↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから――  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第九章 勇者冒険編・天

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

237/284

第220話 一球入魂! 幼女との真剣勝負!

 聖剣が出来上がるまでの間、俺はブリザリアで好き放題に暴れるじじい、地邪神ベヘームトを懲らしめに来ていた。

 こいつを倒して霜巨人たちの信心を得るつもりだった。



 ブリザリアの王都グラチェスは薄く積もった白雪に覆われていた。

 その中心にある王城の中庭に俺はいた。


 幼女フレイヤとベヘームトのいるのは中庭に面した2階のテラス。

 セリカたちに待機するよう命じてから中庭へ出て、一蹴りでテラスへと飛び上がる。

 手すりの上に立つと、カツッと下駄の乾いた音がした。


「それぐらいにしておいたらどうだ、ベヘームト」

「なにやつっ!? ――お、お前は!」


 俺は懐から【勇者の証】を取り出して掲げた。

「俺は勇者ケイカだ! 幼い少女をたぶらかし、ブリザリアの平和を乱す邪神ベヘームトよ! 覚悟するがいい!」



「な、なんじゃと!」

 ベヘームトは目を見開いて叫ぶが、巨人たちからは「おお~」と喜びの声が上がった。

「勇者さまだ!」「本物みたいだわ!」「これで平穏な暮らしが戻ってくる!」「勇者が来たとティッキーが言っていたのは本当のことだったのか」


 ベヘームトは悔しそうに歯を噛み締めた。

「またワシの野望を邪魔するのか! ――やってしまえ、フレイヤよ!」

 フレイヤは幼い顔を驚きでいっぱいにした。

「えっ!? 勇者さまを、たおしちゃうの?」



「当然じゃ! 勇者にお前の力を見せ付けてやるのじゃ!」

「わ、わかりましたです! ――ごめんなさい!」

 フレイヤは、重い足音を響かせて俺に向かってきた。

 手に持つステッキを振るう。


 ブゥン――ッ!


 俺は舌打ちしながら後方へ飛んで避けた。

「ち――っ! フレイヤに戦わせるのか!」

 膝を屈めて、中庭へと着地する。

 

 フレイヤもまたテラスから飛び降りて追撃してきた。

 フリルのスカートが花のように広がる。

 地面に着地すると、ずずぅ……ん、と重い音がした。

 幼い顔いっぱいに強い決意を滲ませて俺を睨む。

 10メートルほどの距離で対峙した。



 俺はちらりと周りに視線を走らせた。

 広場に集まる霜巨人たちは突然の戦いに驚き戸惑っている。

 どちらかといえば、子供を心配する親のような表情をしている。


 ……ここでフレイヤを倒すとやばいな。

 いくら魔物並に強い幼女とはいえ、殴ったり泣かせたりしたら、勝ったとしても勇者の名声は地に落ちる。


 うん。

 変態じじいは殴っても良さそうだが、幼女いじめは勇者のすることじゃない。

 となると、対策は一つしかない!



