、なんだい嬢ちゃん……み、見逃してくれよ」

 ラピシアは一瞬で男の足元へ行くと、明らかに全力で振りかぶった。踏みしめた床がバキッと割れる。


「きゅぁあああ、ぱーんち!」


 ドゴォンッ!


 細腕を思いっきり振りぬいた。神の一撃。

 男は下半身がねじれながら飛び、上半身は折り畳まれながら真横に飛んでいく。

「イ゛ヤ゛ァァアアア!」

 断末魔を上げながら壁をぶち抜いて、とおりの向こうにある道具屋の石壁に激突して、肉塊になった。



 ――いやいや、どこが手加減だよ。


 と、思ったら。

 男は清浄な光に包まれて人の形に戻っていった。

 攻撃と同時に回復を発動させたのか。

 男は白目を向き、ピクピクと痙攣していた。

「あ……あ……」

 臨死体験をしたせいか、言葉を失っていた。


「ラピシア、これは手加減じゃない。半殺しって言うんだぞ……」

「そーなの?」

 可愛く首を傾げるラピシア。青いツインテールが緩やかに揺れた。

 まあ結果的には殺してないから良心的か。



 俺は溜息を吐きつつ店主に向き直る。

「これで理解したか? 俺の旅路を邪魔するな」

「こ、こんなことしてただで済むと思うなよ! 俺の後ろにはなぁ、怖い人たちがついてんだからな!」

「嘘付け。だったら名前言ってみろ。言い逃れするために口から出まかせ言うな」

「裏社会の総元締め、グールドさまだよ。へへ、びびったか。お前らも全員、奴隷になるからな、覚悟しとけ!」


 俺は言った。

「つまり、宿屋のふりをしながら売れそうな客を見つけては奴隷にしていたってわけだな」

「それの何が悪い! この町は森が砂漠になっちまってから交易路からはずれちまったんだよ! こうでもしなきゃ喰っていけねぇ!」

「そうか、そうか。交易路から外れたから値段上げ放題なのか。そして払えない人をさらって奴隷にね。俺たちもそうなると。そうかそうか」

 俺の様子に、店主はびびり始める。


「い、いったいなんだよ、お前」



 俺は懐をまさぐりつつ、にやりと笑った。

「おや? 言ってなかったか? ――俺はこういうもんだ」

 【勇者の証】を取り出し、店主の顔の前に突きつけた。


「げ、げぇ! 勇者ぁ! ――いや、これは、そんな!」

「言ったよな? 俺の旅路を邪魔するな、と。勇者の旅を邪魔するのは魔王の手先だ。お前を処分する」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

「いや、その願いは聞けないな」



 そこへ警備兵たちがやって来た。

 男たちが転がる惨状を見て、剣を抜いて俺へ向ける。

「こ、これは! ――貴様、何をしたっ!」

「口を慎め。俺は勇者だ」

 【勇者の証】を突きつける。


 兵士たちの顔色が変わる。

「ゆ、勇者さま!? これは申し訳ございません! ――でも、いったいこれは……」

「この男が、一泊6名の代金として聖金貨6枚を要求してきた。断ったら、男どもをけしかけて俺たちを奴隷にしようとした。なのでこらしめてやった。……こいつの後ろには犯罪組織のボス、グールドがついている。連れて行って牢屋にぶち込め」


