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勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから――  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第三章 勇者冒険編・山

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第63話 王都にドラゴン

 グリーン山に行くまで1週間はかかった距離を、ドラゴンは数時間足らずでやってきた。


 王都の城に近付くと、兵士たちが弓や魔法を放ってきた。

 ドラゴンの体に当たる。


 俺は首元を撫でながら言った。

「人間は傷つけるなよ。交渉できなくなる」

「わかっておる――《ウィンドシールド》」

 ドラゴンが呪文を唱えると、周囲の風の流れが変わった。


 飛んでくる矢や魔法が、くいと急激に方向を変えて、あらぬ方向へと飛んでいった。

「便利な魔法だな。俺も覚えるとするか」

「勝手にするがいい」

「よし、2階のバルコニーに下りろ。そしてレオを口にくわえるんだ。面倒だからレオは気絶した振りしとけ」

「わかりました、ケイカさん」



 そして、攻撃を浴びながらも城2階のバルコニーに降り立った。

 俺は背中から飛び降りて【勇者の証】を掲げながら城へと入る。

 そこは玉座の間だった。


「王様! 会って話がしたい! 緊急案件だ!」

 兵士の一人が駆けつける。

「ゆ、勇者さま!? いったいこれはどういったことで?」

「勘違いがあったから、正しに来た。王様はどこだ!?」


「わしなら、ここじゃ」

 玉座の間の奥の扉から、王様が杖を付いて出てきた。



 俺は駆け足で傍まで行く。下駄がカッカッと鋭く鳴った。

「王様。レオ討伐とドラゴン退治の件でお話があります」

「そのようじゃな」

 王様はバルコニーにいるドラゴンと、口にくわえられたレオを見て言った。


「魔物に王都を襲わせてレオを助け出したのは魔王ではなく、あの西の山に住むドラゴンでした」

「ほう。それはなぜじゃ?」

「なんでもレオがドラゴンのところから宝物を盗み出したらしく、その行方を聞き出すためだったそうです」

「なんと! それはまことか?」

「はい。ちなみにドラゴンがここまできたのは、レオ一人の行為か、国が関係しているのか尋ねにきたのです。どのみちレオは拷問の後、殺されるようです」


 王様はあごひげを掴んで撫でた。

「ほほう。それはまた……難しい問題じゃな」

「話し合えばわかってもらえるかと。ドラゴン本人に聞いてください。一つ言えるとするなら、レオを切ればこの国は救われます」



 王はうなずくと、隣に立つ騎士団長に言った。

「これよりドラゴンとの対話を試みる。騎士や兵士は武装を解くように」

「え、それでは王様の身になにかあったら……っ!」


 俺が横から口を出す。

「すでに矢も魔法も効かなかったのは証明済み。無駄なことをして怒らせても意味がないと思うが?」

「く……勇者どの、大丈夫なのでしょうな?」

「信じろ。俺は生きて帰ってきたのだから。彼はただ王様から話を聞きたいだけだ」

「わかった」

 騎士たちはどこかへ走っていった。



「では、話してみようか」

 王はバルコニーへ出た。

 杖を付き、ドラゴンの正面に立った。

「西の山のドラゴンよ、初めてお目にかかる。わしはこの国を治めるダフネス3世じゃ」


「人間の王よ、古来より我らと人間とは互いに干渉しないと決めていたはずだ。それをこの者が破った。この者はそなたらと関係があるか? 国の命を受けてというのであれば、我は神の息吹によってこの国を灰塵と化すつもりだ。王よ、心して答えよ」


 王はちらりと俺を見た。

 俺はうなずいた。


 王は堂々とした声で答えた。

「一切関係ない。国はその者など知らぬ」

「そうか。ではこの者にだけ地獄の苦しみを与えよう。村々への制裁も止めることにしよう。これからも互いに不干渉を貫くことを望む」


「その約束、心して守ろう。――しかし、人間が迷惑を駆けたのは事実。なにかできるがあれば協力したい」

「それなら、た――」


 俺は慌てて遮った。

「王様、その話はまた後日でお願いします。私のほうから伝えましょう」

「ん、そうか」


「なぜ――」

 ドラゴンが喋ろうとするので心話で話す。

 ――話すな。魔王の息の掛かったものがいるんだぞ!

