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勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから――  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第三章 勇者冒険編・山

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第54話 レオたちとの話し合い

 俺たちはレオパーティーとともに地底湖の傍で焚き火を囲んで話し合った。

 俺は言う。

「レオを死んだことにして、隠れて生きるのはどうか」と。



 眼鏡をくいっと上げながらダークが言った。

「難しいでしょう。精巧な死体を作ったところで、99%の確率で宮廷魔術師の目は誤魔化せませんよ」


「しかしレオ討伐の依頼が出ている以上、レオを連れて行くか、死体を持っていくかしないと討伐対象のままだ」

「連れてったら確実に処刑になっちまうだろ」

 ティルトが、へっと悪態をつきながら言った。


 ちなみに土くれをこねて人を作る神の技があるが。

 そんなことできるのは主神や創造神クラス。

 俺は信者数が少なすぎてまだできなかった。



 セリカが言う。

「でしたら、魔王の手先という誤解をといてみるのはどうでしょう?」

「魔物たちが襲って助け出した以上、これ以上の証拠はないからなぁ」

 はぁ~、とみんなが溜息を吐いた。


 土小人のピックルが泣きそうな顔をした。

「そ、そんなぁ……ぼ、ボクは、ただ、レオを助けたくて……」

 レオは白い歯をみせて微笑む。

「その気持ちだけで嬉しいよ。ありがとう」

「ご、ごめんなさぁい……!」

 ピックルは声を上げて泣き始めた。

 レオが頭を撫でて落ち着かせていた。



 俺はそんな二人を見ながら言った。

「まあ、魔物が助け出したんじゃなく、捕まえに来たってことにすればいいのかもな」

「え? ――ケイカさん、どういうことでしょう?」

「レオが魔物にとって何か大切な物を持っていた、もしくは魔物から盗み出した。だから魔物たちが捕まえに来たって。ちょうどドラゴンが何かを探して村を襲ってるそうじゃないか」


「そんな話を信じてもらえるわけありませんよ。確率0%です」

「それは俺たちが説明しても、だろ? 本人にそう言わせればいい――ドラゴン本人に」

「え?」「なんだって!?」「そんな方法が……うまくいくかもしれませんわ?」

 

 みんなは悩み出した。



 しかしダークは首を振った。長い黒髪が揺れる。

「ドラゴン、ドラゴンと簡単に言いますが。この山にいるのは、そこらの野良ドラゴンと違い、神話の頃から生きてる神竜ファブラドラゴンですよ。そんなくだらない話に乗るわけが……」

「俺ならやれる。まあ、交換条件としてドラゴンの探してるものを見つけてやる必要がありそうだが」

 簡単に言う俺へ、ダークとティルトは疑いの目を向けてきた。



 けれどもセリカは、微笑んで言った。

「さすがケイカさまですわ。レオさんとドラゴン問題を一度に解決する方法を思いつかれるなんて」

「さすがケイカお兄ちゃん」

 俺の力を信じきった二人の声に心地よく頷く。

「まあ、どちらにしろドラゴンをどうにかしないといけないしな。ちょうどいい」


 レオは唖然として目を見開いていたが、ふふっと笑い出した。

「さすがです、ケイカさん。あなたなら本当にできてしまいそうです……わかりました、このレオの命、あなたに預けます」

「れ、レオ!」「いいのかよ!」



 レオは深く頷いて二人に言った。

「この方以外にもう頼れる人はいないでしょう。ケイカさん、お願いします」

「もちろんだ。妹のファルからもお前を助けてくれってお願いされてるからな」

「ファルが……無事なのでしょうか?」

「ああ、咎人になったが俺が保護した。安心しろ」


 ファルは青い髪を揺らして、頭を下げた。

「ありがとうございます、ケイカさん。妹の面倒をよろしくお願いします」

「妹だけじゃない、お前の面倒も含めて、だ」


 俺がにやりと笑うと、レオは釣られて笑った。


 ダークとティルトが苦笑し、セリカが微笑む。

 場の空気が緩み、それぞれの笑う声が静かに地底湖へと広がった。

 