「聖金貨6枚!? それにグールド!? ……店主よ、ようすがおかしいと思っていたら、そんな悪事を働いていたのか!」

「ち、ちが! 俺はこの町のために……っ!」

「話は詰め所で聞かせてもらおうか」

「い、いやだぁぁ……!」



 店主は暴れたが、すぐに兵士に取り押さえられて連れて行かれた。男たちも抱えられて連れて行かれる。


 隊長に言う。

「次訪れた時も、この町がおかしかったら、そのときは全員魔王の手先として処分する。わかったな?」

「はい、わかりました、勇者さま! これからはいっそう目を光らせますから!」

「がんばれ。しっかり取調べして背景を暴くんだぞ」

「ははっ!」

 隊長は敬礼すると出て行った。



 あとには、俺たちだけが残った。

「さて、行こうか」

「はい、ケイカさま」


 フィオリアが傍へ来て頭を下げる。

「ありがとうございます、勇者さま。わたしたちを奴隷にするのが狙いだったんですね」

「危ないところだったな。というか普通は夜逃げを警戒して前金で宿泊費を請求してくるもんだ。後払いの時点で怪しむべきだぞ。さあ、案内してくれ」

「はい、お任せください」



 こうして俺たちは砂漠を渡る用意を整えて、聖女のあとを追いかけた。


       ◇  ◇  ◇


 照り付ける強い日差し。

 どこまでも細かい砂が続く大砂漠。

 俺たち6人は7匹の大きなトカゲ――サンドリザードに乗って北西へ向かって3日後。

  何回砂丘を超えたかわからなかった。


 ちなみに1匹多いのは荷物専用。

 素材の買取値段が安いと言ってミーニャが高級素材を売らなかったため荷物が減らなかったのだ。

 ザザザッと砂に足跡をつけて軽快に走っていく。



 というか検問所から追いかけ続けて5日。

 千里眼で何度見ても先行しているはずの聖女は見つからなかった。

 いくらなんでもおかしかった。



 日が真上を過ぎた頃、フィオリアが言った。

「あと1時間ほどで、世界樹です」

「急いだのに結局、聖女には追いつけなかったな。死んでたら引き返すぞ……これが最後の確認だ――《千里眼》」


 俺の視線は目の前の砂丘を貫いて、遠くを眺めた。

 

 10キロメートルほど先に、巨大な切り株があった。直径だけで2キロメートルはある。

 もし普通の木として育っていたら頂上は雲の上に出そうだった。



 そして、俺の目は切り株に歩み寄る女性を見つけた。

 白いベールを被った、修道服の女。

 背中にはたまごを背負っている。


 しかし顔に見覚えがあった。

 どこかで見たことがある……としばらく考えて気付いた。


 最初の村で呪いを解いたと教えられた聖女だった。壁に掛かる肖像画を見ていた。

 ただし実物は絵よりも美しい。神秘的な雰囲気をまとっている。

 あちこち歩き回ってたんだな。



 ――と。

 疑問が浮かんだ。あまりにも軽装。水筒すらない。

 砂漠を歩いて渡ったのか? 装備や食料は?

 ていうか朝確認した時にはいなかったはず?


 不思議に思って《真理眼》で見た。

--------------------

【ステータス】

名 前:リリール

性 別:女

年 齢:ひ・み・つ(はぁと)

種 族:神

職 業:大海神

クラス:神術師 召喚術師

属 性:【荒水】【大海】【聖波】


【パラメーター】

筋 力:888万 (+10万+100万+760万)

敏 捷:885万 (+10万+100万+760万)

魔 力:890万 (+10万+100万+760万)

知 識:897万 (+10万+100万+760万)

信者数:約76万1050(光処女50+その他処女1万+その他76万)


生命力:8865万

精神力:8935万


攻撃力:888万

防御力:1770万

魔攻力:2670万

魔防力:1794万


【装 備】

武 器:なし

防 具:白波の羽衣(修道服)防御×2 魔防×2【全異常抵抗無効】

装身具:大海嘯の指輪 魔力×3

所持品:進化のたまご

--------------------

 思わず笑ってしまった。

「ははっ! そりゃ、神出鬼没に現れて人々をクラスアップしまくれるよな! つーか、生きてたのか」

「け、ケイカさま!? いったいどうされたので?」

「セリカ、急ぐぞ! 聖女は世界樹の傍にいる!」

「は、はい!」

 トカゲの横腹を蹴ってスピードアップさせる。



 俺は心話で話しかける。



 ――年齢ひみつ(はぁと)のおばさん。

『な! ――誰ですか、無礼者!?』

 リリールが振り返った。十キロメートルの距離をものともせず、目が合った。


『……神? 蛍河比古命? 知らない名前ですね』

 ――ああ、まさか聞こえるとは。無礼なこと言ってすまない。俺は異界の神だ。今は勇者をやってる。ルペルシアの許可済みだ。


『ルペルシア姉さんを助けてくれたのですね』

 ――そうだ。浄化して今は寝てる。

『その隣にいるのは、まさか姪のラピシアですか?』

『ババア!』

『くっ! ルペルシア姉さん、覚えときなさい……』

 ――ラピシアにも聞こえてたのか。


 

