表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから――  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第八章 勇者冒険編・亡国の姫君

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

203/284

第191話 金色熊の反抗!

 獣人地区の南西にある山。

 エーデルシュタインと獣人地区との国境でもある。


 そこに熊獣人たちの集落があった。

 といっても熊は縄張り意識が強く、また数が少ない。

 そのため村から出て、みんな山の中へ入ってほぼ単独で暮らしていた。

 

 村に残る熊長老に話して呼び集めてもらう。

 ゴォーン……ガゴォォォン……と長老が集合の鐘を鳴らすと、山々に良く響いた。


 1時間ほど掛かって50人ほどの熊が集まった。

 待ってる時間がとても長く感じる。

 俺は少し焦り始めているようだった――。



 村の広場で狼の村と同じように話して情報を聞く。

「お前たちは最近、急に羽振りがよくなったそうだが、山賊のアジトを襲ったり盗品を売りさばいたりしなかったか?」


 正座する熊たちが首を振った。

「違います」「山賊なんて知らない」「盗品を売ったわけじゃない」


「そうなのか。じゃあ、なんで羽振りがよくなったんだ?」

 何か隠しているようなので尋ねたが、思わぬ反発が来た。



 一際体格の大きな、野性味溢れる顔つきをした熊獣人が言った。髪やもみあげ、胸毛や腕毛までも金色だった。

「お前らには関係ねぇよ。帰んな」

「あ゛?」

 思わず荒い声が出た。


 金色の熊獣人が、俺の眼光にひるまず睨み返してくる。

「山賊とは関係ねぇ、つってんだろ」 


 するとミーニャが俺を遮って前に出た。

 ぴーんと立った黒い尻尾が、怒りでぶわっと毛羽立っている。

「誰に向かって口聞いてる。ケイカお兄ちゃんにその態度は、許されない」

「知らねぇよ。下手に出てりゃいい気になりやがって」

「…………決闘」

 ミーニャが腰に手を当てて見下ろして言った。



 周りの熊たちが「やめとけ!」「やばいって!」と止めるのも聞かず、金色熊獣人はのっそりと立ち上がった。

 背が高い。ミーニャと対峙すると大人と子供に見える。


 それにしても、ミーニャの持つ【百獣王の威光】はすべての獣人を従えるはずではなかったか?

 疑問に思って金色熊を真理眼で見た。

--------------------

【ステータス】

名 前:クマル

性 別:男

年 齢:28

種 族:熊人族

職 業:狩人 王子

クラス:豪戦士Lv45 プリンスLv28

属 性:【砂塵】【光】


生命力:2800

精神力: 460

攻撃力:1800

防御力:1500


【スキル】

 豪腕風撃パワーブロウ:風を纏った力任せの振り下ろし攻撃。小範囲攻撃。

 強打嵐撃ストレイトストライク:威力2倍で殴る、複数回攻撃。

豪殺双爪斬ダブルデスストライク:鋭い爪で二回切り裂く。相手防御値無視。確率で即死効果。

  超剛毛ハードバリア:一定時間、防御力を2倍に上げる。


【パッシブスキル】

 肉体強化ハイパワー:能力上昇。

 野性解放ワイルドリリース:体の能力を限界を超えて引き出す。能力を上昇。

HP自動回復:小。生命力を少しずつ回復する。

--------------------

 歯向かうだけあって強いな。それでも能力値はミーニャの半分しかないが。彼女が別格に強すぎる。

 そして職業が【王子】。王族に威光は効きにくいのか。

 

  

 広場の少し離れた場所で、ミーニャは颯爽と包丁を抜くと構えた。

「相手してあげる。……さっさと、来て」

 しなやかな手足に力を込める。


 先に動いたのは金色熊だった。

「クソ猫がぁ! はらわた引きずり出してやる!」

 大地を蹴って襲い掛かる。地面を揺るがす怒涛の勢い。


 ミーニャは無表情のまま、平然として首を傾げた。肩までの黒髪が横に流れる。

「その程度で?」

 次の瞬間、彼女が風になった。巫女服の袖をはためかせ、残像を残して移動する。

 一拍遅れて、取り残された砂煙が慌てて彼女を追いかけた。



 クマルは太い腕を無造作に振り下ろす。それだけで風が纏わりついて破壊力が増した。

 これが【豪腕風撃パワーブロウ】か。


 が、ミーニャは風をまとう腕を紙一重で交わして、相手の後ろへ回り込む。

「な、なにっ!?」

「遅い」

 神速の峰打ちを繰り出した。二刀流で腎臓を背中から叩く。回避不可の【神舞俊速】か。


 金色熊クマルは前のめりに吹っ飛ばされる。

「ぐおぉぉ……」

 クマルは地面を転がりつつ、背中を押さえた。腎臓は急所なのでとても痛いはず。

 それでも野獣のようなギラギラした瞳の光は失われていない。顔を怒りで紅潮させつつ、四つんばいの姿勢で彼女を振り返る。



 ――が、そこに猫の姿はなかった。

「こっち」

「なっ!?」

 舞うような動きで反対側から接近していたミーニャは、細い足を鞭のようにしならせてクマルの腹を蹴った。黒袴がめくれて黒の水着が見える。


 ズンッ!

