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勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから――  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第二章 勇者冒険編・海

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第27話 怒ったセリカも可愛い、はず


 朝。

 小鳥の鳴き声で目を覚ました。

 上体を起こしてあくびをする。

 すると隣に寝ていたセリカも身じろぎをして目を開けた。ぱっちりとした青い瞳。

「おはよう」

「……おはよぅござぃます」

 セリカは細い指で目を擦りながら体を起こした。


 ひらりとシーツが落下する。

 たゆんと揺れる大きな胸と、白い裸体が晒される。

 しばらく呆然と自分の姿を見下ろしていた。

 白い肌を隠すのは乱れた赤いスカートだけ。


 が、急にガバッとシーツを手繰り寄せると、顔を真っ赤にした。

「あぅ……昨日は、あの、その……」

 恥ずかしいのか、端整な顔をシーツに埋めて隠してしまう。



 その反応が面白くて、俺はニヤニヤしながら言った。

「ああ、堪能させてもらったよ。隅々まで」

「はぁん……っ!」

 セリカは顔を隠したまま、ふるふると細い首を振った。金髪がサラサラと、朝日の中で光りながら揺れた。

 セリカは、泣き声でぶつぶつと呟く。

「は、初めてでしたのに……何も覚えていないなんて……しかも痛くない……わたくしって、はしたない女でしたの……?」

 シーツに顔を埋めたまま、くすんっ、くすんっ、と鼻をすすり上げ始めた。


 見ているうちに罪悪感が込み上げてきた。

 頭をかきながら謝罪する。

「あー、いや、すまない。ちょっといたずらが過ぎた。何もしてないから安心してくれ」

「へ……?」

 セリカは、きょとんとした目で俺を見上げた。

「いやだから、何もしてない。覆いかぶさって驚かせただけだったんだが。まさか気絶してしまうとは思わなくてな」

「……その後は何も?」

「ああ、何もしてない」



 セリカはしばらく無言だった。


 しかし、いきなり枕を両手で掴んで殴りつけてきた。青い目が怒りで吊り上がっている。

「ケイカさまなんてっ、ケイカさまなんてっ!」

 ぽすぽすと柔らかい枕で殴られた。金髪が跳ねるように乱れる。華奢な体にはアンバランスな大きな胸も、豊かに揺れた。


 俺はベッドから逃げながら謝るしかない。

「悪かった! ほんとに悪かったってば! 謝る!」

 扉まで逃げると、枕を投げつけられた。

 斜めから差し込む朝日の中に、白い羽毛が飛び散った。

「ケイカさまの顔なんて、しばらく見たくありませんっ!」


 こうなったら手が付けられない気がした。

 俺は扉の外に出る。

 部屋の中から、泣きながら怒る声が聞こえてきたので逃げ出した。



 一階の酒場に下りて、奥のカウンターに座る。

 親父がパンとサラダにチーズ、それに昨日の残りのきのこスープを持ってきた。

「おはよう。早いじゃねぇか」 

「おはよう。ちょっといろいろあって……それに聞きたい事があった」

「なんだ?」

「この国で困ってる町や村ってあるか?」

「ほほう。さっそく勇者稼業だねぇ。困ってる街かぁ……南にある港町ドルアースは海の魔物が増えて困ってるらしいな。あと西の方でドラゴンが出て周辺の村や町が困ってるらしい。あとこれはちょっと違うが、北にある大森林地帯の魔物が減ってるらしい」