 その時、視界のはるか向こうに動きがあった。

 世界樹の切り株の上に魔物が現れた。


 ――魔物が来たぞ、気をつけろ。

『わかってますよ』


 遠景でリリールが手を振った。

 それだけで魔物の群れは消し飛んだ。



 俺は言う。

 ――時間がない。バリアムークを倒す方法があるらしいが、教えてくれ。

『倒せるかどうかは、分かりません。ただ……うまく行かなかったら、あとはお任せします』

 ――どうする?

『溺れさせます』


 ――なるほど。物理も魔法も効かない。でも呼吸はしてる、ということか。

『そうです。でもうまくいかなかったら逃げます。私はここで死ぬわけには行きません。私が死ねば海が死にます。……本気で戦うこともできません。海が荒れ狂い、沿岸の街が死滅します』

 ――なるほどな。わかった。俺にも考えが浮かんだ。リリールがうまくいかなかったら、俺たちで戦ってみる。



『ありがとうございます。異界の神よ。ほかに何か聞いておきたい事はありますか?』

 ――そうだな。なぜ四天王と戦う? お前は死んだら被害が大きすぎるから、別の奴に任せたほうがいいんじゃないのか?

『もう世界樹が持たないのです。必死で芽を出してますが、摘み取られ続けて。忘れられて久しいのですが世界樹も神の一柱。世界樹が死んだらすべての木々が死に絶えます』


 ――え! それって、生物は死滅するってことじゃ……。

『だからもう、今動ける者たちの中で一番強い私が行くしかないのです』

 ――人々が死滅したら、勇武神になることもできなくなるな。やるしかないか。



『ほかにはありますか? 歳以外で』

 ――信者、少なくないか?

『海は魔物で埋め尽くされてるのに、まだ信じてくれてる人がいるだけありがたいです』

 ――なるほど。その割にはえらく処女集めてるな。

『ふふ。私を信じれば素敵な旦那様と出会える、という噂を流しただけです』

 ――何も言うまい。光属性も集めてるな。

『見つけ次第、私の修道院で保護してきましたから』


 ――そういえば、ファルをもらった。構わないか?

『あの子は大丈夫だと思って、隠れ里に収容しませんでした。エビルスクイッドを倒して救い出したそうですね。ありがとうございます。どうか幸せにしてあげてください』



 ――あとは、そうだな。クラスアップさせまくってたんだな。

『ええ。もうそれぐらいしか、私にはできることがありませんから』

 ――それだけ強くて魔王は倒さないのか?

『倒せるならとっくに倒してます。今の私では、そしてあなたでも勝てません』

 ――そんなに強いのか。リリールのほかに、神はどうなった?

『呪われた身になったか、封印されました』


 ――そうなのか。話しかけたがいなかったものな。リリールは応えなかったが。

『人間と対話すると私の所在がわかってしまうので……』

 ――確かにその可能性があるか。

 同種族間の心話は暗号通信。別種族とは間には機器や魔術を挟まないといけない、通常通信みたいなものだった。


『神殿からの呼びかけはすべて切断しています……神託も与えられず心苦しい日々でした』

 ――仕方ないな……あ!


『きましたね……少し戦いに集中します。手出し無用ですよ』



 巨大な切り株の上を悠々と歩いて、全身金色の男が現れた。黒いパンツに黒マント。

 放つオーラが違う。

 こいつが四天王、バリアムークか。


 バリアムークは高らかに笑った。

「よく来たな、愚か者! 私が魔王四天王の一人、バリアムークだ! まあ、手下を倒した手腕は褒めてやる。――さあ、3回攻撃していいぞ。そして攻撃の通じないことに絶望するがいい!」 

 腕を組んで背をそらし、あっはっは、と笑い続ける。



 リリールは、鋭い視線を投げ掛けると、すらりとした手を前に突き出した。


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GAノベルより1月15日に3巻発売します!
何度も改稿してなろう版より格段に面白くなってます!
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勇者のふりも楽じゃない書籍化報告はこちら!(こちらはまだ一巻)
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