 衝撃波を伴う蹴りが腹に突き刺さり、クマルの巨体が数メートルほど浮いた。

「ぐはぁっ!」

 腹を押さえて白目を剥く。



 ミーニャの黒い瞳がキラリと光る。

「反省して」


 自然落下してくるクマル目掛けて、怒涛の攻撃を繰り出した。しなやかな蹴り、強烈な肘打ち、そして包丁の峰が襲い掛かる。

 下からの突き上げる無数の攻撃を受けてクマルの体は浮き続ける。


 しかしミーニャは荒々しくも舞うような優雅さは忘れていない。

 白衣の袖と黒袴の裾がめくれるように翻る。


 見ている熊獣人たちは声を失って、ただ美しくも激しい舞いに見惚れていた。


 一方、クマルは空中にいるため受身も防御もままならないようだった。

 金色の毛を逆立てるのみ。防御を上げる【超剛毛】で耐えるしかないよな。

 しかしミーニャは容赦なく、大きな体全身にくまなく打撃を打ち込んでいく。熊だけに。



 舞は続いた。

 クマルは気絶してもう声も出さなくなった。


 すると、ミーニャは手を止めて、刃渡りの長い解体包丁を両手で上段に構えた。

 太陽をギラリと反射する。

「終わり」

 自然落下してくるクマル目掛けて、全力で振り下ろす。

 後先考えない、必殺の一撃。


 ――使用後の硬直がある【一の太刀】だな。ただし相手防御値無視。攻撃力2倍。


 ズド――ンッ!

 クマルの腹に峰打ちをめり込ませて、さらに地面へ叩きつけた。地面が大きく陥没する。

 死んだんじゃないかと思ったが、クマルは口から泡を吹いて痙攣していた。しぶとい。


 見ているとラピシアがたまごを抱えたまま歩み寄って「きゅああああ」と唱えた。

 ――これで大丈夫だな。



 しばらく振り下ろした姿勢で止まっていたミーニャは、深呼吸してから包丁を納めた。

 見入っていた獣人たちに淡々とした声で言う。

「これだけやって、まだ文句があるようなら、次はないと言っておいて」


 熊獣人たちは我に帰ると、冷や汗を流しながら土下座した。

「は、はい」「必ず、説得します」「お許しくださいっ」

 ――完全に恐怖政治だな。まあ力がすべての獣人社会ならこれでいいのか。



 俺はそんな彼らに尋ねた。

「で、なんで急に裕福になった理由を言えなかったんだ?」

 すると、獣人たちは俺とセリカを交互に見た。


 しかし、ミーニャの長い尻尾がゆらりと動くと、慌てて言った。

「つい最近、宝石が出る場所を見つけたからです」

「ほう、それは別にいいじゃないか。なぜ隠す必要が……ん? ここは国境近いよな。まさか」


 熊たちが大きな体を縮こまらせて土下座した。

「その、宝石が出る場所は、国境を越えたエーデルシュタイン領になるんですっ」

「ほほおん」

 俺の態度に反応してか、ミーニャが収めた包丁の柄に手を添えた。

 少しだけ鯉口を切って刃を見せる。カチャっという無機質な音が残忍に響いた。


 ひぃぃ、と熊獣人たちは悲鳴を上げる。

「お金は返します!」「なにとぞお慈悲を!」「助けてぇ!!」



 俺はチラリとセリカを見た。

「どうする?」

 セリカは優しい笑みを浮かべて言った。

「宝石の出る場所を見つけてくださって、ありがとうございます。教えてくださるなら、今までの分は、どうぞ鉱脈発見のお礼としてお納めください」



 熊たちが沸き立った。

「「「おおお!」」」

「なんとお優しい!」「女神様じゃ!」「さすが美しい姫君!」

 踊り出す熊獣人たち。

 ――素晴らしい飴と鞭を使った人心掌握術。恐怖で震え上がらせておいて優しい言葉で懐柔する。さすが王女。


 俺は一応釘を刺しておく。

「ただし、ちゃんと道案内して、採掘が始まるまでの盗掘防止と、道整備はするようにな」

「「「はい!」」」

 声を揃えて彼らは答えた。


 ――貴重な財源。

 今すぐにでも採掘に取り掛かりたいが、セリカが咎人であるという状況を変えることが最優先だった。

 まあ、埋まっている原石が少しでも残っていれば、ラピシアに頼んで増やしてもらえるから問題ない。


 その後、熊獣人たちに宝石の場所を聞き、そして今後の予定を打ち合わせてから別れた。



 太陽は西の空へ傾いている。空を雲が多い始めた。

 俺たちは妖精の扉へ戻るため、山道を下った。次は猪獣人の村だ。


 すると隣を歩くセリカが暗い顔をして言った。

「宝石が見つかったのはよかったです。でも、たまごが……」

「意外と、見つからないもんだな」


 前を歩くミーニャが振り返る。

「大丈夫。ここにあるなら絶対見つけ出す」 

「頼もしいな。――そうそう、さっきはよくやったぞ。さすがミーニャだ」

「……当然のことをしただけ」

 淡々と言いつつもミーニャは急に頬を染めると、顔を隠すように前を向いて歩き出した。

 でも、尻尾は嬉しそうにぱたぱたと左右に揺れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GAノベルより1月15日に3巻発売します!
何度も改稿してなろう版より格段に面白くなってます!
勇者のふりも楽じゃない
勇者のふりも楽じゃない書籍化報告はこちら!(こちらはまだ一巻)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