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勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから――  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第九章 勇者冒険編・天

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第213話 学校と予言と休暇の終わり(ケイカ村日和その5)

 聖剣が出来るまでの間、村を見て回っていた。



 俺はだいぶ高くなった日差しの降る中、村の北にある学校へとやって来た。

 三階建ての校舎に入る。

 ラピシアはちゃんと勉強できているか少し気になっていた。

 

 授業は3つの教室で行われていた。


 まずは初級クラスを見る。

 幼い子供たちが机に座って黒板の文字を書き写している。

 ほかに本を朗読したり、数字の数え方や足し算を習っている。

 小学校低学年並みの授業といったところ。


 教師は妖精のマージリアだった。相変わらず女教師のようなミニスカート丈で授業をしていた。


 クラゲの子供マリーンとプルラがここにいた。

 言葉をまだ満足に覚えていないはずのラピシアはいなかった。



 続いて上級クラス。

 授業内容は少し高度になっていた。

 掛け算や割り算、また動植物の育ち方や生態系などを習っている。

 ナーガのナナはこのクラス。

 まだ幼い蛇体を椅子に絡めるようにして座っている。



 教師はハーフエルフのリィ。見た目は14歳ぐらいだが、これまたミニスカート丈で授業している。


「はーい、わかったかなー? 水は雨から川、そして海から雲となって、世界を循環しているのよっ。じゃあ、次は固体、液体、気体の仕組みについてっ!」

 なにやらハイテンションで喋っている。


 もう少し落ち着いた子だったように感じたが、教師という仕事に舞い上がっているのだろうか。

 それとも体調でも悪いのか。

 

 気になったので《真理眼》で見てみる。

--------------------

【ステータス】

名 前:リィ

性 別:女

年 齢:72

種 族:ハ|フエ=ルフ

職 業:精霊使E 庭視R教師

クラス:精霊術師Lv10 魔道具技師Lv2 庭師Lv1

 教師Lv5 剣士Lv1 魔法(使いLv1 給仕Lv1

 農民Lv1 手仕事師Lv3  死V霊術*てLv1

 獣S?%戦士Lv1 騎士豪Lv1 剣舞~巫P女Lv1

 僧T侶Lv1 料理人Lv1 O盗賊Lv1 淫#魔Lv1


属 性:【木】【光】

--------------------

 ――っ!

 またステータスがバグってる!


 というか、クラスがLv1ばかり。

 エルフって僧侶や魔法使いになれたのか?

 いや、ハーフエルフだから……って、死霊術師を覚えた!?

 この文字は剣舞巫女か!? この世界でミーニャだけだぞ?

 というか、淫魔ってステラのクラスのはず。



 ひょっとして、リィは見た職業をそのまま覚えて取り入れてしまうのか。

 それで種族として本来修得できないクラスがバグになると。

 

 今ですらハイテンションな性格になっているのだから、このままだとまた体や精神に不調をきたしてしまうだろう。

 今夜にでも治してやらないとな。


 そう考えてからまた歩き出した。

 この教室にもラピシアがいなかったため、最後の教室へ向かった。



 最後は魔法科クラス。

 数名の子供たちが授業を受けている。

 座学ではなく、教室の前にある教卓の周りに集まっていた。

 ここにラピシアがいた。

 

 教師はコーデリアばあさん。

 教卓の上に水の入ったガラスのコップが置かれていた。

「よく見ておるのじゃ。魔法は体内にある魔力を変化させてから放出する。まずは魔力そのものを出す感覚を掴むのじゃ」

 

 しなびた手をコップに添えて力を込める。手がかすかに光り、コップの水がさざなみを打つ。

「お~」「わぁ~、すごい」「なにか、出た!」

 子供たちは声を揃えて驚いていた。



「さあ、お前たちもやってみるのじゃ」

 子供たちは教卓のコップに手を伸ばして力を込めた。


 まずは男の子。水面に一つだけ波紋が立った。

「なかなかじゃ」


 続いて少女のララがコップを触る。

 水面が暴れるように波立った。

「わぁ、できた!」

「ほほう。なかなか才能があるではないか――次、ラピシアよ。やってみせよ」



「はーい!」

 ラピシアは手を上げて返事すると、コップを両手でしっかり握った。

 ――あ~、嫌な予感がするな。


 ラピシアは、眉間に可愛いしわを寄せて唸り始める。

「んぅぅぅぅ~!」



 次の瞬間、コップが膨れ上がった。


 どっぱぁぁん!


