第59話 レオの死闘!(ダンジョン7層目)
鎧騎士と一騎打ちをして進んだ7層目。
奥の扉に入ると、ステンドグラスの光が差す大聖堂のような場所に出た。
赤い絨毯が床を覆い、体育館ぐらいの広い空間を作っている。
部屋の奥には一段高い台座があり、その上にマントを羽織った鎧騎士が座っていた。
全員が入ると声が響いた。
「よく来たな、試練を突破したものたちよ。次は我が一騎打ちの相手だ。この剣でしか我は倒せぬ。さあ、手にとって戦うが良い。勝てば、剣を与えよう」
そう言って鎧騎士は剣を投げた。部屋の真ん中に突き刺さる。
幅の広いロングソード。青く光る刀身にいなずまのような模様が描かれている。
真理眼で見る。
【雷光のつるぎ】雷神が鍛えたとされる伝説の剣。実は神々を守る兵士の間では標準装備。千本単位で存在するが地上では稀。攻撃+250 特殊スキル【疾風迅雷】取得。アイテムとして使うと雷炎爆光破の効果。
「あれは雷光の剣らしいな」
「雷光の剣!? それは伝説の剣ですね……ケイカさんが持つにふさわしいかと」
「いや、俺は両刃の剣は苦手だ――それに、これがあるからいらない」
そう言って腰に下げた太刀をぽんぽんと叩く。
「オレもいらねーな。拳で充分だ」
「私もいりませんね」
ミーニャはボソッと言う。
「解体に使えない」
「選ぶ基準がそこなのか……まあここは、レオに任せる」
「わかりました。ケイカさん。頑張らせていただきます」
レオが腰の剣を外すと、広間の中央に向かった。
その背に言う。
「雷光の剣は絶対先制できるスキル【疾風迅雷】があるからな。あと魔力をこめて使えば雷を起こせる」
「助言、ありがとうございます」
レオは雷光の剣を抜き、構えた。
騎士は立ち上がりマントをバサッと広げた。
ゆっくりと階段を下りてくる。
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【ステータス】
名 前:パラディンソウル
職 業:天空聖騎士
属 性:【水】【風】
攻撃力: 700
防御力: 500
生命力: 7
精神力: 800
【スキル】
スラッシュ:横凪の一撃。
ダブルスティング:二段突き攻撃。
ゲールスティング:激しい風を伴う突き。小遠距離攻撃。
クリティカルストライク:防御値無視の一撃。
マルチプルスティング:無数の突きを放つ。
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「相手は聖騎士だ。油断するなよ」
「はい。わかっています」
聖騎士はレオまで10メートルの距離に来ると、剣を抜き、両手で掲げた。
レオも同じ一騎打ちの仕草を取る。
ブゥンと結界が張られて二人は閉じ込められる。
――レオなら勝ってくれると信じたい、が。
俺はレオを見た。
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【ステータス】
名 前:レオ
性 別:男
年 齢:20
種 族:人間
職 業:咎人
クラス:剣士Lv30 僧侶Lv10
属 性:【風】【光】
【パラメーター】
筋 力:92(3) 最大成長値92
敏 捷:90(3) 最大成長値90
魔 力:64(2) 最大成長値70
知 識:83(3) 最大成長値83
幸 運:20(1) 最大成長値50
生命力:910
精神力:735
攻撃力:524(274+250)
防御力:342(272+50+20)
魔攻力:211
魔防力:230
【装 備】
武 器:雷光のつるぎ 攻+250 攻撃+250 特殊スキル【疾風迅雷】取得。アイテムとして使うと雷炎爆光破の効果。
防 具:みかわしのよろい 防+50 単体攻撃命中時、確率で自動回避。
装身具:竜守のゆびわ 防 +20 火ダメージ半減 状態異常抵抗
【スキル】
切り
突き
みだれ切り:連続攻撃。
光烈斬:横一列攻撃。
聖風烈斬:防御値無視の斬撃。
回復:怪我を治す。
解毒:毒を消す。
幻惑:体をぼやけさせて攻撃を当たりにくくする。
円風陣:物理防御アップ。
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強いと思う。
でも上級職じゃないのが辛いな。もう成長が頭打ちだ。
……クラスアップさせてやるべきだったか。
――ん? レオのスキルで見たことないのがある。
聖風烈斬と円風陣はユニークスキルだろうか。聖風烈斬は一度見たが。
そんなことを考えていたら、レオが動いた。
上段に構えて駆け抜ける。
疾風のような速さ。【疾風迅雷】をいきなり使いこなしたか。
「行きます――幻惑……ハァッ!」
レオの体が三重ぐらいにぼやける。
攻撃しながら魔法をかけるとは。なかなかやる。
「ぬうっ!」
聖騎士は対応が間に合わない。
レオの剣が肩を掠める。ガッと鈍い音を立てて【魂核石】の一つを砕いた。
「なかなかの良い動きだ。褒めてやろう――フンッ!」
聖騎士が剣を振るう。幻影ごとぶった切るような力強い一閃。
「くっ!」
レオは後ろに下がりながら剣で防いだ。
手に衝撃が伝わったらしく、剣を落としそうになる。
俺は叫ぶ。
「受けるな、流せ!」
「は、はい!」
レオは横に飛んでそこから切りかかる。
切っ先が光のような帯を引く――光烈斬!
