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勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから――  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第二章 勇者冒険編・海

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第28話 神様のお礼参りは一味違う!(あの村へ)

 夕方になって平原の中にある村へ着いた。

 ――睡眠薬を盛って、セリカを捕え、俺を殺そうとした村。

 追い掛け回された屈辱は忘れてはいない。


 俺は太刀に手をかけつつ、肩を怒らせて歩いていった。

 セリカとラピシアは二人で手を繋いで後ろをついてくる。


「お、お前は!?」

 中年の男が咎めるような声を上げた。

 俺は首から下げていた【勇者の証】を手にとって、ずいっと男に突き出した。

「なにか文句あるか?」

「ゆ、勇者……さまっ!」

 男の顔がみるみるうちに青褪めていき、ガクガクと膝を震わせて尻餅をついた。

 ――だったら最初から襲うようなまねするなよ。


 俺は周囲を睨みながら村長の家へと向かった。

 セリカは不安げな顔で、ラピシアはものめずらしそうに辺りをキョロキョロしながら俺の後についてきた。



 村長の家は大きな2階建ての屋敷だった。

「セリカたちは中庭のほうへ行っておいてくれ。納屋の中を探して使えそうなものがあったらもらっていい」

「はい、わかりました。……こっちですよラピシアちゃん」

「わかった!」

 二人が庭へ向かう二人の背中を見届けてから、俺は玄関からノックもせずにどかどかと入り込んだ。

 廊下を歩く。


 途中、使用人の女が廊下に出てきて、俺を見て目を丸くする。

「あ、あんたは……っ!!」

「うるさい、黙ってろ。これが目に入らないか?」

 【勇者の証】を見せ付けると、ひいっと悲鳴を上げて廊下の壁に背中をくっつけた。

 その前を通り過ぎる。


 俺は一番近い部屋に入った。

 じっと目を凝らす――《千里眼》。

 すべてを見通す目。

 様々なガラクタが目に入った。

 ――やってみたかったんだよな、家捜し(やさがし)ってやつ。


 一つ目の部屋ではたんすの下に【素材・蜘蛛の糸】【素材・ワームの牙】を見つけたのでもらった。


 二つ目の部屋では、たんすの中に銀貨を数枚見つけたのでもらった。

 あとは空振り。



 二階に続く階段を上がる。

 一つ目の部屋は書斎か仕事部屋のようだった。本棚があり、本や書類やたくさん並べられている。


 窓際に白髪で白髭を蓄えた老人がいた。村長だ。

 机で書き物をしていたが振り向く。

 

