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勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから――  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第二章 勇者冒険編・海

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第43話 祭りの下準備とラピシアップ

 次の日。

 祭り最終日まであと1日。


 小鳥が鳴き始める早朝。

 目を覚ますとすでにセリカは起きていた。

 サイドテーブルに明かりを灯して本を読んでいた。


「早いな。気分はどうだ?」

「目が覚めてしまって……」

 寂しげに微笑むセリカ。

 エトワールの言葉の数々を思い出して心がいらだつ。

 その上、セリカを殺そうとまでしたんだからな。許せない。


 俺はセリカのベッドに移動すると優しく肩を抱いた。

「大丈夫だ。お前は何悪くない。あいつに思い知らせてやる」

「ありがとうございます、ケイカさま。その言葉だけで嬉しいです」

 

 ――念のために変えとくか。

 すべすべした手に触れて、セリカのステータスから【光】と【咎人】を消しておいた。



 ふと彼女の持つ見慣れない本に気付いた。

「本か」

「ええ、ケイカさまがいない時に街を歩いていて見つけました。大好きな本に続きがあったんです」

「そうか。いい話だったか?」

「はい、とっても」

 少女のように、はにかむセリカ。


「うん、セリカにはやはり笑顔が似合うな」

「ケイカさま……」

 俺の胸にもたれかかってきた。

 しばらく慰めるように抱き締めていた。




 俺は朝早くから町長の屋敷に出かけた。

 【勇者の証】を見せ付けて、問答無用で上がり込む。


 すると2階から下りてくるリオネルと出会った。ぶかぶかのパジャマ姿だった。

 金髪に寝癖がついて乱れている。茶色の瞳が少し眠そう。

「おはようです、勇者さま」

「よう、リオネル。ジャンはいるか?」

「兄さんなら部屋で寝てるよ。起きるのがとっても遅いんだ」

「どの部屋だ?」

「こっちだよ」

 1階の奥へと歩いていく。


「2階じゃないのか」

「膝が痛いから階段は大変なんだって」

「そこまでひどいのか。痩せたほうがいい」



 使用人部屋の隣にある狭い部屋に案内された。

「ここだよ」

「ありがとうな」

「ううん、またね」

 ふぁう、とリオネルは白い歯を見せてあくびすると、華奢な腕を上げて伸びをしながら裏のほうへと歩いていった。



 部屋に入ると太いいびきが聞こえた。

 ジャンの寝ているベッドは、体重で大きくたわんでいる。

「おい、起きろブタ!」

 どすっ、と脇腹を蹴っ飛ばす。腹の脂肪が波打つ。


「ううっ、痛い……なに? ひゃあ、勇者さま!」

「仕事だ」

「え? こんな朝から!?」

「うるさい、口答えするな。昨日からずっとイライラしてるんだ」

「すみません。何をすれば?」

 ジャンが神妙な顔でベッドに座り直す。ギシッと重みできしんだ。



 俺はジャンの前に仁王立ちになって言う。

「魔物に連絡を取って『咎人の生贄は偽者。本物の咎人は貴賓席の王女だ』と伝えろ」 

「ええ!? なんでそんな!」

「うん? 聞いてないのか? お前も生贄になるんだぞ? それが助かるかもしれないんだがな。それとも今すぐ解体されてロウソクになりたいか?」


「ひぎぃ! や、やります! やらせていただきます!」

「よし、やれ。明日の祭りに間に合うように急いで伝えろ。ただし今までどおりやるんだぞ。怪しまれないように注意しろ」

「は、はい、わかりました!」

 ジャンは頬肉をたるませて何度も頷いた。



 俺は部屋を出ると2階へ行く。

 町長の部屋に入ると、フランクはすでに服を着て仕事前の一服をしていた。

 しかし目が虚ろだった。ジャン……リオネル……と何度も呟いている。


 近付いて話しかける。

「元気か、フランク」

「……ああ、おはようございます、勇者さま。気が付かずにすみません。いったいどうされたので?」

「すまないが、明日の生贄ショー。少し変更がしたい」

「どんなふうにでしょう?」

「貴賓席の位置を最前列にしてくれ」

「え、それはさすがに危ないのでは?」