 水が爆発するように吹き上がった。

 コーデリアばあさんは頭から水を被る。



 ぽたぽたと髪から雫を垂らしつつ、ラピシアを睨む。

「これ、ラピシアよ。お前は加減というものを知らんのか?」

「ごめん! ――あ! こういうのは、ゆっくり力を入れていく! 宝石壊すみたいに!」

 月でエーデルリヒトを粉砕する作業をしたときのことを思い出したらしい。


 ただ、コーデリア婆さんは首を傾げていた。

「宝石? なんのことじゃ? ――まあよい。皆のものは今の感覚を忘れないよう、しばらく繰り返しなさい」

「「「は~い」」」

 子供たちは各自コップに水を入れて練習を始めた。



 すると、コーデリア婆さんが教室から出てきた。

 廊下から覗いている俺に気付いていたらしい。


「もう魔法の授業を始めたんだな」

「いやなに、これは本格的な授業を始める前の、学校にとっての予行調査じゃ。今はまだプレオープンだからの」


「なるほど。最適な授業方法を探すって訳か。まあ、うちのラピシアをよろしく頼む」

「あやつはもう、わしが教えることなど何もないわ――ありえん」

 コーデリアばあさんは疲れたように首を振る。板張りの廊下に水の雫が散った。



 俺は苦笑しつつ答える。

「ラピシアは普通の子じゃないから、気にするな――じゃあ、頼んだぞ」


 踵を返して離れようとすると、コーデリアばあさんが後ろから呼び止めてきた。

「待たれい、勇者よ」

「ん? まだ何かあるのか?」


 コーデリアは真剣な顔で俺を見上げる。

「未来が見えん」

「……どういう意味だ?」


「そのままじゃ。水晶玉で未来を占おうとしても、何も見えなくなった。しかも、あらゆる者の未来がの。世界が滅びようとしておるらしい」

「ほう……原因はどう考える?」

「魔王じゃろうて。半年以降の未来が見えぬ」



「つまり――俺は退治に失敗するか、世界を守れない、というわけか」

 険しい表情で尋ねると、コーデリアは首を振った。

「未来は未定。予知は結局、一番なりそうな未来を示しているにすぎん。もっとも可能性の低い未来が選ばれることもある。諦めるでないぞ」


 俺は、ふんっと鼻で笑った。

「言われるまでもない。俺はこの世界で勇武神になってやるからな」

「頼もしい。さすがは勇者じゃ」


 俺は一歩、ばあさんから離れた。

「じゃあ、コーデリア。子供たちの未来を頼んだぞ」

「任せておけい。教えるのは得意じゃからな」

 かっかっかっ、と黄色い歯を見せた笑った。



 俺は頷いて学校を後にする。

 久しぶりに見て回って、ケイカ村は順調に発展しているのがわかった。

 いい感じだ。


 ばあさんの予言が気になったぐらいだが。

 とはいえ俺は神だ。信者数も6万超えた。

 魔王を倒す方法も手に入れた。

 負けるはずがない。



 もうすぐ昼のため太陽が天頂に近付いていた。

 村の通りを歩いていたが、俺は足を止める。

 冷たい風が吹きぬけて和服を乱していく。


 頭に手を当てて考え込んだ。

 ――いや、まて。

 もっと慎重になれ。

 失敗は許されないんだ。

 何か見落としをしているんじゃないか?

 

 魔王ヴァーヌスも神格を得ている。

 しかも基礎能力は俺よりヴァーヌスのほうが高いはず。

 ただ、ヴァーヌスは自分を必ず倒せる方法を設定して、代わりにより強大な力を手に入れていた。

 しかし倒すための聖剣はもうすぐ出来上がり【魔王撃滅閃(アルテマスラッシュ)】も覚えた。



 これでセリカやミーニャ、ラピシアの支援を受けられれば必ず勝てる、はず。

 ――じゃあ、なんで滅亡の予言がなされた?


 支援が受けられず、一人で戦うことになるとか?

 セリカとミーニャは一人で四天王を倒せるほど強いし、ラピシアにいたっては神代行だから桁違いに強い。


 そうだ、セリカミーニャで勝てなくてもラピシアが勝てない相手なんて神ぐらい……。



 俺は、はっと息を飲んだ。

 いったいいつから、魔王とだけ戦うなんて決め付けていたんだろう。

 今どこにいるか知らないが、創世神アトラが敵に回る可能性だってある。


 あのファルカンとかいう魔物だってそうだ。

 5桁の能力値は、この世界のルールを逸脱している。

 この世界に生まれた存在ではない。


 つまりヴァーヌスが異世界から召喚した可能性が高い。

 ファルカンみたいな奴が他にもいる可能性だって考えられる。

 


 ――最終決戦までにもう一度、魔王とその周りを調べなおす必要がある。


 俺は自然と眉間にしわが寄るのを感じながら、妖精の扉のある屋敷へと向かった。

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勇者のふりも楽じゃない
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