聖騎士の横腹を切り、また魂核石の一つを破壊した。
「いい筋をしている。――これならどうだ?」
聖騎士は腰溜めに構えた剣を、全力で繰り出した。切っ先がぶれる――二連突き、ダブルスティングか!
レオは一つの突きは仰け反って交わした。
しかしもう一つが心臓を狙う――命中。
ところが、突然有り得ない体勢から、くるりと体が反転して避けた。
【みかわしの鎧】の自動回避スキルが発動したらしい。
――あれ、俺が戦ったときも結構やっかいだったんだよな。どんなに崩れた体勢からでも発動するし、その場合神の速度すら上回って避けるから。磁石のような反発に近い感じだった。
「ハァッ!」
そしてレオの突きが雷のような速度で放たれた。
胸の中央の石をうがつ。これで3つ目。
「あと4つです!」
「……楽しませてくれて嬉しいぞ! 少しは本気を出そうか」
「それは困りますね! ヤッ!」
それから一進一退の激しい攻防が繰り広げられた。
レオの斬撃は鎧の関係ないところで受け止められ、聖騎士の突きはひらひらと交わす。
それでも肩の魂核石を破壊した。残り3つ。
一度だけ、聖騎士の剣がレオの太ももに深く突き刺さったが、飛び去りつつヒールを唱えて凌いだ。
しかし相手は不死のような化け物。疲れを知らない。
長引くほどレオに不利だった。
隣で見守るダークが、ふぅっと溜息を吐く。
「このままだと危険です。勝てる確率は30%を切りましたね」
「なんてこというんだよ、ダーク! レオが信じられねぇってのかよ!」
「信じているからこそ、わかるんです」
セリカも悲しげな顔をして、眉を寄せる。
「残りは頭と喉と背中。難しいところばかりですわ」
「頭はまだいけるが……喉ががっちりガードされてて難しいな。それ以上に、相手が背中を見せることはないから絶望的だ」
「なんとかならないでしょうか……」
ミーニャの速度があれば、あるいは。でも両手剣は使い慣れてないからだめだろう。
俺がいくしかないのか?
でも今はもう見守ることしかできなかった。
俺はレオのステータスを見ながら考える。
レオは一度も聖風烈斬と円風陣を使わなかった。聖風烈斬は隙が大きいから仕方ないにしても、円風陣は防御が上がりそうなのに。
――なんで、これを使わないのか? 修得したことを忘れたのだろうか?
俺はレオに向かって叫んだ。
「レオ! どうして円風陣を使わないんだ!」
「な、なんですかそれは!?」
剣を避けながら叫び返すレオ。
知らない?
「とにかく魔法を使うようにウィンドプロテクトと叫べ!」
すると聖騎士が取り乱す。
「な、なに!? ウィンドプロテクトが使えるだと!?」
その隙を突いてレオは叫ぶ。
「――円風陣!」
ザザザッ!
激しく風が舞った。レオを中心に風が吹く。
ただの風ではなかった。風の刃が無数に回っていた。
「ハァッ!」
レオは裂帛の気合とともに踏み込んだ。
取り乱していた聖騎士の頭を、上段から切り付ける。石が砕けた。
――それだけでは終わらない。
周囲を巡る風の刃が、聖騎士の背中を切り裂いた。石が砕ける。
ワァァ! と見ていた俺たちが思わず叫んだ。
「あと一つ! 行け!」
「がんばってレオさん!」
「やっちまえ!」
みんなの応援を背中に受けて、レオは剣を両手で持って突進した。
速度と体重を乗せた、必殺の一撃。
――聖風烈斬!
ズォンッ!
鎧の喉元を貫く鈍い音が広間に響いた。
聖騎士がゆっくりと膝を突く。
「よくやった、秘蹟を持つ若者よ。曇りのない清らかな目――それだけに実に惜しい……」
「惜しい、ですか?」
「さらなる高みを目指すがよい」
「え?」
ガラガラッと聖騎士が崩れた。
その瞬間、レオの体が光った。
ティルトが叫ぶ。
「うお、まぶしっ!」
「こ、この光はクラスアップ!?」
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【ステータス】
名 前:レオ
性 別:男
年 齢:20
種 族:人間
職 業:天空聖騎士(上級)
クラス:剣豪Lv31 僧侶Lv10
属 性:【風】【光】【竜】
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「おお……上級職になったな。天空聖騎士らしい」
「神の元へはせ参じる死者の騎士ですか……生きてるつもりでしたが、仕方ないですね」
レオは晴れ晴れとした顔で言った。
「おめでとうございます、レオさん」
「やったな、レオ!」
セリカやティルトがお祝いの言葉を述べる。
すると。
ギィィ……ッと重い音を響かせて、入ってきたほうとは逆方向の扉が開いた。
石の階段が見える。
俺は荷物を持つと言った。
「それじゃ行くぞ。あと半分ぐらいだ」
「はい」「わかりました」「おうよ!」「わかった」
それぞれの言葉で返事する。
みんなは足取り軽く階段へと向かった。
今日で突破したいので、書きあがり次第更新します。