「やぐらを組めば安全とか何とか誤魔化せるだろう。高みの見物ってやつだ。高慢な奴は見下ろすのが大好きだからな。特にあの女は」

「女……?」

「いや、気にしないでくれ。それでこれはお願いじゃなく、命令だ」

「はい……善処する方向で対処します……」


 あ、だめだ。

 脅しすぎて目に光がない。



 俺は頭を掻きながら言った。

「あー、そうだな。この話を聞いてくれたら、息子たちを助けてやる」

「そうですか…………え!? 今、なんと!?」

「人質として怖い目にあわせるが、助けてやると言ったんだ。ジャンは重いから無理かもしれんがな。――どうだ? 最前列にするか?」

「……わかりました。全力で対処します」

 目に光が戻る。町長ではない父親の輝き。


「よし、頑張ってくれ」

 俺は頷くと部屋を出た。



 階段を登ってくるリオネルが目に入った。

 寝癖が直り、さらさらの金髪になっている。

「リオネル。今日も一日退屈か?」

「そうだね。でも明日死ぬって考えたら、少し緊張してきたよ」

「そうか。だったら俺とゲームをしないか?」

「ゲーム?」

「俺の言う通りに動いてくれ。そうすれば助かる。失敗したら死ぬ」


 リオネルは不思議そうに小首を傾げた。

「うーん? でもスリルがありそうだね。それもありかな?」

「よし、詳細が詰まったらあとで連絡する」

「わかった。楽しみにしてるね」

 リオネルは並びの良い歯を見せて微笑んだ。


「じゃあな」

「うん、またあとでね」

 俺はリオネルと別れて屋敷を出た。



 

 あとはラピシアの問題だけ。

 今のままでも可能だとは思うが、万全は期したい。というか攻撃魔法を覚えてくれるのだろうか。

 朝食を食べるとセリカ、ラピシア、ミーニャを連れて入り江に行った。


 

 入江に行くとドライドのほうから話し掛けて来た。

「勇者さま、頼まれていたものを持ってきましたが」

「お、そうか。どこだ?」

「店の横に置いてあります」

 俺はクラゲ対策のために、ドライドへ頼んでいたのだった。


 横に回ると魚網が置かれていた。拳が通るぐらいの目の荒い網。それと金づちと釘。

 魚網はすでに入口を塞ぐ大きさにカットされていた。

「おお。ちょうどいいな。……我が名に従うそよ風よ 我が名に従うせせらぎよ 恨み憎しみ渦巻いて 集い永久に留まれ――《嵐呪永封刃》」


 指で触れると魚網が青黒く光った。そして不気味な色のまま固着する。

 隣で見ていたセリカが眉をひそめる。

「なにか、恐ろしい感じがしますわ」

「呪い きらい! こわい!」

 ラピシアが悲鳴を上げて小屋の中に逃げ込んでしまった。


「ちょっと持ってくれ。気をつけてな」

「はい、ケイカさま」

 セリカとミーニャに手伝ってもらって波打ち際へ持っていく。

「おおーい、ナーガ来てくれ!」



 すぐに緑の蛇体をうねらせて、海面を掻き分けてきた。

 体格がよく、緑の髪が流れる。ダリアだった。

 今日はイエトゥリアは見当たらない。


 波打ち際へと上がってくる。

「どうされました、ケイカさま?」

「これを海の入口に釘で打ち付けておいてくれ」

「これは……禍々しいですな」

「気をつけろ。呪いで回復力が逆に働くようになっている。怪我しないように」

 クラゲが通ろうとすると、トコロテンになって死ぬ。

 他の魔物に大しては刃を放つので相当厄介だろう。


「わかりました」

「まあそこまで強くない。お前たちの使える魔法解除を唱えれば呪いは解除できるから安心してくれていい」

「そこまで考えてくださるとは、さすがケイカさまです。設置してきましょう」

 ダリアが網と金づちを持って戻っていった。



 それから俺は和服を脱いだ。

 ミーニャがビーチパラソルを借りてきて砂浜に突き刺す。


「それじゃラピシア、今日は海の面白さを伝えるぞ」

「うん!」

 ワンピースを脱いで白スク水になったラピシア。

 俺は彼女の頭に手を置いた。風で揺れるツインテール。


「――《空水息域》」

 俺とラピシアが水色の膜に包まれる。


「なにこれ?」

「水の中でも息ができるぞ」

「わーい すごい! ケイカ行こ!」

 手を引っ張られて海へと入った。



 波打つ水の心地よさ。

 潜れば白砂の海底に日が当たり、青い海の中を魚が群れて泳ぐ。


『きれい……』

 ――うん、そうだな。


 俺たちは手を繋いで深いほうへと行く。身長の倍以上深くなる。

 日の光が水中に差し込んで、波の形にきらめく。

  

