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コラルド戦記  作者: 油兄貴
第1章 始まりの復活とソビッティ国
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再び脱出

誤字脱字 生温くヲチと指摘をお願いします。


2015/04/18 三点リーダー修正

「オマエは何やったんだ?あ?」


少し離れた場所から声が聞こえる。

俺は目隠しされて頬に何処かに繋がれている。

悠長に食事をしていたらベンダ帝国の人間だと裏切られたというお粗末な流れになった。近くに誰かいるのか声を掛けられるが猿轡されて言葉も出せない。そして目隠しは鼻まで覆っているが、寒さと臭さが鼻につく場所に居るようだ。


「その縛り方だと大方、魔導師か?」


何か言おうとするが、ムームーとしか唸れない状態。


「魔導師も魔法を詠唱できなきゃ、ただの平民だな!…がはは」


いやいや、別に唱えなくて行けるとは思うが。

下手に逆らって危ないと判断して現在に至るがこの状態で既に数時間は過ぎている。問題は周りに人が居て魔法使った瞬間にざっくり剣で切られるのが怖い。だが、何もせずに居られるほど甘い状況でもなさそうだ。


ゆっくりと集中して<<サーチ>>を行って感知していく。


周りには今、話しかけて来た奴と何か壁か何かを挟んだ先に2名程いるようだが、問題ないだろう。小さい魔弾を繋がれた手の指先から出し縛られた手を解放する。そして目隠しと猿轡を外し、口の中に入れられた石のようなものを吐き出す。


一気に周りの吐き気を催す匂いが目に来る。

暗い中、直ぐ目の前に腐った何かと動くモノが見えた。

瞬時にここが牢獄のような所で、腐ったものが人間だったものと理解した。



「おい…おまえ」


声のする方を見ると薄暗い室内の中、格子にへばり付く筋肉質の男が居た。

人差し指を口に手を当て声をだすなという仕草をする。この世界で理解されるか不明だが。周りを見渡す。暗い石造りの中、鉄格子が嵌めてあり見事に牢獄という感じな状況だ。四畳半程度の部屋に俺とそして腐った死体が2つ。

このまま此処にいたら俺も腐った死体になるのは馬鹿でも分かる。

ベンダ帝国の魔導師じゃないと証明できたとしても、魔族だと判明しても更に悪い事になりそうだ…。


前に見える格子に触れると金属なのは理解した。

俺を押し込めた扉らしい部分には鎖を回してあり南京錠のような物で止めてある。回してある鎖を手に掴み、手の中で魔弾を発生させる。


飴のように金属が解けて、鎖はだらんと開放される。

音を立てないようにゆっくりと格子の扉を開け牢を出る。


「おぃ!おいってば!どうやった! いや、俺も連れて行け!」


先程から話しかけている男が小声で囁く。

無視をしてそのまま出口であろう扉へ歩く。扉の先には監視だろう2名がいるのは感知している。


「おい、頼む!頼むから!ここに居ても帝国の人間は殺されるだけなんだよ!」


次第に声が大きくなる筋肉質の男。面倒だが、このまま声を上げられても困る。ゆっくり下がり男の前に行く。


「出ても助ける事はできないかも知れないぞ?いいのか?」


「構わねぇよ!どうで此処で野たれ死ぬのは決まってんだ」


男の後ろの暗がりを見ると死体らしきものと細かい毛だまりがあった。

何故か分からないがそれが鼠毛で強烈な日々を送っていたと判断した。

男は筋肉質に見えていたが、近くで見ると締まった肉体というよりは痩せて、筋張り臭気を纏い油のような汗をねっとりと光らせていた。


同じように鎖を溶かして牢を開けてやると、彼が出て首を回して礼を言ってくる。扉の前に2名いると伝えてこちらは魔弾を手に用意。彼に扉を開けるように指示をする。男が扉を開け、俺は魔弾を鋭く尖らせて監視だろう2名に頭へ打ち込む。


