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勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから――  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第三章 勇者冒険編・山

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第58話 セリカの活躍とラピシアぱんち!(ダンジョン3~7層目)

 朝になってダンジョンの攻略を再開した。


 3層目は巨大な蟻の住むダンジョンだった。

 芋虫と共棲していた。芋虫が蟻の死骸を食べ、蟻は芋虫から蜜を貰うサイクル。

 蟻も芋虫も弱く、余裕で突破できた。宝箱は特になし。

 倒した女王蟻の腹から【素材:生命核石】を手に入れた。



 4層目は墓場。

 骸骨や幽霊が出まくった。弱かった。

 余裕で突破。【素材:古代生物の骨】を手に入れる。

 ティルトの火炎拳フレイムフィストが大活躍だった。



 5層目は水の張られたダンジョンだった。

 階段のある部屋を出た通路は、すべて水に浸かっていた。水深は深く、ピラニアのような魚が泳いでいる。

 水の流れる水路になっていた。


 そんな水路には飛び石が点在していた。

 セリカが形の良い眉を寄せた。

「足を踏み外したら、危険そうですね」

「しかも飛び石に乗っていく必要があるのに、ところどころに罠があるな」

「私が泳いで……先行する?」

 ミーニャが白衣の胸元をずらして黒のビキニを見せた。


 そこへ人の顔ぐらいはある大きなピラニアみたいな魚が水面から飛び跳ねて戻った。

「それはダメだな。あの魚は素早い。危険すぎる」



 ダークが言う。

「私の魔法で沸騰させましょうかね?」

「それはあとが大変だ。落ちたら危ない……でも悪くない案だ。もっといい方法にできる」

「な、なんでしょうか、ケイカさま?」


 俺はセリカを見てにヤッと笑った。

「フローズンレイピアの出番じゃないか?」

「あっ! なるほど! さすがケイカさまです。試してみます」


 シャラッと奏でるような音をたててレイピアを抜いた。

 白い霜の下りた切っ先を水につける。



 ダークが言う。

「柄に魔力を込めるのです」

「――ヤァッ!」

 セリカの赤い唇から、裂帛の気合がほとばしる。

 細い刀身が白く輝く。


 バキバキバキッ!

