出会った日
※残酷描写あり
鬱蒼とした森にひとつの火が灯る。
そこには成人に満たない一人の少年と大人のような雰囲気を醸し出す一人の女がいた。
しかしその大人のような女は信じられない、と声を発して苛立ちを顕にする。
「なっんで!私たちがこんなことしないといけないのよ!」
「仕方ないよ。マスターの頼みだし」
「そのマスターが来ればいいんじゃないの!もう!この私の綺麗な身体に虫でも入ってきたらどう責任をとるわけ!?」
「自分で言わないでよ。それにそんなこと言ってたら本当に起こっちゃうよ?」
「…ひいいいいいいいいいい!やめてよ!想像しちゃったじゃない!」
女はそう言って両腕を交差させる。じゃあしなきゃいいじゃんと少年は思うが言っても無駄かと森の奥へと進んでいく。
少年と女は草を掻き分けながらもきょろきょろと辺りを見回し何かを探しているようだった。
奥へ奥へと進んでいくとぐちゃぐちゃという音と何かを裂いている音がした。
「この音・・・っ!」
「どうやらお食事中のよう・・・!っうそ、何か、人の声・・・聞こえない?」
「アレリア、僕は奴らの目の後ろをいくから斜め前で構えてて」
「わかったわ」
こんなところを人がいて、それも食べられているだなんてどういうことだろう、と思う少年はそっと移動し肉を裂いている者の前に行く。
見ると食べているのはこの世界に蔓延る魔物だった。
「サーペイン?おかしいな。彼らは集団行動のはずなのに・・・」
そう、サーペインと呼ばれる魔物は普段は集団でいるためにこんな一人で獲物を食うなど聞いたことがなかった。
だがしかし、これはチャンスだ。
少年はそろりそろりとサーペインの後ろに移動すると食われている人間の喘いだ声が聞こえる。
「っ・・・い、だ・・・れ、か」
「っ!」
まだ生きていると感じた少年は剣を取り出し歩みを早めてサーペインを串刺しにした。
サーペインは悲鳴をあげたあとに事切れて横に倒れた。サーペインが倒れたあとに襲われていた人間は緊張がとけたかのように眠った。外傷は股の肉だけのようだ。
「大丈夫で・・・え?」
少年が見たのは世にも珍しい見たことのない若草色の髪をした年の近そうな人のような者だった。
人間ではないような髪の色に呆然とする少年の頭が横からはたかれた。
「玲、この子は魔物じゃないわ。それにこの子股の肉が見えてる。サーペインの牙も取れたことだしマスターに言って治療班に渡しましょう。ほら、手伝いなさい」
「あ、うん」
アレリアと呼ばれた女は持ってきた布で止血をしながら言うと玲と呼ばれた少年はすぐさま治療の手伝いをした。
「これで、良しっと。強いわね、この子。普通は痛すぎて気絶しちゃうのに」
「・・・そうだね。よっ、と・・・?」
「大丈夫?重いなら持つわよ?」
「あ、いや・・・ものすごく軽くてびっくりしただけ・・・」
「それは大変、マスターにお願いしてごはんも食べさせましょうか」
ニコニコと笑うアレリアに何をそんな笑っているんだろうかとため息をつきたくなる玲だったがそれよりもこの体重の軽さに驚いてしまいため息も引っ込んでしまった。
この子、何食べていたんだろう