「お、お前は!」

「よう。久しぶりだな」

 ニヤッと笑って【勇者の証】を見せ付ける。

 村長が驚いて細い目を見開いた。

「ゆ、勇者さま!?」

「俺に何をしたか覚えてるな? 勇者になる人間を殺そうと追い掛け回したんだ。魔王の手先の可能性があるから調べさせてもらう」

「いや、あれは……そんなっ!」

 わなわなと長い白髭を動かすが、言葉にならない。



 村長を無視して書斎の中を調べた。

 ろくな物がなかったが壁に掛かる絵の裏に袋を見つける。

「おっ。金貨発見。随分と溜め込んでるな。魔王退治のために必要だから、このへそくりはもらう」

「ああ……。ああ……っ!」

 村長はアホになったように、ぶるぶると震えていた。

 まあ、勇者を襲った以上、ここで逆らえば魔王の手先として切り殺されても文句言えないからな。


 俺は大金貨十数枚を懐に入れつつ村長に言った。

「おい村長。命が惜しかったら俺を襲った村人全員、庭に集めておけ」

「え……いや……」

「聞こえてないのか、早くしろ!」

「は、はいっ!」

 村長は転びそうになりながら書斎を出て行った。



 俺はその後も屋敷の中を探し回って、寝室で【力の実】を発見した。さくらんぼのような小さな赤い実。当然もらう。

【力の実】食べた者の筋力を1~5増やす。

 これは俺が食べるよりセリカに食べてもらった方がいいな。数値が百倍になるから。

 後で食べさせよう。


 うーん、それにしても。

 勇者の【必要物資・現地調達許可】って鬼のような権限だな。

 王様が金貨50枚しかくれない代わりに与えられた権限だが。


 もちろん魔王退治に必要な物だけであり、鍛冶屋からハンマーを取り上げたり、漁師から船を取り上げたりなど、その者が生活する上で必要なものは奪えない。

 それでも生きていく上で余ったお金は全部俺のもの。タンスの中のへそくりや薬草は全部俺のもの。充分ひどい。



 夕暮れの空の下。

 俺が広い中庭へ出ると、すでに村人たちが集まっていた。男たちが50人ほど庭の中央に集まっている。男たちは全員、青褪めた顔でぷるぷると震えていた。

 女や子供が心配そうに、壁際や屋敷の影から顔を覗かせている。

 全員で百名ぐらいか。


 俺は村人たちの前に立ち【勇者の証】を掲げた。

「俺の顔は覚えているな? お前たちは勇者を殺そうとした。魔王の手先の疑いがある」

「い、いや、あれは」「違うんだ……」

 男たちはもごもごと反論する。


 俺は睨みつけて怒鳴る。

「黙れ! 勇者である俺がそう言っているんだ! それとも、あの時はまだ勇者じゃなかったから襲っていいとでも言いたいのか!? 確かにセリカは咎人かもしれん。だが俺は何もしていない。お前たちは無実の旅人を襲ったことに変わりはない! 悪魔の仕業だ!」

「「「うぅ……」」」

 男たち全員泣きそうな顔になった。

 手を合わせて命請いをする男までいた。

 

「お前たちを全員処刑か牢屋へぶちこんでも構わないが――」

「ひいっ」「助けてくれっ」「なんでもするから!」

 男たちが口々に謝罪する。半分ぐらいが泣いていた。



 すると金髪を揺らしてセリカが近寄ってきた。

 悲しげな顔をして、俺の和服の袖を細い指先で摘んだ。

「ケイカさま……お話は聞きました。仕方がなかった部分もあると思います。どうか、この者たちにご慈悲を」

 自分が襲われたというのに……セリカの優しさには心打たれる。

 それに村人を殺すことが目的ではないしな。


 脅しはこれぐらいで充分か。

「まずは全員土下座して謝罪しろ」

 ざざっと砂煙を上げて50人の男たちがいっせいに正座をして、頭を地面にこすり付けた。

「申し訳ありませんでした、勇者さま!」「お許しください、勇者さま!」

 みんな必死で謝罪を繰り返す。頭を地面にぶつけながら、何とか誠意を見せようとする。

 見守っていた女や子供たちも、土下座して謝ってきた。

「どうか夫をお許しください、勇者さま!」「ごめんなさいっ。お父ちゃんを許して!」

 さすがに子供に泣かれると心が痛む。



 俺は鷹揚に手を上げてやめさせる。

「これからは二度と無実の旅人を襲うような間違いをするなよ?」

「当然です!」「もうしません!」「心入れ替えます!」

「とは言え、口ではなんとでも言える」

「「「うっ……」」」

 村人たちは息を飲む。

 やはりな。謝ってこの場をやり過ごそうと考える奴はいるものだ。

 謝罪はしょせん、タダだからな。


 しかし、セリカが袖を引っ張って、首を振った。夕日に金髪が悲しげに光る。

 俺は頷いて、わかってる、と伝えた。



 そして大声で言う。

「人はすぐ忘れるものだ。同じ間違いを繰り返さないよう、将来まで伝えるべきだ! そう思うだろう? もちろん反論は許さない」

「はい」「そのとおりです」「勇者さまの従います」


 村長が白髪を乱しながら立ち上がって尋ねてくる。

「でも、どうすればよいのでしょう?」

「うむ。それなんだが。お前たちの村にお祭りはあるか?」

「祭り、ですか? 春と秋に、大地の神へ豊作祈願と収穫感謝するお祭りをおこなっております」

 ふむ。大地母神ルペルシアを称える祭りか。さすがに収穫感謝はしないとまずいな。



 俺はニヤッと笑って宣言した。 

「では、春の豊作祈願祭りを『勇者ケイカ祭り』に名前を変更するんだ! そして俺の慈悲に感謝しつつ、盛大に俺を祝え! そうすればお前たちは嫌でも毎年、間違いを思い返し、自制するだろう?」