 と激しい音を立てて、水路の水が青白く凍っていった。

 水の中の魚も一緒に凍った。



 レオが感心して頷いた。

「これほどの威力とは……さすが名匠の一品ですね。素晴らしいです」

「うひゃ~、すげぇ! やっぱ欲しくなってきたぜ!」

「ティルトがやっても99%の確率で失敗しますよ。セリカさんだからこそできたのです。そこのところを間違えないように」

「へっ、わかってらい!」


「これで魚にも罠にも気にせず歩けるな。偉いぞ、セリカ」

「ありがとうございます、ケイカさま」

 褒められたセリカは少し照れたように頬を赤くしながら、鞘に収めた。



「それじゃ、行こうか。石は踏むなよ。罠がある」

「「「はい」」」


 氷の上をさくさく歩いていく。敵もいなくて快適だった。


 途中、大きな部屋があった。

 元は部屋が通路とつながって水に浸かっていたようで、床が真っ白に凍っていた。

 そして部屋の中央に横幅4メートル、奥行き1.5メートルぐらいの巨大な宝箱があった。


「なんだ、これ、でけえ! お宝いっぱいじゃん!?」

 ティルトが目の色を変えて駆け寄った。



 そのあとに続くミーニャがボソッと呟く。

「――あぶない」

 しかし宝箱に目を奪われたティルトには聞こえない。

 箱に触ったとたん、バリバリッと電流が流れた。

「ぎゃあっ!」

 ドサッと倒れて転げまわった。


 傍へ来たミーニャが無表情な目で見下ろす。

「――ばか」

「くぅ……っ! うっせ!」


「ティルト!」

 ロングコートを翻してダークが早足に近寄った。

 そして、ゴツンッとティルトの頭を思い切り殴った。

「――ぎゃっ! なにすんだよ!」


 眼鏡を押し上げつつ、怒りで光らせる。

「ティルト……今、自分が何したかわかってるのですか?」

「ちょっと開けようとしただけ――」

「もしこの部屋が水浸しのままだったら、全員が電流を浴びて全滅していたんですよ?」

「あ……」


 呆然とするティルト。

 ラピシアがとことこと近付いて、手を当てた。

「きゅぁあああっ」

 場違いに明るい声。

 一瞬にしてティルトは回復した。しかし口は半開きのままで、治してもらったことすら気付かない様子。


 それから急に、ティルトは床の上に正座すると土下座した。

「みんな、ごめんなさい!」

「今のは本当に危なかったです、私からも謝ります」

 ダークも頭を下げた。長い髪がはらりと垂れた。



 俺は二人に立つよう促した。

「大丈夫だ、顔を上げてくれ。本当に危なかったら俺かミーニャが止めてる。俺たちなら余裕で間に合ったはずだ。まあ、これで学習できたんだからいいだろ」

「わかってたんですね。さすがです。それでも本当に申し訳ないです」

 レオまで頭を下げてきた。

 ――仲間のためにちゃんと謝れる奴らって素晴らしいな。


 俺は笑みを浮かべつつ手を叩いて空気を変えた。

「はい、失敗したけど謝ったんだから、この話はもう終わりだ! ――さあ、宝箱開けるぞ! 今回はレオパーティー優先だからな」

「さっすが、兄ちゃん! これから気をつけるぜ!」

「ありがとうございます、ケイカさん」



 宝箱に近付く。

 すでにしゃがみこんで解除に当たっていたミーニャが立ち上がる。

「鍵、開いた」

「そうか。……さて」


 ギィィッと重い音を響かせて蓋が開いていく。

 ティルトが顔をワクワクさせて覗き込んでいた。


 しかし、完全に開くと目が死んだ。



 ……中に入っていたのは、10人ぐらいが乗れる船――ゴンドラだった。

 白く塗られた船体は華麗な装飾が施されており、真理眼で見ると絶対ひっくり返らない効果が施されていた。


「……なるほど。本来ならこの船に乗ってクリアしろ、ということだな」

「さすがにこれは持っていけませんね」

 レオが青髪を掻き上げつつ苦笑した。


 ティルトがその場にへたり込む。

「なんか、すげーがっくりきた」

「自業自得ですよ」


 俺は頷いた。

「つまり危険な階にはクリア方法も用意されてるってわけだ。きっとフローズンレイピアのあった階も、吹雪で通路の温度を下げて蛇の動きを鈍らせてクリアするのが本当だったんだろうな」

「なるほど。普通はあれ、倒せませんからね」



 とことこと、たまごを抱えたラピシアが傍に来た。

 何かして欲しそうに金色の瞳で見上げてくる。

「ああ、そうか。ティルトを治してくれてありがとうな」

「うん! もっとがんばる!」

 頭を撫でると気持ち良さそうに首を回す。ツインテールがゆらゆら揺れた。


「ああ、ごめん。治してくれてありがとなっ」

 ティルトが立ち上がりながら礼を言った。

「うん! もっと治す!」

 ラピシアがにっこりと笑った。

 人を癒せるのが嬉しいらしい。いいことだ。


「さあ、氷が溶けないうちにクリアしようか」

「「「はい」」」



 全員の声を受けて、またダンジョンを進んだ。

 ボス的な魔物も一緒に凍ってしまったらしく、危なげなく移動した。


 そして階段まで到着。上の階へと上がった。



 6層目は植物が生い茂るダンジョンだった。

 壁や天井が植物の枝や蔓で覆われていた。

 最初は攻撃してくる花や蔓を教えていたが、そのうち教える前に倒すようになった。

 薬草と解毒草が山ほど手に入り、聖癒草という聖水の原料も同じぐらい手に入った。

 レオパーティーと山分けした。


 

 7層目は鎧騎士のダンジョンだった。

 階段部屋を出ると、赤い絨毯が敷かれた広い通路があった。

 7メートルはある広さで、天井も高く。

 片側には全身鎧の騎士が等間隔に並んでいる。中は空っぽの鎧。


 面倒なことに騎士一体一体を分けるように結界が張られていた。

「この結界は騎士と連動してる。倒せば先に進めるようだが」

 一番手前の騎士すら、結界の中にいる。

 どうやって?