『ザザッ……なんと! ザッ……わかった』


 ドラゴンは俺を見て言った。

「無礼だぞ、勇者。我は今、王と話しておるのだ」

「すみません、ドラゴンさま。あの存在は人の国に混乱をもたらすやもしれませんから」


「なるほど、それは我がうかつであった。――では国王、いずれ勇者を使者として遣わそう」

「重々、承知した。それから配下の者たちが攻撃を仕掛けてすまなかった」

「いや、傷一つ付いてはおらぬから不問だ。だが、愚かな行為は慎むように言っておいた方がよいだろうな」

「わかった……伝えておく」


「では、乗れ。勇者よ」

「それでは王様。また」


 王様は苦笑すると、ボソッと言った。

「詳しい話はまたいつか、夜にでも聞かせてもらおうかの」

「……はい、いずれ」

 俺は頭をかいた。

 ――王様にはバレたっぽいな。



 王が城へ戻ると、ドラゴンは翼を広げて飛び立った。

 眼下の城がみるみる小さくなる。

「危なかった。もう少しこの国の現状を伝えておくべきだったな」


 ドラゴンが鼻で笑う。

「なんだあの三文芝居は。『どらごんさまぁ~』」

「うるさい。お前のためなんだぞ。お前がたまごを諦めたぐらいに思わせないと、また魔王に襲われるぞ」

「さすがよく考えてるな」

「当然だ。さっさと山に帰れ」

「ふんっ。しっかり掴まっておけ。すぐに戻るぞ」

「大丈夫だ」

 そしてドラゴンはまた西へと飛んだ。


       ◇  ◇  ◇


 夕方になって洞窟へ舞い戻った。

 ドラゴンは俺たちを降ろすとどこかに行った。


 セリカが近付いてきた。

「どうでしたでしょうか、ケイカさま?」

「安心しろ。うまくいった。王の口から、レオは国とは関係ないという言質を取った」

「それはよかったですわ」

 セリカは胸に手を当ててほっと息を吐いた。


 レオが首を回しながら下りてくる。

「さすがに目が回りますね。それにしてもケイカさん、本当にありがとうございました。おかげで死なずにすみました」

「あとはこの仕事が終わったら、王都の北にある俺の村に行って、妹に顔を見せてやってくれ」



 俺が言うと、レオは深く頭を下げた。

「ありがとうございます。……それで、これからどうしましょう」

「まずは手分けしてたまご探しだ。とんでもない化け物が生まれるらしいからな。レオは魔物の友達がいるんだろう? そいつらを使って情報を集められないか?」


「そうですね。彼らに頼んでみましょう」

「まあ、四天王の残り二人が1個ずつ持ってそうだが」

「おそらく間違いないでしょうね。となると、残りは3個……」

「じゃ、まずは四天王の持ってるたまごを回収か……?」

 俺は顎に手を当てて考えた。



 さて、これからどうするか。

 王国の西側はドラゴンの脅威をなくしたということで、俺の名は広まるだろう。

 銅像を建てさせるしな。


 南側もドルアースを中心に俺の名はじわじわ広がっていることだろう。



 そろそろ村の屋敷も完成する頃だろうから、村を発展させたいのにな。

 勇者ケイカの聖地にする予定だ。

 その下準備はちゃくちゃくとできているのだが。


 ――早く、信者たくさん集めて正真正銘の神になりたいところだ。


 まあ、今は四天王を倒してたまご回収。

 そのついでに、名前を広げられる可能性を探る方向でいくしかないな。

 どこにいるかが問題だな。



 するとラピシアとティルトが傍へきた。

「おかえり、ケイカ!」

「たまご探しのたまごって、これなんだよな?」

 ラピシアの抱えるまん丸なたまごを指差した。


「ああ、そうだが」

「オレ、これの色違いなら見たことあるぜ?」

「え、どこで?」


「転職させてくれた聖女が背負ってたよ。もっと白かったけどな」

「なるほどな。どうにかして魔物から奪ったんだろう……まずいな」

「「「まずい?」」」

 セリカやレオたちが口を揃えて言った。



「聖女はただでさえ上級職生み出しまくって魔王に狙われてる。その上たまごまで持ってるとなると……」 

「魔王軍の総力を挙げて探し出すでしょうね」

 レオの言葉にセリカが眉をしかめる。

「危険ですわ。一刻も早く、保護しないと」


「聖女がどこにいるかわかるか?」

「さあね。でも船に乗れなくなったと言ってたな。歩いて西隣の国に向かったはず」

「ふむ」

 俺は顎に手を当てて考えた。


 ――船に乗れなかったのは、エビルスクイッドが船を捕えて沈めていたからだ。

 あれは人々をびびらすだけじゃなく、聖女の行動範囲をせばめる理由もあったのか。

 ほんと、魔王は一つの作戦に二つ三つの意味を加えてくるな。狡猾だ。



「聖女救出が最優先だな。俺たちが行くから、レオたちは残りのたまごを探してくれ」 

「わかりました」

「おう、任せとけって」

 レオとティルトが頷いた。


「あー、あとそうだな。レオは、また咎人の判定に引っかかる可能性がある――だからわからないようにする」

 属性の表記を変えておくしかない。

 魔王が更なる新型判定機を作り出したらどうか分からないが。

 今のところ俺は本質を変えられないからなぁ。



 するとセリカが横から口を挟んできた。

「それでしたら……これを使われてはどうでしょうか?」

 手にはペンダントを持っていた。


「どうしたんだ、これは?」

「幼い頃に母からもらったものです。絶対手放しちゃいけないって。お風呂に入るときでも身に付けていないといけないって。これがひょっとしたら咎人ということを隠してくれていたのかもしれません。絶対ではなかったですが」


