表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春に香る金木犀  作者: ななくさ
第一章 自然が好きな人
9/9

入国審査は顔パスで


あれからは教団や軍人の襲撃もなくようやく南の国に着いた。


南の国オルシエの関所はあの街みたいにレンガ造りではなくセンターのようなものになっている。これは必ず関所にいる人が通る人をチェックしやすいように作った建物で、もし教会の服や軍服をきた人が居た場合は必ずチェックが入る。それも普通の入国チェックよりもとにかく時間が長いらしい。だから商人以外はここを通る人は滅多にいない。


俺たちがセンターに入るとまず目に入ったのはセンター内から注目を浴びている人だった。


長い銀髪に派手な帽子を被っている女の人で憂いげな横顔は見る人がほうとため息をつくほど綺麗だ。その雰囲気を気づいてか気づいていないのか玲が堂々とその女の人の下に行き話しかける。



「戻りました、ギルドマスター」

「ん~?おう!愛しき弟!そしてアレリア!よくぞ帰還したな!」



あっはー俺もいるんだけどなー。


まぁあの集団は最早美男美女の塊みたいなものだし相手にすることない。正直言えば今俺はものすごく他人の振りをしている最中だし気づかれたくない。


この注目を浴びてる人は玲の実姉に当たり俺が所属するギルドで1番強いギルドマスターという名称をもっている。そんな人と俺が関わってるのみれば俺のここでの風当たりは強くなるしなるべく安穏に過ごしたい俺は早々に入国審査をする。いや入国審査のスペースに行こうとしたところ後ろから肩を掴まれた。



「ちょーっと翡翠ちゃん?一人で何入国審査うけようとしてんの?」



にっこりと笑うギルドマスターはさすがは玲の姉、笑顔が玲の数倍恐ろしく感じる。



「そもそも、君たちが入国審査なんて面倒なことをしないように私が直々に出迎えに来たんだ」



片目を閉じてふふんと笑うギルドマスターは女の人のはずなのに様になっている。


これが俗に言うカリスマ性ってやつか。俺が一人納得してるとじっとギルドマスターに見つめられた、え、何!?しかも気づいたら玲とアレリアさんがいないし!



「オイオイオーイ翡翠ちゃん、ここはえ、なんで?とか聞かなきゃいけねぇだろーがー全く、変に遠慮しちゃうんだねー翡翠ちゃんはー信用ねぇなー私」

「あ、いえ、そんなことは」



ない、こともない。いや信用はあるけれど。


だいたいこんな美人に遠慮なしに聞きまくる馬鹿がどこにいるんだ。ギルドマスターでもあるし俺の給料はこの人が用意してくれるんだしそもそも俺を拾ってくれたのは玲だけれど玲のお姉さんだし。


