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来ない彼と待つ私

作者: 三毛猫

クリスマスが近づいてきたので書いてみました(=^・ω・^=)

 クリスマスネオンが眩しい町並み。

 携帯電話に着信はない。

 何度もメール画面を見てもメールは届いていない。

 もう一時間も約束の時間が過ぎていた。

 麻生恵(アソウ メグミ)は待ち合わせ場所でひたすら彼を待った。

 いつもこうだ。

 待ち合わせに間に合ったことがない彼。

 それをひたすらに待つ私。

 恵は彼にメールを打つ。

 『どこにいるの?約束忘れた?あと一時間したら帰るね』

 メールを送信して、ひたすら待つ。

 待っている時間を持て余すように本を読む。




 その本の中は甘い、甘い恋の物語。

 今の自分にはない優しい彼と素直な彼女。

 幸せいっぱいの二人。

 求める恋人の姿がここにある。

 彼女より先に待ち合わせ場所に来て、彼女に遅いぞって嬉しそうな顔をする。

 彼は好きだ・・・と愛を囁き、優しく彼女を抱きしめる。

 彼女も大好きだよと笑う。

 こんな幸せな世界は現実にはないのだろうか・・・?




「待たせたな。何やってんだ?」

「晃司・・・」

 いつの間に着たのか彼、鳥羽晃司(トバ コウジ)が恵の正面に立っていた。

 本を閉じて鞄にしまう。

「遅い。どーせ寝てたんでしょ?」

 あきれ顔で自分より20cm以上高い身長の男に怒る。

 寒空の下で待たされたのだから少しくらい怒ってもいいだろう。

「あ〜・・・悪かったって。怒るな」

 両手で恵の顔を覆い、ははっと笑う。

 暖かい手とは対照的に恵の身体は冷え切っていた。

 それを暖めるようにおでこにキスを落とす。

「暖かい・・・」

 ほぅ・・・と白い息を吐いて目を閉じる。

 少しそのままでいて暖まってから晃司は手を外す。

「行くぞ」

 次いで恵の手を引いて歩き出す。

 手袋越しの手も暖かくて幸せだと思う。

「どこに行くの?」

 慌てて晃司の歩調に合わせて歩く。

 晃司は恵をちらと見てから口の端を持ち上げる。

「秘密」

「・・・何それ?どうせファミレスとかでしょ?」

 あきれながらもクリスマスのこの夜に一緒にいられるのが嬉しかった。

「ふん、言ってろ」

 にっと笑って恵を見下ろす。

 こんなに含みを持たせるのは何なんだろう、と恵は首を傾げた。




 着いた先はビジネスホテル。

「ここで何すんの?」

 一瞬怒りがこみ上げてきたが一応確認を取る。

 したくないわけではなかったが、会ってすぐホテルってのは何とも味気ない。

 しかもクリスマスの夜に。

「ご休憩じゃなくて、メシを食うんだ」

 ぐいっと手を引いて自動ドアをくぐる。

 三階くらいまで吹き抜けで、その真ん中に大きなツリーが飾られていた。

「わぁ・・・きれー・・・・・・」

 感嘆のため息と共に感想を述べる。

 見上げるほどのツリーには天使をモチーフにした飾りがあり、今にも動き出しそうだ。

 恵がこういったファンタジックな物が好きだと晃司は知っていたのだろうか?

 ちらと隣に立つ彼を見上げると満足そうに笑っていた。

「こういうの好きだろ?」

 無邪気ににっと笑って子どものようだ。

「さ、行くぞ?」

 また手を引いて歩き出す。

 そのままエレベーターに乗り込んでパネルを押す。

 その間も手をつながれたままで、彼を見上げるとやはり嬉しそうだ。

「どこまで行くの?」

 言うのと同時くらいにエレベーターがゆっくり停まる。

「もうすぐだ」

 扉が開いて手を引かれる。

 降りた階から迷いなく晃司は歩いていく。

 まるで来たことがあるかのように。

 一つの扉の前に立ち、カードキーを取り出す。

 いつチェックインしたんだろう?と恵は思ったが、開け放たれた扉の中の世界に目を見開く。

 そこには色とりどりのイルミネーションに飾られた部屋があった。

 驚きで声も出せない恵の手を紳士的に取り、口元まで持ってくる。

「メリークリスマス・・・愛してるよ、恵」

「え?」

 恵はまた驚き、彼の顔を見上げる。

 目の前にいるのは待ち合わせに遅れてくる彼ではなく、物語の中の優しい彼氏の姿だった。

「ほら、来いよ」

 言い方はぶっきらぼうだけど、顔が―――赤い。

 つられて恵も赤くなる。

 そして中へ進むと温かい食事とクリスマスケーキ、冷えたシャンパンがセッティングされていた。

「これ・・・?」

 恵は横にいる彼を見つめる。

 照れたように鼻の頭を掻きながらごにょごにょと言う。

「たまには・・・さ、彼女サービス?」

 そこまで言って恥ずかしかったのか、手を引いて椅子に座らせる。

 向かいに座ってシャンパンを軽快に鳴らして開ける。

「準備してたから遅れたの?」

 とぽぽ・・・と二人のグラスにシャンパンを注ぐ。

 晃司はグラスを持ち、傾ける。

 慌てて恵もグラスを持ち、カチンと鳴らす。

「う〜ん、まぁ・・・そんなとこ」

 シャンパンに口をつけて視線をそらす。

 恵は同じようにシャンパンに口をつけてくすっと笑う。

「ありがとう、晃司」

 唸りながらガシガシと頭を掻く。

 彼の困ったり、照れた時の癖だ。

「いつも待たせてわりぃとか思ってたから。たまには先に動いてたかったっつーか・・・・・・何笑ってんだ?」

 くすくす笑う恵に半眼になって赤い顔を向ける。

「ううん、嬉しくて。晃司、大好き!」

 恵は素直に気持ちを告げる。

 晃司は嬉しそうに笑ってテーブル越しに素早く唇を奪った。

「俺も。喜んでくれたんならよかった。さぁ、食おうぜ?」





 クリスマスの日、私は幸せな一夜を過した。

 次に会う時、きっと私の彼は待ち合わせに遅れずに来るだろう。

 そして言うんだ、遅いぞって嬉しそうに。

 それを楽しみにしながら、私は今待ち合わせの場所に行く。

クリスマス仕様です。季節が変わるとイベント物が書きたくなります・・・(=^-ω-^=)そして書いてみちゃいました。なんの捻りも盛り上がりもないですね。ただの自己満足のようです・・・すいません。。

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― 新着の感想 ―
[一言] 盛り上がりがなくても、楽しめました。 物語のように上手く行っている恋ではないけれど、上手くいくようにする彼と、それを楽しみに待つ彼女って感じですね。 とても面白かったです。
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