 一歩近付くと、ガシャッと騎士が動いた。通路の真ん中へ来ると、剣を抜き、顔を隠すように持つ。

 その姿勢で固まった。結界の向こうで。



 セリカが言う。

「あれは騎士の、一騎打ちの決闘を申し込む仕草ですわ」

「なるほど。一騎打ちで勝たない限り次には進めないというわけか」


 俺は真理眼で見た。

--------------------

【ステータス】

名 前:ソウルアーマー

職 業:騎士

属 性:【風】


 攻撃力: 350

 防御力: 500

 生命力:   2

 精神力: 400


【スキル】

   スラッシュ:横凪の一撃。

ダブルスティング:二段突き攻撃。

 レイスラッシュ:横一列攻撃。

--------------------


「騎士の魂を封じ込めた鎧みたいだな。騎士のスキルを使ってくる」

「一騎打ちとなるとなかなか手ごわそうですね」

 レオが険しい目をして言った。


 俺は首を傾げる。

「生命力が2しかないが……」

「弱いのでしょうか?」

 セリカの問いに、俺はじっくりと鎧を見た。

 頭と胸に小さい光。ステータス【魂核石】と浮かぶ。


「なるほど。鎧に埋め込まれた【魂核石】を破壊すると倒せるみたいだ。こいつは頭と胸。――騎士のセリカが手本を見せてくれ」

「わかりました、ケイカさま」


 セリカはさっそうと金髪をなびかせて前に出る。

 レイピアを抜いて両手で持ち、顔を隠すように掲げる。

 洗練された、絵画のような美しさ。


 ブンッ……と結界が張りなおされ、セリカと鎧騎士だけが閉じ込められる。



 互いに構え――鎧騎士が動いた。

 上段からの袈裟切り。


 セリカは軽く半身になるとレイピアを素早く繰り出す。

 切っ先がぶれる。二連突きだ。


 鎧騎士は突きの一つを剣の根元で弾いたが、もう一つの突きが肩に刺さる。

 ピキピキピキと刺さった箇所から瞬時に氷が張っていく。

 鎧騎士の動きが止まる。時間にして2~3秒。


 しかし戦いにおいて2~3秒の硬直は死を意味する。



「ハァッ!」

 セリカが気合とともに踏み込んで、さらに二連突きを繰り出した。

 動けない鎧騎士の胸と頭の核石を同時に貫く。


 鎧騎士は激しく揺れながら、それでも剣を両手で持ち、顔の前に掲げて――崩れた。

 セリカも同じ仕草で応え、鎧に一礼した。

「よい手合わせでしたわ」

 いたわりの言葉とともに、ブゥンッと結界は解除された。



「さすがセリカ。危なげなく勝ったな。というかフローズンレイピアの効果がやばい」

「本当に強いですね。私も戦ったら負けるかもしれません」

 レオが感心して言う。


 セリカはお辞儀をして微笑む。

「ケイカさま、レオさん。お褒めの言葉、ありがとうございます。騎士としての練習のために、もう少し戦わせていただきますわ」

「ああ、頼んだ」



 そうして5人ほど勝ち進んだ。

 徐々に戦う相手は強くなり、使ってくるスキルも増えていったが、セリカはより優雅に、赤いスカートを翻して倒していった。


 ――ところが。

 俺はおかしなことに気が付いた。

「……通路が長くなっていないか?」

「え、まじかよ?」

「……99%の確率で長くなってますね」


 最初は7人ほどが見えていた通路が、5人倒して50メートルほど進んでも、まだ突き当たりが見えなかった。

 鎧騎士は相変わらず10メートルおきに並んでいる。その数6人。



「これは他の条件があるな……7人……まさか」

「何か気が付かれましたか、ケイカさま?」

「一人で一体を倒すんじゃないか?」

「可能性としてはありそうですね」


「方法がわかんねーなら、いろいろ試してみようぜっ」

 ティルトが拳を握ってぽきぽき鳴らしながら前へ出る。


「いや待て。先にダークだ」

「なんでだよ?」

