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勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから――  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第三章 勇者冒険編・山

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第64話 混浴なしの温泉

 ドラゴンの洞窟で食事を終えた俺は温泉に入った。

 もちろん混浴はなし。

 女性は長くなるだろうということで男が先に入った。


 

 雲海の上にある露天風呂。

 雲の隙間からはるかな地上が垣間見える。

 上空には見たことのない星空。

 温泉はプールよりも広い。おそらくドラゴンが入るためだろう。深いところは足が付かなかった。

 これで男4人じゃなく、セリカたち3人と混浴だったら最高なんだが。


 しかし雄大な景色を見下ろしながら入る温泉は格別だった。

 すると奇声を上げてティルトが湯船へと走ってきた。少年らしい細身の体。しかし筋肉はしっかり付いていた。

「きゃっほー!」

 ザバァン……と湯柱が上がる。


 しぶきをまともに浴びて、眼鏡を曇らせたダークが、ティルトの頭を押さえてぶくぶくと湯の中に沈めた。

「ごぼっ、ぐはっ! 何すんだよダーク!」

「湯船で遊ぶのはマナー違反ですよ」

「うっせ! ドラゴンは泳いでいいぞって言ってただろっ」

「それは向こうの深いところです」



 俺は2人に話しかける。

「ダンジョンのときから思ってたが、2人とも仲いいな」

「どこがです!」「どこがだよ!」

 ダークとティルトは声を揃えて叫んだ。

 もうそういうハモるところからして仲がいいんだが。


 レオが話しかけてくる。細身の青年と思っていたが、脱ぐと意外と胸板が厚かった。鋼のように引き締まった体。

「ケイカさんはこの後、西に行かれるのですね」

「ああ、聖女を見つけ出して保護する」

「私たちはたまご探しですね。どれを探して欲しい、というのはありますか?」

「仲間の魔物に聞けば四天王の居場所はわかるんじゃないか? それで俺が倒しに行く」



 レオはティルトを見た。

 ティルトは暗い顔でうつむく。

「1人は世界樹のとこにいるよ」

「そうだったのか。だったら――」


 ティルトは首を振る。

「行っちゃだめだ。魔法も物理も効かない。兄ちゃんでもあの女の子でも倒せねぇよ」

「ほう。桁違いの攻撃力でも効かないとなると、物理攻撃無効とかで強化されてるのか?」


「たぶんそう。四天王バリアムークは魔王の研究によって生み出された人の形をした化け物だよ……すげーむかつくやつでさ、挑んできた奴にまず3回攻撃させる。それを余裕で受け切ってから、なぶり殺しにして来るんだよ」



「毒やガスなら効くんじゃないのか?」


「エルフだってばかじゃない。あらゆる方法を試したぜ。毒、麻痺、睡眠薬、麻薬、火、土、雷、氷結。精霊王の業火にすら耐えきったし。何やっても無駄。勇者どころか魔王ですら倒せるか怪しいね」

「ふぅん……。まともに戦ったら勝ち目なさそうだな」

 何か引っかかったが、流しておいた。



「後回しでいい。ほかのたまご探そーぜ」

「ラピシア、聖女、四天王2個のほかは、どこだろうな」

「グレウハデスは持っていなかったのでしょうか。魔物の仲間から死んだと聞きましたが」


「ああ、俺が殺したときはたまごは持っていなかったな」

「なっ! ケイカさんはグレウハデスまで倒されてたのですか……!」

「しかしその時はたまごの存在を知らなかったから探さなかった。ひょっとしたらまだ北の国境近くの大森林に転がってるかもしれない。魔王軍が回収したかどうか仲間に聞いておいてくれ」


