魔国の歩み
忘れた頃に更新
朝日を受けた波が光を乱反射してキラキラと光る。
波打際のずっと先に微かに見える幾つもの帆船。
ソビッティ国を担っていた人族達はオーガ族を主とした軍勢に追われ国を捨て北東のマルタ国や海岸沿いを経てシテソ王国やオーラエ国へ逃亡を行った。波打ち際には首都ソビから逃げ延びたが、帆船に乗れず膝を抱えるただ明日を悲観する者、どうにかして海岸を歩き他国に逃げようとする者が犇めき合っていた。
コラルド歴2126年6月10日
鬼巨族のエルンスト聖戦長はソビティ国の首都ソビとベリエ川沿いにあるダリアナの街、西部のグヌリを制圧すると、旧ダリアナを”ダーナ”に名称を変えて、教祖の住まう場所として成城を行いデベール・グラゲンダ統領長の指示の元、魔導平和複族国の樹立を宣言し、通称”魔国”がここに誕生した。
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首都ダーナがベリエ川の辺りに立つ街。
現在は建物を建てる雑音が響き渡り、道沿いには露天商が並び、
過去にない賑いを見せていた。
街の一角に兵が厳重に並ぶ警護する一角があり、
天幕の中では魔国の主要な面子が揃ってた。
デベール・グラゲンダ統領長を始めとする鬼人族
そしてエルンスト聖戦長達鬼巨族
狼人族、 豚人族、豚人族、蜥蜴族、鼠人族。
そして、俺がいる。
教祖から魔王という扱いらしいが、どうもこの組織感覚が分からない。
いずれにしてもたまに聞かれて判断を言うぐらいの立場。
尊敬されてるようだからどちらでもいいが。
…で、さっきから皆の話を聞いているが全く理解ができない。南駐屯地に何名兵を送るだの、魔導師を早急に育てる必要があるだの…。まぁ、テベールさんがいるから丸投げでこっちは難しい顔してウンウン頷いていればいいのだから。
正直、戦争が始まった時はここに兵を出せばとか思って口だそうと思ったんだが、あまりに臨場感があるというか怖いというか、当たり前だよね。現実なんだから。天幕に血だらけの人族連れてきてざっくり首切るを見かけた時は、なんというか”あ、これ俺は黙って方がいいな”を痛感した。
俺の中の魔族の血が騒ぐぜ!…とか患ってましたスイマセン。
今夜もこの会議的なのが終われば、身が沈むソファでお酒飲みながら読書タイムだ。両脇には半裸の女性が大きな団扇で風を送り、時より飲み物やらお菓子を差し出してくれる。
まさにハーレム!
文句を付けるとすれば、女性達が凄くマッチョで…
下顎から牙出ていて…呼吸の荒く…
肌が赤黒いオーガ族だという事だろうか。
人族の奴隷…いや、雇用はないのだろうか。
「…で!魔王様、如何しますか?」
テベールさんが話しかけてきた。
うは、意識が飛んでた。
「そうか… テベールの考えは?」
顎を擦りながら”聞いてましたが、そちらも考えどうなんです?”で対抗。
「我ら鬼人族は魔王様の安全が第一、ここでシテソは次期早々かと考えております」
テベールさんがそういうと奥の席で立ち上がり牙剥きだして待ったと声が上がる。
「臆したか!鬼人族は!」
「何だと!狼人族 こそ最初から尻尾巻いてるではないか!」
「我々もはこれ以上南部に向かうのは…」
「黙れ!蜥蜴お前らは砂漠に行くのが嫌なだけだろ!」
「なんだと!豚人族の癖に!」
「癖にだと!」
ああ、なんだこの腐った政治家みたいな言い合いは。
だがテベールさんが何を聞いていたのか分かった。
隣のシテソ王国に攻めるとかそういう事だろうな。
俺は手を挙げる。
「皆、静かに」
テベールさんがそう言うと皆此方を見て渋々席に着く。
「現在の制圧した場所の駐屯地の兵を強化
また我々に従う人族の知識を持ってこの魔国を強化
富国強兵を優先する。
また各国へ間者を送り偵察を行え。
これ以上の領土拡大は国が強化してからだ」
俺は言う。
エルンスト聖戦長が手を挙げるので、何だ言ってみろと促す。
「魔王様、失礼ながら何故でしょう。
今ならシテソ王国も落とせるはず…」
彼がそういうと数名が頷く。
「今回の聖戦で傷ついた仲間は居たか?」
「は、はぁ、それは当然いましたが」
「今回我々が聖戦で無事ここまで来れたのは、
強力な魔導遠隔兵器と強靭な兵のお陰だと私は分析してる。
我々は人族と違い個が強い。
そして今は数と個の強さで進んでいる。
だが、人族はズルイのだ。
それは今までの歴史が証明しているはずだ。
現在の力だけで未来の平和は確証がなく無理だと考える。
魔族もそして君たちも過去そうだったように」
一呼吸を置いて言う。
「いずれ大陸を制圧するならば、
今のような今、我ら一族が意見が割れるようでは、
魔国は疲弊するだろう。
まずは傷ついた仲間を助け支え
その上で大義を持って動くのだ」
ポイントは一族という連帯感だな。うん。
あれ?なんだ皆黙ってるが。
あれ??
テベールさんを見ると若干涙ぐんでる。
まさか戦うべきだって意見が正解だったか??
気まずいのでローブの上に貰ったマントを羽織直して
咳払いをしながら退席した。