 俺は腰に差したヒノキの棍棒を抜いて、前に突き出した。

「フレイヤ、よく聞け! 魔法少女になったみたいだが、その力は勇者には通用しないぞ!」

「ふぇ!? な、なんでなの?」

「世界を守れないぐらい弱いからだ!」

「そんなの、うそ! だって、岩とか隕石とか……とっても強いよ!」



 俺は口の端を歪めてにやりと笑った。

 挑発したいわけじゃない。フレイヤが言葉の罠に引っかかったからだ。


 彼女の持つ魔法少女のスキルはこれしかない。

--------------------

【魔法少女スキル】

石つぶて(ストーンバレット):こぶし大の石をぶつける。連射可能。

岩石砲(ロックキャノン):一抱えもある岩の塊をぶつける。回避不可。

隕石落とし(メテオストライク):空から隕石を降らす。防御値無視攻撃。

--------------------

 すべて遠距離攻撃。



 俺はヒノキの棍棒を上斜め45度の角度を指し示す。

「嘘だと思うなら、地属性魔法少女の力――石や岩を投げて来い! 俺がすべて街の場外へと打ち返してやる!」


 そして俺は体を半身にしながら棍棒を垂直に持ち、空いた手で肩の辺りの服をつまんだ。

 地面を足で数度払い、それから棍棒を横に構える。

 気分はバッターボックスに入るイチロー選手だった。

 ――太刀じゃなく、棍棒を持ってきていたのが幸いだった。



 ベヘームトがテラスの上でいきり立つ。

「ワシの力を分け与えた魔法少女が弱いじゃと! ええい、フレイヤ、魔法少女の力をみせつけてやるのじゃ!」


 じじいまで言葉の罠にひっかかった!

 これにより直接殴ったり蹴ったりしなくても、投げられた石をすべて打ち返せば俺の勝ちとなる。


「わ、わかったの!」

 フレイヤはステッキを光らせつつ上段に振りかぶった。


  

 ちらっと後方を振り返ると、広場の隅にいるセリカが感嘆の溜息を漏らしていた。

「さすがケイカさまですわ……。こんな平和的な勝負に誘い込んでしまうなんて」

「ケイカお兄ちゃんは、いつも偉大」

 ミーニャがさも当然といった風に胸を反らした。でも尻尾が嬉しそうに揺れている。

 ラピシアは金色の瞳を輝かせて、小さく拳を握っていた。

「面白そう! わくわく!」

 


 フレイヤが投球モーションに入る。

 ステッキに全身の力を乗せて振りかぶった。


 ぶぅぅんっ!


 ステッキの先から石つぶてが放たれた!

 時速200キロは出てそうな剛速球。

 腐っても神の力ということか。



 俺は一歩後ろに下がりつつ、呪文を唱える。

「――《風刃付与》」

 両手で構える棍棒が緑に光る。これで折れる心配はなくなった。


 そして思いっきり振りぬいた。


 ――カキーンッ!


 石つぶてはフレイヤの頭上を飛び越え、曇り空の下をすれすれに飛んでいった。

 地平線の彼方へ消える瞬間、きらりと光る。



 見ていた巨人たちが感嘆の声を上げる。

「おお! すごい!」「目に見えない速さの石つぶてを、ただの木の棒で打ち返したわ!」「なんてやつだ!」


 ベヘームトは口を半開きにして振るえている。

 フレイヤも目を丸くして、打球が消えた先を呆然と見つめていた。

 ――が、すぐに気を取り直す。



「次はもっと大きいの投げるの!」

「いいぞ、いくらでもかかってこい!」

 俺はまた地面を足で払い、両手で棍棒を構える。


「えぇぇぇい!」

 フレイヤは大きく振りかぶってステッキを振り下ろした。

 先程より強く風を切る。


 そして、ステッキの先から砲弾のように巨大な岩が発射される!

 

 ズドォォンッ!



「大きさが変わろうとも、芯を捉えれば問題ない! ――ハァ!」

 気合とともに棍棒を振りぬく――。


 ガキィィン――ッ!


 少し耳障りな音がした。

 しかし打球はこれまたフレイヤの頭上を越えて、上空へと打ちあがる。

 空に広がる灰色の雲をぶち抜いて、どこかへ消えた。



「おお!」「あんなに大きな岩を!」「さすが勇者だわ!」

 広場にいる巨人たちが驚き交じりの歓声を上げた。  

 危険を感じたのか、俺たちから離れて少し遠巻きに見守っている。


 ベヘームトが手すりを掴んで叫ぶ。

「奥義じゃ! 奥義を奴にぶつけるのじゃ!」

 ――最後の力。メテオストライクを打ち込む気か。


 フレイヤはイヤイヤをするように首を振った。

「え、そんな……それは危険なの。みんなにまで……」

「やらねば魔法少女の力を取り上げるぞ! やりたいことがあるのであろう?」

「うう……ご、ごめんなさい。勇者さん、みんな。フレイヤはやらないといけないの――えい!」

 フレイヤは幼い顔を苦しげに歪ませて、ステッキを振った。



 フレイヤのはるか頭上に家ほどもある巨大な隕石が生み出された。マグマの塊のように赤々と燃えている。

 それがステッキの動きにあわせて落下した。


 キィィィンッ!


