朝からパスタは胃がもたれる
『西の国が中央の国に砲撃を…』
『どうせ詐欺よ。向こうは…』
俺の朝は小鳥が話している内容を聞くことから始める。ったく、爽やかな朝になんつー物騒な話しをしてるんだこいつらは。
「物騒な話し、何」
俺は舌っ足らずではあるが寝起きの頭で窓を開けて小鳥に問いかけると小鳥はおや、と驚くこともなくこちらを振り返る。
『おはよう緑の子。何、西の国が中央の国に砲撃をしかけると宣言したそうだ』
『おっはよーどうせやるやる詐欺よねー西の国の人間たちは俺達が強いんだーってとこ見せたいだけでしょう?それよりも『和泉』ギルドの『アヤメ』が…』
小鳥は噂話が好きだ。そりゃあもう国に関することから芸能人のゴシップ記事までメスオス構わず噂話をしまくる。
まぁ情報がすぐに耳に入るからいいことなんだけどさ。
俺が小鳥たちの噂話を聞いて微笑んでいるとコンコンという音がした。
「おはよう、翡翠。また窓を開けて誰かと話しているのかい?」
「え、あ…玲」
玲は閉じたドアをノックせずにわざわざドアを開けてから俺に気づくようにドアをノックした。
今の、聞かれた?
「えっと、玲?今の」
俺は戸惑ってしまいどもりながらも聞かれたのか聞いてみるが玲は無視して窓の方へ歩み寄る。
「…小鳥しか居ないな。まぁ翡翠が変なのは今に始まったことじゃないし」
へ、変なのって言われた!
軽くショックだけどまぁ仕方ない。他の人は鳥の声なんて聞こえないらしいし前玲に説明したら疲れてる?とか言われたから仕方ない。
俺は洗面所に行って一通りの支度をしベッドのそばに置いておいた今日の服、といっても上は昨日と同じパーカーでパーカーの下はTシャツ、下はハーフパンツよりも長いパンツを履いて最後にターバンを巻いて準備完了。
一泊だけの宿ではあるがコインランドリーがあるおかげで今日はお昼に出発だそうだ。昨日玲がランドリーに行く姿を見たし。
「じゃ、朝ごはん食べに行こうか。アレリアが玄関前で待ってるし」
この宿は朝食夜食付きのプランもあるが主にアレリアさんのせいで朝食抜きのプランとなった。というか報酬金額といっても盗みの金なので玲は使いたくないといってこのプランとなったのだ。
「あ、翡翠ー!玲ー!こっちこっちー!」
玄関前まできてフロントに行ってきますといったあとにアレリアさんのもとへ駆け寄るとふふふん、といった様子で得意げな表情のアレリアさんが居た。
あ、今日は髪の毛ほどいてる、綺麗な金髪の髪だ。
そういえば玲は銀髪になっていた。スプレーで金髪にしていたからか髪の毛を気にしている玲がいた。
「ちょっと玲、髪の毛見すぎ。ただでさえ女顔なのに…正直女の子みたいよ」
「あー女顔は昔から言われていたし。気にしないよ」
玲はそう言ってにっこりと笑うと男の人が振り返った。正直アレリアさんも玲も美人な顔だ。いや玲は美人じゃなくて美形か。
なんだか2人の横に並ぶのは申し訳なく思ってスッとうしろに行く。
2人はぎゃいぎゃいと騒いでいて男の人の注目を浴びている中俺はうしろを歩きながら今日の朝ごはんは何か考えていた。
「朝にパスタ…」
いや、パスタはないだろう。パスタは…。
「ここの店、旅人にすっごく有名でね~ボリューム満点で安いのよー!」
アレリアさんはそういって嬉々として店内に入っていった。店内はアンティーク雑貨が飾られていて雑貨としても経営しているらしい。
なんというか可愛らしいものばかりでここは女の子が入る店なんじゃないかと戸惑うほどだ…。
席についてしばらく店内をキョロキョロと見回していると店員さんからご注文は、と話しかけられた。
俺はハーフサイズのミートスパゲッティを頼み、アレリアさんは唐辛子入りのカルボナーラ、玲は本日のオススメとかなんとかいうやつを頼んでいた。
『えー速報です。西の国、ミーレスから先ほど中央の国に砲撃をするという宣戦布告のような…』
「また、戦争が起きるのかな」
「どうせやるやる詐欺よ。撃つ勇気もないくせに宣告して馬鹿みたい」
アレリアさんはそういって用意されていたお冷を口に含む、が俺はそのアレリアさんの言葉を聞いた周りの空気が変わったことに気づいた。俺は朝に小鳥が言っていたなーと思いながらもアレリアさんと同じくお冷を口に含む。あぁ、生き返る。
俺がそう思っていると椅子から立ち上がった音がした。正面の玲をみるとため息をついて帰る身支度をしている、今日は朝ごはんなしか。
「ミーレスを馬鹿にするな。このアバズレが」
「アバズレ!?そっちこそ、私を誰だと思っているのかしら?南の国の騎士団長の娘!アレリア=メイリアス様よ!」
アレリアさんがそう言った瞬間メイリアス家の娘って、あぁ確か落ちこぼれのとかそんな声が聞こえる。
「はん!落ちこぼれが何ほざきやがる!お前確かアカデミーの実技で歴代最悪点をとったんだってなぁ?」
「っ!」
それを聞いたアレリアさんは目をまん丸にして俯いた。あの元気な堂々としたアレリアさんの影は見受けられない。周りもニヤニヤと笑みを浮かべている中で俺は冷静だった。
「ねぇオッサン。一つ質問なんだけど騎士団長の娘で実技が最悪の点数のどこが悪いの?」
「は?当たり前じゃねぇか。騎士団長の娘だぞ?騎士団長は南の国が誇る戦闘能力の持ち主だ。その娘が最悪点なんて」
「え、なんで?騎士団長が最悪点じゃなくてアレリアさんが最悪点だったら悪いの?どうして?アレリアさんは騎士団長じゃないんだよ?この国が誇る戦闘をすることもないのにどうして?」
「いや、だって親が…」
「親が騎士団長だからってそれをアレリアさんに求めるの?騎士団長には戦闘が、アレリアさんには学識がっていうのもあるじゃん。ねぇ皆?どうしてアレリアさんだけが悪いの?」
「~~~っ!チッ」
俺はただ疑問を問いかけただけだった。いつもいつもアレリアさんが悪いとか言うけどアレリアさんは何もしてない。確かにちょっとした犯罪行為はいけないことだけどどうしてアレリアさんばかりが責められるのか。
野次馬達はつまらなさそうに俺を見て帰っていく。え、何、俺が悪いのこれ。
そう思っていると後ろから優しく抱きしめられた。
「ひ、すい…ありがとう」
「え、いや俺は」
「いいの。ありがとう」
お礼を言われてなぜお礼を言われたのか釈然としないが嬉しいことには変わらないためアレリアさんをしばらくそのままにした。