 ――外洋に出てみようか。

『こ こわい』

 ――怖くて当然だ。それが海なんだから。

『どういうこと?』

 ――ついてくればわかる。



 入口は魚網で塞がれていた。上の部分だけ1メートルほど空けられていた。ナーガたちが通るためだろう。


 傍の岩の上にダリアが座って見張っていた。

「ケイカさまか。これでよかったでしょうか?」

「充分だ。仕事が速いな」

 答えながら網を乗り越える。


「どこへ行かれるので?」

「ちょっと遊んでくる」

「いってくる!」

「お気をつけて。何かあったらすぐお呼びください」

「ああ、わかった」



 ラピシアと手を繋いで外の海で出た。

 そしてまた潜る。


 海は広く、深くなる。

 差し込む光がカーテンのように揺れる中を、たくさんの魚の群れが泳ぎ、それを巨大な魚が追っていた。

 イカみたいなのやエビみたいなの。蛇のようなものも泳いでいる。


 360度すべてが生物で埋め尽くされる。

『す すごい』

 ――これだけたくさんの生き物をはぐくむ場所。それが海。だから怖いんだ。

『どういうこと?』

 ――海は、怖い。人は簡単に死ぬ。でも海は優しい。沢山の生き物を抱える。

 怖い部分しか見なかったら、もう一つの顔に気付けない。

 泳げないものには厳しい。でも泳げると楽しい。

 つねに二つの顔を持つ。それが海なんだ。


『怖くて優しい……厳しくて楽しい』

 ――そうだ。お母さんみたいだろ?

『ケイカ』

 ――ん?

『ラピシア 海 大好きになった』



 ラピシアが満面の笑みで俺を見た。


 その瞬間、カッと光を放った。

 首から提げた勇者の証も光る。

『メンバー(ラピシア)がレベルアップしました』

『新しいスキルを修得しました』


--------------------

【ステータス】

名 前:ラピシア

性 別:女

年 齢:257

種 族:半神人

職 業:大地母神Lv3(育てる)

クラス:治癒師 神術師

属 性:【豊穣】【輝土】【聖地】


【パラメーター】

筋 力: 7万(2万)(+0) 最大成長値∞

敏 捷: 4万(1万)(+0) 最大成長値∞

魔 力:14万(2万)(+0) 最大成長値∞

知 識: 6万(1万)(+0) 最大成長値∞

幸 運:999(0) (+0) 最大成長値∞

信者数:  0


【スキル】

地精結集:大地の力を自分か他の神に集める。攻撃力×Lv値。

地殻反転:地殻を引っくり返して地表を刷新する。


--------------------

 次は育てるか……カブト虫や朝顔でも育てればいいんだろうか?

 たぶん違う気がする。



 それで新スキル、地殻反転て……望んでいた大地攻撃覚えたのはいいけど、威力がやば過ぎる気がする。

 マントルに接した部分が地表になるってことか?

 それで地表にある町や森や山、生きとし生けるものすべてを数十キロメートル下のマントル面に?


 いやいや、これは使えないだろ。

 範囲指定できるのかもしれないけれど、予測不能すぎて試させることもできやしない。

 ひょっとして天地創造などで使うスキルを覚えていってるんじゃないか?

 地表の造成に失敗した時に、引っくり返してやり直すための。


 もっと普通の岩石弾とか地震みたいなの覚えて欲しかった。



 俺はラピシアを連れて海面に出た。

「いいか? ラピシア。今覚えた技は絶対使うなよ?」

「わかった 使わない」


 素直に答えたが、不満そうな顔をしていた。心なしか頭をこちらに向けている。

 ああ、そうか。


 俺は手を伸ばしてツインテールにしている頭をわしゃわしゃと撫でてやった。

「でも偉いぞ、ラピシア。よく海を理解してくれた」

「えへへ~ がんばった」

 にへら~と目を細めて喜んだ。



 それから陸に戻った。

 新スキルが使えない以上、ラピシアには地精結集で頑張ってもらうしかない。

 となると準備と練習が必要だった。

 まあ的は大きいから何とかなるだろう。



 祭り最終日はもう明日。

 セリカの味わった苦しみの百分の一でもエトワールに味あわせるため、作戦を練っていった。



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