 ティルトが目を丸くする。

「えっ、セリカ姉ちゃん、咎人だったのかよ!? よく生きてたなぁ」

「ええ、咎人でした。生贄にされたところをケイカさまに助けていただいたのです」

「……レオも姉ちゃんもめっちゃいい奴じゃねーか、なんでだよっ」

 ティルトは自分の事のように、悔しそうに歯を食い縛った。


「そうだな。咎人システムは魔王が作り出したものだからな。光属性を殺すための」

「なんだって!?」「そうだったのですか!?」

 ティルトとレオが驚いていた。



「まあ、だから咎人を助けるのは魔王を困らせることでもあるわけだ。それでこのペンダントだが……」


 俺は《真理眼》でペンダントを見た。

【思い出のペンダント】母の形見。属性をある程度隠す。


「本当に、咎人だと分からなくさせる効果があるな。でも今となっては意味がない。実際、村ではバレてたし。魔王が新式を投入したから見抜かれるようになってしまったんだろうな」

「そうですか……力になれなくてごめんなさい」

 セリカは悲しげに俯いてしまった。

 咎人として苦しんだぶん、なにかしたかったのだろう。



 レオが微笑んで首を振った。青髪がサラサラ揺れる。

「それはきっと思い出の品でしょう? あなたのお母さんがあなたのために用意したものです。その愛があったからこそ今まで生きてこられた。気持ちはありがたいですが、そんな大切な品は受け取れません。自分なりに頑張ってみます」

 親の愛のこもった物は受け取れない、か。どこまでも好青年だな。



「セリカ、ちょっと貸せ」

「はい、ケイカさま」

 俺はじっくりと眺めた。花や草木の模様に混ぜて魔法陣が描かれていた。


「確かにこれなら旧式の判定機は誤魔化せるな……うーん。新式の術式を調べてくれば……いや、新式に対応させてもいたちごっこか――ダーク、きてくれ」

「なんでしょうかね?」

 眼鏡を指で押し上げつつ近付いてきた。

「この魔法陣で属性を隠しているんだが、これをより強力にできないか? 俺は二重にするしかないと思うんだが……」

「なるほど判定させないのではなく判定をずらすのですね。でしたら、いっそのこと三重にして……」



 二人でしばらく話し合った。

 アイデアが浮かんでさくさくと理論が組みあがっていった。

 あとは手のひら大の石に俺とダークで魔法陣を同時に焼き付け。仕上げに【蛍河】と書いてお守りを作った。


 レオに渡す。

「これを肌身離さず持ってろ。きっと咎人とは判定されなくなるはずだ」

「ありがとうございます、ケイカさん、ダーク」

「気にするな」



 するとミーニャがドラゴンと一緒にやって来た。

 隣には兎の料理人ジェラートまでいた。


「ケイカお兄ちゃん、夕飯できた」

「おおそれはよかった。でも、なぜ、あの料理人が?」

「ジェラートと一緒に作った」


 長いウサ耳を垂らしつつジェラートはお辞儀した。

「レシピありがとうございます。私はドラゴンさまの食事も手がけておりますので、ついでにと思いまして」

「そうだったのか。ただダンジョンに住んでたわけじゃないんだな」

「もちろんでございます。さ、料理が冷めないうちにどうぞ」


 

 ティルトが飛び跳ねる。

「よっしゃー、飯だー!」


 案内された先には8人掛けのテーブルが用意されていた。白いテーブルクロスが敷かれており、上には肉や魚などの山ほどのごちそう。


 

「よし、食べるか」

 全員食べ始めたとたん、驚きの声が上がる。


 肉汁滴る柔らかい肉を頬ばったティルトが叫ぶ。

「この肉、柔らけぇ! ソースをつけるとマジうまい!」

「こちらのスープも体に染み渡るようですわ」

 セリカが魚介の旨味が染み出たスープを飲みながら微笑む。


 パンも焼きたてで柔らかい。クロワッサンに似ている。

 ミーニャの耳がぴこぴこ動く。

「パンが……お菓子みたい」

「生地とバターを何度も折り重ねてから焼いたんだな」


 ほうっとジェラートが感心した。

「一口食べただけでよく見抜かれましたね。さすがあのソースを作っただけはあります」

 食べながら今の話を聞いただけでミーニャの料理士Lvがさらに上がった。Lv23に。

 よいことだ。もうすぐ親父を抜きそうだな。



 隣ではラピシアが目を輝かせて叫ぶ。

「おいしい!」


 ダークも唸る。

「一口ごとに魔力が回復するようです」

「あのおっさんが太ってた理由がわかったぜ」



 ジェラートが言う。

「おかわりもありますよ。あと食事が終わりましたら、温泉の用意をしてありますので。あちらの扉から外に出てご利用ください」

「おお、温泉! 何年ぶりだろうか」

「おかわり!」

「オレも!」

「わたくしも少しいただけないでしょうか」


 食べるうちにダンジョン踏破の疲れを忘れて笑顔になっていた。

 今後のことを食べながら話し合うつもりだったが、すっかり吹き飛んでしまった。



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