俺がぐるぐると下を向いて考えていると顎に手が添えられて視界が下から正面へ動かされた。目の前にはギルドマスターの顔。



俺は普通は赤面するだろうが多分顔面は真っ青だろう。みろ、あそこにいる男、すげぇ殺気立ってるんだけど。



「ソレ、翡翠ちゃんの悪いクセだぞ?」

「ギ、ルドマスター…あの、近い、です」

「人の顔見て顔面蒼白にならないでほしいんだがなー、まぁいい。ここはな、ギルドマスターの承諾があれば外から来た人は入国審査の大半をパスすることができる」



大半をパス、か。それはありがたいかもしれない。ふと、俺は疑問を感じて口を開こうとしたがやめておいた。


何してんだ俺。さっき遠慮なしに聞きまくる馬鹿がどこにいるとかいってたじゃん、その馬鹿になるとこだった危ない。


俺はぱふっと自分の口に両手を当てて危ない危ないと首を振るがそれを見た目ざとい、いや観察力のあるギルドマスターがいた。



「翡翠ちゃーん?何か疑問があるんだろ?な?言ってみろって」

「う、」

「楽になるぞ~疑問を口に出すことはとっても良いことだぞ~?」

「うう、」

「…姉さん、何尋問まがいのことをしているのですか…」



呆れた声をした玲がやってきた。俺は玲のうしろに隠れようと思うが玲も美形、アレリアさんは女性、とりあえず観葉植物のうしろに隠れた。



『み、緑の子、何をしているの?』

「ちょっとした人間との小競り合いです」



スッと隠れた俺にここの観葉植物は寛容だった。


観葉だけに寛容、うわ、さむっ。



「あーやっぱ信用ねぇのなー君たちも」

「うう、言わないでください…頑張ってスキンシップを図ってるのにぃ」

「いやアレリア、むしろあれは悪化しちゃうから」



俺が逃げた後にそんな会話を3人でしているなんて観葉植物のうしろに隠れている俺は知らなかった。








「へぇギルドマスターは和泉会議に出席してたから今まで今日みたいに迎えにくるのが無理だったんだ」

『ここ数日舞い込んだ風によるとそうね。緑の子がここに帰った日は必ず会議が入っていたわ』



それは、少し怪しいなと思った。


だいたい和泉会議はこの南の国の自治をどうするのかを決める大事な会議ではあるけれどそんな頻繁に行われるものじゃない。俺の外への任務はこれで6回目。それに帰ってくる日にちもバラバラで1ヶ月とか2ヶ月空いたりした時もあったのに。



『あ、でも一回か二回、マレイベル会議もあったかしら』



マレイベル会議に?ギルドマスターは和泉派のはずだけど。



俺は少し下を向いて考える。すると観葉植物がガサリと動いた。それに気づいて考えを中断する。



『気を付けなさい緑の子。教会や軍はここにはいないけれど油断は禁物。自然の中でも操られたり記憶を読み取られたという話しを最近よく聞くから用心するに越したことはないわ』

「そ、か・・・ありがとう」



俺はそう言って観葉植物から離れ玲やギルドマスターが帰る様子を見せたので気づかれないようにうしろについていく。





さっきの自然を操るっていうのはあの時俺を拉致しそうになったショタコン疑惑の軍人のことだ。風も言っていた通りあいつはヤバい、いや精神的なヤバさじゃなく。

今度見つかったら多分負けて拉致られる。


それに和泉会議やマレイベル会議のことも気になる、ギルドマスターを疑うつもりはないけれど。


この南の国は二つの派閥に分かれている。その分かれ方は双方のギルドマスターの違いなのだが一つは和泉というギルドマスターで、もう一つはマレイベルというギルドマスター。二人は旧知の仲ではあったが5年前に決別。今や犬猿の仲であり顔を合わせればケンカの嵐だ。そんな危うい二人は南の国を東と西に分け東を和泉、西をマレイベルとして統括することにした。だから東出身の人は和泉の国の名前だし西出身の人はマレイベルの国の名前だ。


けれどマレイベルがどうだ和泉がどうだっていう差別は無い。一時はあったらしいけれどそれを聞きつけた双方のギルドマスターが国民が俺たちのケンカに入ってくるなと言って黙らせたらしい。


本当は仲良いと思うんだけどあの二人。



この前街で二人して買い物してたけど絶対仲良いよねあの二人。











「あれ?翡翠くん?」

「え?」



センターを出たところにある路面電車に乗って東へ向かおうとする俺たちに話しかけてきたのは髪をした女の子だった。



「やっぱり!翡翠色の目をした翡翠くん!緑の髪の翡翠くん!よーく覚えてるよー!無事だったんだね!」



唐突に大声でそんなことを言い出した子に見覚えがないことに焦ってしまう。誰だろうこの子。大きな紫色の目をキラキラさせて言う目の前の子にどうすれば良いかわからなかった。



「え、っと…どこかで会った?」

「はえ!?覚えてない!?あーでもそっか、それも仕方ないよねー会ったの二年前だしねーぶー」



目の前にいる女の子は頬をふくらませていじけたような表情をする。二年前…といえば俺が任務についてやっとお金が入ってきた、まぁいえば昇給した時だから



「あ、あぁー待って何か思い出しそう。すっごく嫌で灰色な思い出だった気がする」

「えぇー!そんなことないって!私の中じゃ薔薇色だよ!薔薇色ランデブーの桜色マジックだよ!」



なんだ、薔薇色ランデブーの桜色マジックって。


でもそんなバカみたいなことを言ってた奴、いたなぁーいたわー薔薇色どころか灰色だ、いや最早色が混ざりすぎて茶色。



「君は、桐生家の」

「あー違う違う。私は桐生絢女のオトモダチの高野梓。庶民出だからねー有名でもなんでもないよ」



そういって笑う高野にそっかと言って玲は高野に興味を無くしたようだった。高野は逆に玲に興味を持っているらしく玲に質問攻めをしている。



高野が言っていた桐生絢女は俺が聞きたくない名前だった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