 レオが濡れた青髪を掻き上げる。

「はい。まだ回収してなかったら探してみます。回収されてたら別のを探します。見つけたらまずケイカさんに報告したほうがいいですか?」

「そうしてくれ。困ってる人々が多くて、倒したら注目を集めてしまうようなら、俺が倒す。いくら隠したとは言え、レオの素性がばれたらやっかいだからな」


 ――まあ、レオが大活躍して俺の名前が売り込めず信者が増えないのは困るから、というのが一番大きな理由だが。

 こんな個人的な理由を言えるわけがなかった。

 もちろんレオの素性がばれたら困るのは本当だから問題ない。


 俺の内心など知らないレオが、誠実に頭を下げた。

「助かります。――見つけたらどこへ伝えれば?」

「王都のキンメリクの宿屋か、王都から北に行った村に知らせてくれたらいい。南側なら高速輸送のナーガたちに言伝を頼んでくれたら伝わる」

「わかりました」



 その後、温泉から上がって女性陣と交代した。

 千里眼でちらっと見たが、3人とも星空の下に白い裸体を晒し、のんびりと手足を伸ばしていた。

 3人とも線が細いが、こうして見比べるとセリカは全体的に丸みがあるんだなと気付かされる。特に胸が。


 ミーニャがセリカの胸を突きながら言う。

「どうやったら……大きくなる?」

「えっ……それはわかりませんわ」

 ミーニャは自分の胸を揉む。膨らみかけのなだらかな胸。

「大きくなりたい……ケイカお兄ちゃん、大きい胸が好きだから」

 ――そんなことはない、と思いたい。


「ミーニャちゃんは今のままで充分かわいいですよ」

「ん……」

 セリカがミーニャの頭を撫でた。ミーニャは気持ち良さそうにごろごろと喉を鳴らした。

 ラピシアは深いところをバタ足で泳いでいた。

 楽しそうで何より。



 危険もないようなので監視をやめて寝ようとした。

 するとドラゴンが話しかけてきた。

「ケイカよ、どうやってダンジョンを突破したか聞きたいのだが」

「あー、それはな……」

 1階から15階層までの行程を全部話した。


 ドラゴンはため息をはく。

「そのような方法であったか。せっかく船を用意したというのに」

「発想はよかったな。蛇の階を先に出したのがまずかった」

「うむ。もっと練り直さなくてはな。同じモンスターを連れてくるのは難しいから、アイデアで工夫せねば」

「そうなのか」


「下級や中級モンスターは金で集めたり、魔術で召喚が可能だが、上級は自分で捕まえてこないといけないのだよ」

「大変だな。袋小路みたいな、入ったら即死する階層でも作ったらどうだ?」

「クリア不可能なダンジョンを作ったらダンジョンマスターの資格を失う。神から託された便利な機能が使えなくなる」



 ふと試練の塔を思い出して尋ねる。システム的には同じ感じがしたからだ。

「魔王もダンジョンマスターなのか?」

「それはない。神に信頼されたものだけだ。登録審査はとても厳しい」

「そうか。試練の塔に魔王の息が掛かってるように思えてな」

「試練の塔はヴァーヌス教全体の持ち物として登録されていたはずだ」

「なるほど。やっぱり上層部が腐ってるのか――神の代行になるなら直接は無理だろうな」


「そうだな。人々が暴走しないための必要悪だから絶対悪の魔王は利用できんよ。我らには様式美がある。十年に一度ダンジョンコンクールが開催されて腕を競い合っているぐらいだ」

「なるほど。あのダンジョンはコンクール用か。まあ、アイデアなら出してやる。パズル系や同時撃破系。水没とかな」

「例えばどんなのだ?」


「こんなのはどうだ」

 別々の部屋のボタンを同時に押さないといけないが、押すと部屋の戸が閉まり、大型魔物出現。2PTに分けていたら苦戦するし、最初に攻略した部屋に一人だけ残していたらそいつは確実に死ぬ。