力無く倒れる監視が音を立てないように俺達はその身体を支える。

俺はそのまま監視を牢へゆっくりと引きずり、服を脱がす。


「おい!おい!、何してんだ!?」 


男が小声で囁く。


「いいから、こいつ等の服に着替えろ、騒ぎを起こして脱出する」


男は一瞬目を大きくして口元を吊り上げて笑う。

服のサイズは多少 合わないが着替え終わり準備に取り掛かる。


「なぁ、待て、ここは騎士舎の地下だ。騒ぎを起こしてもやばい。記憶が確かなら下水道が城門先の堀へ繋がっているはずだ、そこから抜け出せるはずだ」


男は床にある下水を流すであろう蓋を指差して言う。



-----------------------------------------------------


人が這ってやっと進める狭い下水道を進む。

真っ暗な中、ヘドロがゆっくりと波を立て悪臭を放ち、時折目の前を鼠が泳いでいるのだろう感覚を得ながら進む。どれだけ進んだかわからないが、目の前に薄っすらと明かりと格子が見え、たどり着いた先には堀であろう場所に着く。格子から外を伺うと外は夜で月明かりが周りを照らしていた。魔弾で格子を飛ばし顔を覗かせると身の丈ほど下に水面が見えた。

水面には落とした格子が起こした波紋で月が揺らめいていた。


水音で気付かれたか?と慎重に周りを見ながら<<サーチ>>を掛けると此処はボスアニへ入ってきた門とは離れているのか、門も人も近くには居なかった。

丁度真上になる石塀にも運がいいのか見張りは近くに居ないようだ。


「おい、その塀の水はな、川に繋がってダリアナまで下ってるんだ」


後ろの男がそういうと頷き返して縁に手を掛けてゆっくりと音を立てないように入水する。続いて男も入ったところで男は手でこちらだと合図するように支持を出してくる。ここまで来て裏切ることはないだろうと、その後に続く。


そのまま蛙のように周りを伺いながら進む。

月が傾くまで無言で俺達はゆっくり泳ぎ、堀は確かに川に繋がってるらしく、その川と思しき流れに乗り川岸を暫く進んだ。

何処かの支流も増えてきてるだろうか川の流れと深さ増し随分と進んだ。

時々ヘドロで臭かったので、潜っては頭を毟る様に洗った。


空も白く空けてきた時に丁度、川岸が大きな石が積み重なった場所があり、

そこで川から上がり、水を含んだ服に嫌悪して服を脱いだ。


「助かったぜ!魔導師様に感謝だな!ちゃんとしたお礼が言っておくぜ、

俺はベンダ帝国第18師団に所属している突撃隊 エスト・フォン・シュタインメッツ 中尉だ。エストと呼んでくれ」


「どうも、俺は田中祥吾だ」


たなか?しょーご?と聞き返されたのでショーゴでいいと返事をする。

ニタッと笑いエストは手を出して来たので握手する。


「で、あの牢って事はショーゴはベンダ帝国の人間か?」


いやそうではないと、田舎で育って修行の旅に出て…と事の顛末を話す。

そうかそうかとエストは聞く。逆にエストは?どうでもいいが聞くと何でも北の森の先にある砦を攻略に進攻したが旗色が悪く軍は一時撤退。深く攻め入ったエストの隊を含む5小隊は取り残されて拿捕。指揮官級の5名はボスアニに連衡されて生き残りはエストだけという事らしい。


「あいつ等も俺みたいに鼠でも虫で喰ってれば生き残れんだが、貴族の恥だといって一切口にしなかったからな、もっとも俺も貴族の出ではあるがな、あと拷問は先にゲロっておくのが正解だぞ、がははは」


さらっとエグい事をいうな…。


さて、と思っていると遠くで馬が走ってくる音が聞こえる。

<<サーチ>>を限界まで広げて感知すると既に700~800メートル先に馬に乗り武装した10名程が近づいているのが分かった。


「もう追手かよ、川沿いに逃げるってはは安易すぎたか」


エストが笑いながらそう呟いて、護衛から奪った短刀を抜き身にして数回振って見せた。俺も手に魔弾を用意して<<サーチ>>に誘導させて狙いを定めた。

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