「「「えええええ!!」」」

「そんな……長年続いてきた伝統の祭りを――」


 俺は神の威圧を込めた視線で、村長を睨む。

「……まだ、わかっていないようだな? 今日でこの村を終わらせることもできるんだぞ!」

「は、はひぃっ!」

 村長は腰を抜かして尻餅をついた。

 土下座する男たちを見下ろしたら何人かは悲鳴を上げた。小便を漏らす奴までいた。


 しかし最終的には村人全員、俺の提案に賛成した。

「しかたない」「収穫祭はやるんだし」「俺たちが悪かったんだから」

 ――これで、俺の名前は残る!

 神になるためには名前を広めることが大切だ。

 ニヤニヤと笑いそうになるのを、なんとかこらえた。



 村長が言う。

「わかりました、勇者ケイカさま。お慈悲に感謝して祭りをさせていただきます」

「うむ。その代わり、正しく敬い続ける限り、俺が守ってやろう」

「えっ、勇者さまに守っていただけるのですか!?」

 驚く村長。

 これぐらいの恩恵は与えておかないとな。

 飴と鞭を使い分ける。

「もちろんだ。魔物避けの結界を広げて畑も増やしてやる。それと、俺の屋敷もここに立てる」


 これにはセリカが一番驚いていた。

「け、ケイカさま!? 魔王退治はどうされるおつもりで!?」

「もちろんやる。ただ、拠点が欲しいと思ってな。旅をしている間に、別の地域の困った人々の願いや依頼を知らせてもらえるようにしたい」

「それなら王都の方がよいのではないでしょうか?」

「あそこは人が多すぎる。徒歩で半日かかる距離というのがいいんだ。飼い猫が逃げたから探してくれみたいな小さな依頼はなくなり、本当に助けが必要な事態だけ持ち込まれる」