 その他、いくつかアイデアを出してやると、ドラゴンは目の色を変えた。

「おお、それは面白い! 使わせてもらう――今日は徹夜で作業だな!」

「そいつはよかった。ただ、明日は国境まで頼むぞ」

「わかっている。一年ぐらい寝なくとも大丈夫だから心配するな」


 ドラゴンは、いそいそとどこかへ行った。

 きっとダンジョンコアでもいじりに行ったのだろう。この世界のダンジョンがどういう方法で作成されるか知らないが。



 それから俺は横になって目を閉じた。

 明日からは聖女探し。

 さっさと保護して、村に帰ろう。

 そして、そろそろ信者集めを本格的に始めないとな。

 西の国へ行くからついでに足がかりを築けたらいいんだが。

 そんな事を考えていたら、セリカたちが戻ってくる前に寝た。


       ◇  ◇  ◇


 次の日、ドラゴンに乗って西の国境まで行った。

 挨拶もそこそこに別れた。早くダンジョンを作りたいらしい。


 俺は道に沿って検問所へいく。大きな門のほかに、建物が2つ建っている。

 兵士の宿舎と通行税及び関税支払い所。


 道沿いに兵士が立っていて荷物を調べ、通行税の支払いの有無や、荷物にかかる関税を計算していた。

 この道は一番大きな交易路であり、国にとっても重要な収入源なのでかなり念入りに調べている。

 また、大量に物資を運び入れる場合は国の許可が必要だった。申請してなかったら没収される。



 ――が、そんなの勇者には関係ない。

 俺は【勇者の証】を見せつつ通る。相手はにきびの残る若い兵士。

「ダフネス王国の勇者、ケイカだ。通らせてもらうぞ」 

「え!? 勇者さま? ちょっとお待ちを……あ、はい。本物ですね! パーティーメンバーはこの女性3名で……荷物は背負ってるものだけでしょうか?」

「これだけだ」


「そうですか、ではお通りください――ようこそファブリカ王国へ」

「よろしくな。ちなみに勇者は、馬車1台分までは関税が掛からないのだったか」 

「はい、そうです。あと申請しなくても自由に出入りできますし、いくらでも滞在できます」

「そうだったな。ありがとう」


 ――国境を超えるたびにいちいち入国申請してたら、魔物や魔王を追いかけてても逃がしてしまう。そのためにできた優遇制度。

 たいしたことなさそうな優遇だが、もし馬車一台に香辛料満載してればそれだけで一財産できる。

 商人にとっては喉から手が出るほど欲しい優遇だろう。

 面倒だからやらないが。



 俺は尋ねた。

「そうそう。聖女と呼ばれる白い修道服を着た女は見かけなかったか? すごい美女だったらしいが」

「え……いや……な、なんのことでしょう?」

 急に兵士が目を泳がせた。

 ――絶対何か知ってる。


 俺は一度懐にしまった勇者の証を取り出しつつ、兵士の肩に腕を回した。

 小声で言う。

「別にお前が賄賂を貰って許可を持たない人間を通したことは、俺には関係ないし咎める権限もない。ただし聖女は魔王に狙われている人物で、早急に保護が必要だ。もし行方を知っていて隠すというなら、その時はお前は魔王の手先として処分しなくてはならない。……わかるな? さあ、言え」


「は、はい。勇者さま。お探しの女性は五日ほど前に通過されました」

 ダンジョンを攻略開始した頃か。


「どこへ行くかは、言っていたか?」

「いえ、特には……あ、砂漠を越える装備をどこで買ったらいいか尋ねられました。3日ほど北西に行った所にある町を教えました」


「そうか、情報提供ありがとうな」

「それで、私は罰せられるのでしょうか……その女性、悪い人に追われているから助けてください、誰にも言わないでとお金を渡されて、つい……」


「いや俺は聖女の保護を優先しているだけだ。問題ない」

「ありがとうございます。お力になれて光栄です」

 兵士は青褪めた顔で冷や汗をかいていた。

 これ以上は聞けそうになかったので、肩をぽんぽんと叩いて解放した。



 振り返って言う。

「北西の町へ向かう。砂漠を越える前に追いつきたいから少し急ぐぞ。セリカ、ミーニャ大丈夫か?」

「はい、ここから北西ならフォレスですね。行きましょう」

「私は、大丈夫」

 食料や素材を全部背負ったミーニャがうなずく。特別製の背負い袋は3倍ぐらいに膨らんでいた。


 なにか虐待しているようにも見えるので、分担して持とうとしたが、ミーニャ自身が「これは私の仕事」と言って譲らなかった。

 獣人は人より力が強いから問題なさそうなので、そのままにした。


 そして俺たちは賑わう検問所を後にして、北西へ向かった。



26日16:50分頃修正。

たまご探しのところでグレウハデスの話題と、レオが確認に向かうようにしました。

あと検問所での賄賂のやり取りがわかりにくいそうなので、直しました。

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何度も改稿してなろう版より格段に面白くなってます!
勇者のふりも楽じゃない
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