「奥に行くほど敵が強くなってる。予想が当たっていた場合を考えて、近距離攻撃が強い者は後回しだ」


 ダークが眼鏡を押し上げると本を持つ。

「なるほど。よく気が利きますね。高レベル騎士に先制を取られたら、さすがの私でも発動が間に合わない可能性がありますから」



 ダークが進み出て、鎧騎士の前で本を両手で持つ。

 結界が張りなおされ、戦いになる。


 鎧騎士が動く前に、ダークが背筋を伸ばして本を開いた。

「詠唱方陣起動……3・6・15――漆黒火炎ダークエクスプロード!」


 ズズンッ!

 騎士の足元から真っ黒い闇が炎のように吹き上げた。

 炎が触れると一瞬で腐食し、鎧をぼろぼろに蝕んだ。


 ギッギィッ……鈍い音を立てて鎧が崩れ落ちる。


 ダークが本を閉じて両手で顔の前に掲げると、結界が解けて進めるようになった。



「残り5体。やはりそうだったか――次はラピシアがいいか」

「わかった!」

「たまごは持っとくぞ。礼の仕方はわかってるな?」

「大丈夫!」


 たまごを俺に渡すと、とことこと前に出るラピシア。

 たどたどしい手つきで両手を握って顔の前へ。

 子供が大人の真似をする感じ。



 レオたちが心配して顔をしかめる。

「大丈夫でしょうか?」

「嬢ちゃんには無理じゃねーかな……出直したほうがよくないか?」


「いや、大丈夫だろう。ここにいる中で、俺の次に強いのがラピシアだ」

「そんな……ティルトや私より強いと……? 見たところ勝率0%ですが――」

「まあ、信じられなくて構わない――ラピシア、頑張れよ。あの鎧の光ってる石を壊すんだぞ!」

 俺は結界の中へ呼びかけると、ラピシアは楽しそうな笑顔で頷いた。

「うん、わかった!」



 そして戦いが開始する。


 ラピシアが両手を伸ばして、てててっと駆ける。青いツインテールが後ろになびく。

 無造作な近寄り方だが、異常に早かった。

 鎧騎士はとっさには対処できない。


「えいっ!」 

 ぐーにした小さな拳で、振りかぶって殴る。無邪気な子供のたたき方。

 ドゴォッ! とありえない轟音を立てて鎧騎士が吹っ飛ばされる。


 ズドォォンッ!


 後ろの壁に激突して、衝撃で丸くえぐれた。

 鎧は完全にぺしゃんこになっていた。


 ラピシアは少し離れると、手を合わせてお辞儀した。


 ブゥンと結界が消えて、残り4体になる。



 ラピシアが駆け寄ってくる。

「ケイカ! 勝った!」

「偉いぞ~ラピシア~」

 たまごを渡してから頭を撫でると、えへへと金色の目を細めて喜んだ。


 レオが驚愕で目を見開いたまま呟く。

「ねえダーク、あれはなんですか? どんな魔法……?」

「……99%の確率でただの物理攻撃です。人ではない確率も99%ですね」

「もうオレ、魔王倒すために頑張らなくていいんじゃねーかな……」

 唖然として口を開けてティルトは言った。


 こんな形でバレてしまうとは、苦笑するしかなかった。

 横を見るとセリカも困った笑顔を浮かべていた。

「まあ、ラピシアはとある事情で別格だから気にしないでくれ。――さあ、次もどんどん行こう!」

「「はいっ」」



 残りの戦いも余裕で勝った。

 ティルトは鉄甲拳アイアンフィストで鎧をぶち抜き。

 ミーニャは軽やかに舞って包丁で石を切り。

 レオは素晴らしい剣撃スキルで石を砕き。

 俺は無造作に鎧ごとぶった切った。



 そして通路の最後まで来た。

 重厚な両開きの扉がある。


 調べたミーニャが言った。

「罠も鍵もかかってない」 

「そうか……入るぞ」


 俺は安全だとわかりつつも、注意しながら中へと入った。



ダンジョン攻略は書いてて楽しくて、長くなってしまいますね。すみません。

これは明日もできるだけ連続更新したほうがよさそうです。

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