 耳をつんざく音。衝撃波をともなっているに違いない。

 ――これはまずい。風刃付与だけではもたない。



 両手で持つ棍棒を強く握り締める。

「我が名に従うそよ風よ 集まり轟き 激動となせ! ――《怒濤暴風》!」

 俺の黒髪と和服が激しく逆巻く。溢れた風は砂を巻き上げて広場に広がり、巨人たちの髪や服を激しく揺らした。

 暴風の本体は、斜めに落ちてくる隕石へ巨大なうねりとなって直撃する。


 そして俺は棍棒を振り抜く――。


 ガッ――!


 手元に伝わる重い衝撃。一瞬だけ隕石と棍棒の力が拮抗して止まる。

 衝撃波が駆け抜けて、俺の黒髪が激しく乱れた。


 ――さすが神の作った魔法の道具!

 だが俺は負けない!



 歯を食い縛って耐える!

「くぅ――! らぁぁあ!」

 雄たけびと共に、隕石を掬い上げるようにして棍棒を振った。


 ブォォォン――ッ!


 打ち返された隕石は空を覆う雲に大穴を開けて上昇する。


 そして大気圏を越え、キラーンと輝きを残して消え去った。



 テラスに面した中庭が、しーんと静まりかえった。

 巨人の一人が口をぱくぱくさせながら言う。

「し、信じられねぇ……超魔法メテオストライクを打ち返しやがった……」


 他の巨人たちも愕然とした表情で言葉を繋ぐ。

「しかも、棒一本で……!」「ありえない……っ」「勇者ってレベルじゃねーぞ、これ!」

 巨人たちは化け物を見る目付きで俺を見てきた。

 逃げるように取り巻く輪が広がっていく。


 ――やべ、やりすぎた。

 なんとか誤魔化さないと!

 頭をフル回転させて言い訳を考えていると、さらりと軽やかな音を立てて金色の光が横を通りすぎた。



 セリカが赤いスカートをなびかせて、優雅な足取りで前に出たのだった。


 鈴の音のように澄んだ声で、静かに呼びかける。

「みなさん、落ち着いてくださいませ。勇者ケイカさまは、なんとあの大地母神ルペルシア様の祝福をいただいているお方なのです。ですから隕石なんて大したものではないのですわ」



「「「おお~!」」」

「そうだったのか!」「なるほど。大地母神の祝福か!」「さすが勇者さまだわ!」

 巨人たちが安心した声を立てる。俺を讃えるように周囲へと集まってきた。


 セリカは金髪を揺らして振り返ると、舌を出して肩をすくめた。

 いたずらをしたような少女の笑みを浮かべている。

 とても可愛らしく、そして信頼できる笑顔だった。

 ――さすが俺の嫁。フォローまで完璧とは。



 ベヘームトががっくりと膝を付いた。

「ま、まさか、ワシの力を与えた最強の魔法少女が負けるとは……」


 フレイヤも、ぺたんとお尻を付けて座り込んでいる。

「魔法少女、だめだった……」

 今にも泣きそうな顔をしていた。幼いだけに、心に訴えるものがある。


 ――ここからが正念場。

 ブリザリアで勇者が支持されるかどうかの分岐点。

 フレイヤを慰めて未来を掴むため、俺はゆっくりと近付いていった。

中途半端になったので、夜も更新します。9時か10時ぐらい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GAノベルより1月15日に3巻発売します!
何度も改稿してなろう版より格段に面白くなってます!
勇者のふりも楽じゃない
勇者のふりも楽じゃない書籍化報告はこちら!(こちらはまだ一巻)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。