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勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから――  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第十章 勇者冒険編・決戦、浮遊大陸!

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第231話 神々と創世神

 浮遊大陸中央にある立方体の建物。

 地下二階にある黒い壁に覆われた広い部屋。

 そこには石化された神々が並んでいた。


 セリカが声を震わせて言った。

「こ、これは、どういうことなのでしょう?」


 神々の石像は男も女も老人も、すべて苦悶の表情を浮かべていた。

 そして石像にはホースのような管がつけられていた。


 ラピシアが眉を寄せて叫ぶ。

「ジジイ! ババア!」

 一応ラピシアなりの愛情表現なのだろう。



 真理眼で見る。

「カンデンス、アドウォロス、ルナリス……全部、本物の神々だな。そして、生命力と精神力はほとんどない。この管によって力を吸い取っているようだな」

「ひょっとして、遅かったのでしょうか――早く助けてあげませんと」



 俺は太刀を振るった。魔法の光を反射して刀身がきらめく。

 一刀の元に、つながれた管をすべて切った。

 切られた管の先から、淡い光が零れて消えた。


 セリカが口元に指を当てながら心配そうに呟く。

「全部運ぶのは、時間がかかりそうですわ……」


「いや。全部を運び出す必要はない」

「え?」

「力がほとんど0なのだから、ある意味害はない存在といえる。これ以上吸い取られないよう、まだ力が残っている神だけ運ぶんだ」

「な、なるほど! さすがケイカさま。冷静な判断ですわ!」



「どれ、運ぶ?」

 巫女服を着たミーニャが黒い尻尾を揺らして石像の間を歩く。


「そうだな……右奥と、その手前。それから……」

 力の残っている石像を5体選んだ。


 セリカとミーニャで1体運び、俺とラピシアは2体ずつ抱える。



「よし、急ぐぞ」

 石像を抱えて来た道を戻る。

 階段を足早に上っていく。


 ――ここまでは順調。

 地下一階を通り抜け、一階へと出る。

 両開きの大きな扉を開けた。眩しい光が差し込む。


 神の石像を表に出すと、セリカやラピシアも外に出てきた。

 どすどすっと重い音を立てて地面へ置く。



 セリカは風に吹かれて横に流れる金髪を手で押さえる。

「どうされるのです?」

「そんなもん、こうだ――《烈風斬》」


 俺は太刀を抜きざま、一気に振った。


 ザァンッ!


 浮遊大陸の中央都市、高層建築の谷間に斬撃が響いてこだまする。


 それから遅れて、ずずずっと重い音が響き始める。

 立方体の横に立つすべての塔が、真ん中から斜めに切られて落ちていった。


 浮遊大陸を覆っていた障壁がすべて解除される。

 爽やかな青空が広がった。



 続いて、入口前に置かれた神の石像を片手で持ち上げる。

「はぁっ!」

 外へ向かって、海へと落ちるように、思いっきり投げた。


 セリカが目を丸くする。

「まあ! ケイカさま! ……危なくはないのでしょうか?」 

「石像とはいえ神なんだし、大丈夫だ――そら、そっちもいくぞ!」


 次々に神の石像を放り投げた。



 ラピシアが一体の石像を両手で頭上に掲げた。

「ラピシアもやる!」

「どこかにぶつけるんじゃないぞ」

「うん!」


 全身を使って石造を放り投げた。青い髪が跳ねるように揺れる。 

 放物線を描くどころか、まっすぐに空へと飛んでいった。

 しまいにはキラリと光って消えた。宇宙まで飛んでいったらしい。

 確かに言いつけ通り、どこにもぶつけなかったな。


 飛んでいったのは線の細い美女ルナリスだったか。

「……ま、神だし、死んだりしないだろ。力もだいぶ残ってたしな」

「んう? だめだった?」

「いや、いい――それより、次は創世神だ」



 セリカとミーニャが髪を揺らして頷く。

「はいっ。行きましょう」「がんばる」


 俺は頷いて真四角な建物へと戻った。


 ――が、入口の扉を開けたところで、悲鳴のようなかん高い声が響いた。

「はわわっ! 何をしているのですかっ!」


 目を向ければ、一階奥にあった階段の傍に小学生ぐらいの女の子がいた。

 肩ぐらいで切りそろえた茶色の髪。大きな瞳に幼い肢体。

 柔らかそうな生地のパジャマを着て、小脇にヌイグルミを抱えている。


 ――なんでこんなところに子供が?


 陽光の照らす入口で太刀に手を添えながら、とっさに真理眼で見る。

--------------------

【ステータス】

名 前:?

性 別:?

年 齢:?

種 族:?

職 業:?

クラス:?

属 性:【?】【?】【?】【?】

--------------------

 何も読み取れない!