「な、なるほど……さすがケイカさまです。どこまでも深い考えをお持ちで」

「というわけで村長、小さくていいから神殿っぽい雰囲気の屋敷を立てておいてくれ。平屋建てでいい。建ったら王都のキンメリクの店に知らせてくれ」

「わかりました」

 村長はうやうやしく頷いた。



 俺は内心でニヤリと笑った。

 拠点が欲しいとは前から考えていた。

 信者が参拝する場所として。


 ここに決めたのは俺に対して村全員が負い目を持っているからだった。

 いくら勇者でも、すでにある共同体に割って入って生活基盤を築くのは難しい。

 かといって横暴に振舞えば名声に傷が付く。無茶は言えない。

 でもこの村の連中は俺に命を握られているから、俺の命令にどこまでも奴隷のように従うしかない。

 俺の祭りが開かれるというのも、名前の布教にちょうどいい。



 俺は男たちを見回す。

「ベイリーはいるか?」

「あ、はい。俺です」

 無精ひげを生やした男が立ち上がった。

 手首をかばいながら近付いて来る。

 ――あ、そういや紐で縛って脅してたんだっけ。忘れてた。


「お前は以前、ブーホースに乗って追いかけてきたが、得意なのか?」

「ブーホースで畑を耕したり、近隣の村へ配達をしてます。あと世話も」

「そうか。じゃあ、勇者ケイカがこの村に住むと噂を流してくれ」

「へぇ……それは構いませんが。――あの、ケイカさま、これ」

 手首を差し出してきたので、俺は紐を千切ってやった。


 ほっと息を吐くベイリー。

「生きた心地がしなかったですよ」

「千切れてもよかったんだ。魔法掛けてないからな」

「えっ……どうして」

「お前に怪我をされたら困るからな」

「――あなたには、かないませんね」

 ベイリーは感服した声で言った。俺に信頼を寄せる響きがこもっていた。



 中年の女性が寄ってきて言った。

「あの勇者さま。お食事の用意ができております」

「ああ、そうか、いただこう。村人たちは解散していいぞ」

「ありがとうございます」「もうしません」「祭り頑張らせていただきます」

 などなど、頬に涙を光らせながら、感謝の笑顔を俺へ向けた。


 俺とセリカは屋敷へと向かう。

 セリカが青い瞳に絶大に尊敬する光を宿して、俺を見上げる。

「ケイカさまはすごいです。村人が二度と間違いをしないようにこんな方法を取られるなんて。わたくしでは考えもつかない名案でした」


 本当のことが言えないので照れ笑いするしかなかった。

「そ、そうか……ああ、そうだ。これ食べてくれ」

 懐から【力の実】を出して渡した。

「なんでしょう? まあっ、力の実ではないですかっ、珍しい。ケイカさまが食べなくても良いのでしょうか?」

「セリカが食べてくれた方が俺のためにもなるんだ」

「そうですか……では、ありがたくいただきます」

 セリカは赤い唇を小さく開けて、はむっと力の実を食べた。

 基礎筋力が+3された。自動的に俺の筋力が+300される。

 いい感じだ。これで俺の筋力が9万を超えた。



 すると倉庫がガタガタと鳴って、ラピシアが飛び出してきた。

 俺を見つけるとワンピースを翻して走ってくる。手にはラピシアが入りそうな、縦長の大きな箱を持っていた。上ではなく側面に蓋がある。縦長のゴミ箱とでも言うべきか。

 《真理眼》で見たが、ただの木箱だった。

「これ ほしい!」

「あれはなんだ?」

 案内していた中年女性が言う。

「ああ、あれは棒やほうきを突っ込んでおいた箱ですね。もう使っていませんから、いいのではないでしょうか」

「わーい」

 笑顔で喜んだと思ったら、ラピシアが頭からすっぽりと縦長の箱を被った。

 目の部分に横長の隙間があり、あとは細い足首とふくらはぎが出ている。

 箱男やメジェドを思い出させる姿。


「ラピシア、その箱が好きか?」

「うん! 好き!」

 隙間から見える金色の瞳。楽しそうに目を細めていた。

 やめさせようかと思ったが、不機嫌になられると面倒くさい。

「危ないから注意して歩くんだぞ」

「わかった!」

 とことこ、とペンギンのような小さな歩幅でついてくる。

 なんとも言えない、不気味な可愛さをかもし出していた。


「なんで子供って箱や押入れに入るのが好きなんだろうな」

「狭いところが落ち着くのではないでしょうか」

「母に包まれてるような感じなのかもしれないな」

 まあ、そのうち飽きるだろうから、しばらく遊ばせておこう。



 そして夕食の後は、軽く一仕事。

 畑に設置された魔物避けの結界を広げてやった。

 村人たちから、信じられないといった驚きとともに感謝された。


 普通、結界を広げるためには結界専門家に多額のお金を払わないといけないらしい。

 こんな単純な仕事をしただけでも村人たちから感謝され、信者が増えた。

 村へ来る前が16人で、今は33人。


 よし、この調子で、名前を売り込みつつ信者を増やしていくぞ!



ブクマ400、評価1000Ptありがとうございますっ!

……昨日の更新時では200の500Ptだったのに。

日刊総合も40位。驚くやら、嬉しいやら。

本当にありがとうございます。毎日更新頑張ります。

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何度も改稿してなろう版より格段に面白くなってます!
勇者のふりも楽じゃない
勇者のふりも楽じゃない書籍化報告はこちら!(こちらはまだ一巻)
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