「北の大森林地帯。確か魔王軍と王国の緩衝地帯的な場所だったか」

「そうだ」


 北にある森といえば、俺がやってきてすぐ四天王の一人を倒したところか。

 リーダーが倒されたら、部下は魔王支配地に逃げ戻るしかないだろう。

 ということは、しばらくは王国の北側は無事だな。



 俺はチーズを乗せたパンをかじりながら尋ねる。

「南と西、どっちが人が多い?」

「変なこと聞くなぁ。同じぐらいじゃねぇか? 西は平地が多く農地が多い。南のドルアースは貿易港だから異国の船がたくさん入港する」

「なるほど。ありがとうな」

「いいってことよ」

 親父は四角い顔でニカッと笑った。


 西は困っている村が広範囲に分布してそうだ。名声を上げれば一気に俺の名が広まる。

 しかし人の多い貿易港も捨てがたい。

 どちらがいいか、決定的な情報が欲しいな。


 ――その前に、お礼参りしとかないといけない場所がある。

 神の恨みはしつこいからな。



 すると、身だしなみを整えたセリカが階段の上に現れた。

 すらりと長い脚で一歩、一歩と、赤いスカートを優雅にひるがえして下りてくる。背中へ垂らした艶やかな金髪と、白いブラウスに隠された大きな胸が揺れる。

 しかし眉間に可愛いしわを寄せて、なだらかな頬をぷくっと膨らませていた。

 その怒る顔もまた、絵画のように美しかった。


 親父がこそっと呟く。

「ケンカでもしたのか? ありゃ、どこか景色のいいところでも連れ出してご機嫌取りしないとやべぇぜ」

「マジか……だったら、ちょうどいいか」


 セリカはカウンターの一番遠い席にドスッと小ぶりなお尻を落としてイスに腰掛けた。

 形の良い眉を寄せて親父を睨む。

「マスター! 朝食を!」

「へいへい」

 親父はいそいそと厨房へ戻っていった。

 気まずい沈黙が流れる。



 俺は頬をかきつつ言う。

「あの、セリカ?」

「なんでしょう!」

 なだらかな頬を膨らませて答えてきた。とても怒っている様子。

「今日、北の村へ行くつもりなんだが、一緒に来るか?」

「ええ! ケイカさまの行くところなら、どこへでも!」

 言葉の内容はしおらしいが、言い方にはとてもトゲがあった。


 俺は内心、溜息を吐いた。

 ――もう、いたずらはやめよう。

 怒らせると本気で困ることになると実感した。




 昼の日差しが降り注ぐ。

 王都から北へと続く道を俺たちは歩いていた。

 道の両側には青々とした麦畑が広がっていた。

 朝日の下、風が吹いては波のように麦を揺らしていく。


 俺はセリカの手をしっかり握って歩いていた。

 親父から無理矢理でも触れ合っていた方が仲直りしやすいと教えられたので。

 セリカはまだ怒っていて、ぷいっと横を向いていた。

 けれども、その白い頬は、ほんのりと赤く染まっていた。

 指を絡めて握り合う手も、いつもより強かった。


 ラピシアとも最初は手を繋いでいた。

 が、虫を見つけては駆け出し、鳥を見つけては駆け出し。

 青いツインテールを真横になびかせて追いかけていった。

 子供は元気だとしみじみ思う。



 ラピシアが遠くから、細い両手を掲げて駆けてきた。

「ケイカ! 捕まえた!」

「今度はなんだ?」

「飛ぶ ムシ!」

 小さな手の指の間から、はみでるぐらいに大きな蜂。15センチメートルはある。赤と黄色の縞模様が禍々しかった。

 眉をひそめて蜂を見た。

--------------------

【ステータス】

名 前:デスホーネット

属 性:【火】


 攻撃力: 400

 防御力:  50

 生命力:  30

 精神力:  20


【スキル】

滑空針刺:敵一体を刺す。

  針撃:無数の針を飛ばす。遠距離攻撃。

 即死針:高確率で即死発動。

--------------------

 セリカが、ひぃっと悲鳴を上げる。

 【即死】の文字に俺も驚く。

「うわ! やっぱり魔物じゃないか! 放せ、いや、握り潰せ!」

「わかった! えいっ」

 グシャッと握り潰される蜂。緑色の汁が飛び散る。


 慌ててラピシアのステータスを見たが異常はなかった。

 そもそも防御力3万もあったら針が通らないか。


 セリカが水筒を出して手の汚れを洗ってやりつつ、さとした。

「危険な虫や動物がいるから、気をつけなくてはいけませんよ」

「わかった!」

 そういってまた白いワンピースをはためかせて駆け出した。



 俺は呆れて溜息を吐く。

「ほんとにわかったのか、ラピシアは」

「困りますよね。いろいろ捕まえてくるんですから」

 セリカも、呆れて微笑んでいた。


 ――と。

 セリカが微妙に点滅していることに気が付いた。

「お?」

 俺は【勇者の証】を見た。

『メンバーがレベルアップをしました』

『新しいスキルを修得しました』

 と表示されていた。


「セリカ。今の蜂でレベルが上がったみたいだぞ」

「えっ。本当ですか?」

--------------------

【ステータス】

名 前:セリカ・レム・エーデルシュタイン

クラス:姫騎士Lv23(上級)

属 性:【光】


【パラメーター】

筋 力:94(4) 最大成長値375

敏 捷:71(3) 最大成長値290

魔 力:47(2) 最大成長値215

知 識:48(2) 最大成長値180

幸 運:24(1) 最大成長値051


生命力:825

精神力:475


攻撃力:399(259+140)

防御力:321(236+85)

魔攻力:257(142+50+50+15)

魔防力:258(143+50+50+15)


【スキル】

  切り:剣で切る。

  突き:剣で突く。

二連突き:素早く突く。二回攻撃。


【姫騎士スキル】

星烈突き(スターダストスティング):五つの突きを同時に放つ。

--------------------


「星烈突き(スターダストスティング)ってのを覚えてるな」

「まあっ! 星型に突く技ですね……っ! 本で読んだ伝説の姫騎士の技をわたくしが覚えられるなんて……」

 セリカは嬉しそうに目を細めた。

 それから困ったように、うつむいた。微妙な顔をしている。

 まだ怒るか、許して喜ぶか悩んでいるらしい。


 でも端整な顔を上げて、青い瞳で俺へ言う。

「ケイカさまのおかげです。ありがとうございます」

「俺はたいしたことしてない――それと、だ」

「はい? なんでしょう?」

「いじわるして悪かった。もう機嫌直してくれ」

 俺はセリカの華奢な肩を抱き寄せた。

 心地よい柔らかさに腕を回して、いとおしく抱き締める。

 セリカの胸当てが押し当てられて、ぴったりと隙間なく触れ合う。


 すると彼女は、あぅっと甘い吐息を漏らすと俺の耳元でささやいた。

「わたくしのほうこそ、大人気ない態度を取って申し訳ありませんでした。嫌わないでください、ケイカさま」

「傍にずっといてくれって言っただろ」

「はいっ」


 それから二人並んで歩き出した。

 するとセリカのほうから手を繋いできた。

 少し恥ずかしがるような微笑みを浮かべながら。



次回、よーやくあの村へ復讐?です。

明日からは一日一回更新で頑張りたいと思います。

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何度も改稿してなろう版より格段に面白くなってます!
勇者のふりも楽じゃない
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