 俺の上位存在――。


 幼女を見ながら言った。声がかすれている。

「お前が……創世神アトラか」



 少女はこちらへと走ってきながら目を丸くした。

「どうしてアトラを知っているのです!?」


「散々世話になったからな……まさか、ガキとは思わなかったが」

 アトラはぷく~と頬を膨らませた。

「アトラは子供じゃないのです! 恋を知ってる大人なのですっ!」



「ランドセルが似合いそうなくせによく言う……そういうことか」

「ほえ?」

 アトラは細い首を傾げる。茶髪がさらりと横に流れた。


 創世神のやっていることは、いくら傲慢な神だからといっても限度があった。


 思慮の足りない考え。

 理想を追い求める夢物語。

 他者の命を何とも思わない残虐性。


 ――すべてはガキだったからだ。



 俺は呆れて首を振りつつ、セリカたちに言った。

「今言ったとおり、こいつが創世神だ。気をつけろ」

「まさか、子供さんだったなんて……」

「お母さまと慕われる創世神というだけで勝手にイメージしてた。容姿は尋ねなかったからな」


 セリカが真剣な顔をして腰に下げた細剣に手を添えた。

 ミーニャも戦闘体制を取る。


 ラピシアは眉間に可愛いしわを寄せつつ叫んだ。

「チビババア!」

「な、なんなのです! この失礼な子供は!」

「ババア! ババア!」

 ラピシアが叫び続ける。

 黒い壁に覆われただだっ広い部屋によく響いた。



 むぅ~と、唇を噛み締めていたアトラが言う。

「生意気なのです! やっつけてやるです!」


「まあ、待て。あいつは、お前の孫なんだぞ――といっても、実際に生んだわけじゃなさそうだが」

「ほえ? マゴってなんなのです? う~、よくわからないけど、アトラに逆らうのはみんな敵なのです!」



「みんな敵って……あのなあ。自分が生み出した世界だからってなにをしてもいいんじゃないぞ。みんなは自分たちが生きるために、必死で生きているんだ。それを無視したらダメだ」


 ――神ならなにをしたっていい。

 俺も昔はそう思っていた。

 でも、違った。


 セリカ、ミーニャ、ラピシア。

 キンメリクの親父、レオ、ナーガ族、エルフたち、その他もろもろ。

 みんな必死で生きていた。


 人に説教できる立場ではないとわかっている。

 それでもこの創世神は間違っていると言わずにはいられない。

 


 ――が、アトラはヌイグルミを振り回して怒った。

「そんなの関係ないのです! アトラに優しくしなくてはいけないのです! それが生きとし生きるものすべての義務なのです!」


 俺は呆れて溜息を吐く。

「どれだけわがままなんだ……お前のわがままで大勢が苦しんだんだぞ?」


「苦しい? 意味がわからないのです。みんなわたしのためになれて喜んでるのです」

「だめだこいつ――創世神とは思えないほど頭悪い」


 アトラは目を吊り上げて怒る。しかし小さなこぶしを振り回すだけなので、子供っぽく見える。

「アトラをバカにする人は、めっ、なのです!」

「何が、めっ、だ。魔王に協力してるくせに」

「ヴァーヌスは悪い人じゃないのです! アトラの願いをかなえてくれるのです!」



 その言葉に引っ掛かりを覚えた。

「創世神すら叶えられない願いを叶える、だと?」

 アトラは茶髪を激しく乱して頷いた。

「そうなのです! ヴァーヌスはアトラにとって、白馬に乗った王子様なのですっ!」


「いったい何が望みだ?」

「みんな優しくて争わない、素敵な世界が欲しいのです!」


「そんなもの幻想だ。必死で生きてる以上、争うし対立も生まれるもんだ。それを見守ってやることが神の役目だ」

「争いなんて、悲しいだけ! アトラの言うことが聞けない者たちなんて、生きる資格はないのですっ!」



 あまりの傲慢な意見に、イラッとした。

 それは過去の自分を重ねているせいかもしれなかった。


 大股でアトラに近寄ると、握り締めた拳を頭の上に落とした。

 ゴツンッと鈍い音がした。

「いい加減にしろ。どれだけ回りや世界に迷惑かけたと思ってるんだ。もっと神の自覚を持て!」


 何か信じられないものを見る目付きで俺を見上げていたが、しばらくして大きな瞳に涙を浮かべた。


「神なんて……神なんて、ただの豪華な呪いなのですっ! ふぇぇぇん!」

「――呪い?」



 俺の疑問には答えず、 アトラは顔を覆って泣き出した。

「ふぇぇぇん! ヴァーヌスぅ! ヴァーヌスぅぅぅ!!」


 ――すると、カツンッと硬い靴音が、昇り階段から響いてきた。

「ダメだよねぇ。暴力を振るうなんて。愚か者のすることだよ」

 透き通る声。だがどこか冷徹で残忍。黒い壁に囲まれた部屋によく響いた。

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GAノベルより1月15日に3巻発売します!
何度も改稿してなろう版より格段に面白くなってます!
勇者のふりも楽じゃない
勇者のふりも楽じゃない書籍化報告はこちら!(こちらはまだ一巻)
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