 その後も焚き火を囲んだ話し合いが続いた。

「ドラゴンに会うにはどうすればいい?」

「この山の頂上付近の洞窟にいますよ。しかし、山の中に作られたダンジョンを通らないといけません」

「飛んで行ったらまずいのか?」


 ダークが眼鏡を押し上げつつ言う。

「結界が張られていて無理ですよ。時空のひずみが出てます。体の一部だけ異界に転送される、という確率が17%ほどありますね」

「高くはないが、賭けるには少し厳しいな」



 レオが微笑む。

「ケイカさんなら内側からでも大丈夫でしょう。私も過去に一度会いに行って、なんとか突破できましたから」

「ほう、そうなのか。踏破できるようになってるなら簡単か。むしろ案内してもらったほうがいいな」

「お任せください。案内しましょう」

「頼んだ」


 セリカが言う。

「レオさん、ドラゴンにお会いしたそうですが、どのような方でした?」

「そうですね。気性の激しい方でしたが、悪い人ではなかったですよ」

「それはわかります。人間を滅ぼす気なら、ブレス一発でこの辺り一帯を焼け野原にできると言われてますから」

「確かに強くて怖い方ですが、ちゃんと話し合えば、わかってくれる方でした」

 レオの真摯な態度なら、相手も譲歩したくなるだろう。

 連れて行ったほうがよさそうだな。



「じゃあ、山登りと洞窟突破の用意をしないとな」

「一度町へ戻りましょう」

「そうするか」


 ピックルがぴょこっと立ち上がる。

「ボクが町近くまで案内するよ!」

「すまないな」


「ではケイカさん、またあとで」

「明日、ここへ迎えに来る」

「はい、待ってます」

 レオの声を背に、俺たちは町へ戻った。



 ――こうして、俺はレオを救うため、ドラゴンへ交渉しに行くことになった。



       ◇  ◇  ◇


 俺たちは夜も遅くにケルキラの町へと戻った。

 狼の毛皮と牙を小金貨8枚(4万円)で売り払い、宿へ戻った。


 食事をしてから部屋に戻ると、ノックの音がした。

 出てみると騎士団の隊長だった。


 部屋に入ってすぐ俺のそばへ来て敬礼をする。

「夜分遅くにすみません。勇者さま、偵察ご苦労様です。して、魔物の争いは関係がありましたでしょうか?」

「そうだな……」


 俺は当たり障りのない返答をしようかと思ったが、隊長の口から上へ伝えてもらったほうが信憑性が出そうだと考え直した。



 俺は少し考えてから言った。

「戦っていたのは、ドラゴンの手下と魔王軍だった」

「ほう。そんなことがあるのですね」

「で、ドラゴンの手下が言うには、レオが宝物を盗んだから、その隠し場所を聞き出すためにレオを連れ出したそうだ」

「そ、そんな事情が!? ……本当なのでしょうか?」

「確認するためにも、明日、ドラゴンに会ってくる」



「でしたら、ドラゴンのダンジョンの地図をお持ちいたしましょう」

「それは助かるな。ついでに、山登りとダンジョン用の装備と食料を手配してもらえるか?」

「ははっ、仰せのままに! 明日の朝までには用意しておきます!」

「頼んだぞ……ほかには何か情報はあるか?」


 隊長はしばし考え込む。

「レオ討伐やドラゴンに関してはなにもなし、です。村長たちが集まってなにか銅像を建てるなどという話をしておりましたが……そうそう、賞金首は隣国へと輸送しました。到着して顔を確認次第、賞金は支払われるそうです」


「そうか。賞金は騎士団で村々へ分配してくれ。俺の名を忘れずにな」

「ははっ! 当然であります、勇者さま! それでは失礼させていただきます!」

 隊長は再度敬礼をすると、部屋を出て行った。



 ――だいたい俺の想定どおりに進んでいるらしい。

 あとはドラゴンに会って、協力を取り付ければいいだけだ。

 地図もあるから簡単だな。


 俺はベッドに腰掛けると、セリカが弾む足取りで隣へ来て座った。

「ケイカさまが楽しそうでなによりです」

「わかるか?」

「ずっとお傍にいますもの。これからもずっと」

 そう言って、もたれかかってくる。


 そっと薄い肩を抱きながら言った。

「ああ、そうしてくれ。セリカが傍にいてくれるとやる気が出る」

「ありがとうございます。わたくしも嬉しいです」

 セリカが目を細めて微笑んだ。



 なんだか急に恥ずかしいような照れくさいような気持ちが込み上げてきたので、華奢な体を抱き締めつつ横になった。

 セリカは美しい頬を赤く染めて、

「ひゃぁっ」

 と叫んだ。少し暴れて金髪と赤いスカートが乱れる。

 でもすぐに大人しくなった。花のような香りと温かな柔らかさが心を落ち着かせる。


 ミーニャとラピシアもすぐに寄り添ってきた。細い足を絡めてくる。

 子供の体温は熱いなと思ったが、今日一日の疲れが出たのか、気持ちよくなってすぐに寝た。



書き忘れ更新は明日です。

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