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雨女とデートしよう!

僕は完全に見くびっていたようだ。この雨女のことを・・・!


週末。

雲ひとつない青空。

待てよ!今6月だよ!!?

梅雨前線サボッてんのか!?

昨日までどよーんと重暗い雲が雨を降らせていたというのに。

「お、お待たせ・・・。」

「ヒロくんだ!おはよう♡」

もういる!!?

30分前には着いたはずのに、いったいいつから?

「楽しみすぎて、6:30に着いちゃった♡」

ほぼ始発!

「・・・じゃ、行こうか。」

「うん♡」

余計なことを考えるのはやめよう。

今日は石のごとく過ごすと決めたのさ。


「今日の私、どうかな?」

「・・・いいんじゃない?」

「やったー!ヒロくんに褒められちゃった♡」

正直嘘じゃない。

黙ってれば可愛いのは本当に思う。

今日だって、青いシャツに十字架のネックレス

・・・なんで服被ってんの?

「お揃いにしてみた♡」

ホント黙ってれば可愛いのに!




デートの定番、映画館。

「な、何見ようか?」

「ヒロくんが見たいのがいいな。」

何見ても見た気にならないよ!

・・・そうだなぁ。

「じゃあ、これにしようか。」

適当な恋愛映画を選ぶ。

話題性有り、無難性も有りだ。

「あ、お金」 

「いいよ、ここは僕が出すよ。」


これは兄さんからの軍資金。 

兄さん曰く、

「デートは男からだ。何故なら格好いいからだ。」 

という格好いいのかよくわからない理屈により、

5000円を渡された。

火に油を注がなければいいけど。

「・・・ありがとう。」

「どういたしまして、さ、シアター入ろうか。」

肩透かしな反応?まぁいいや。



無難性重視の映画でクソ程泣いて、シアターを出る。

こんなに鼻をかんだのいつ振りだろう。

「まさか、あそこで主人公がねぇー」

不思議と映画の話を振る。

デートはだから映画がいい。

「うんうん!ヒロくんが前のめりになってたよね!」

「その後ヒロインが主人公の腕に抱かれて」

「うんうん!ヒロくんが最初に泣いてたとこだよね!」

「最後に、ヒロインの友達がさぁー」

「うんうん!ヒロくん嗚咽を噛み殺して」

「って、ヤミコさん映画ちゃんと見てたの!?」

「うん!ちゃーんと(ヒロくんのこと)見てたよ♪」

駄目だこりゃ。

ずっと無視してたけど(途中から映画に夢中だったけど)、この子まさか映画中ずっとこっち見てたのか?

「泣いちゃう君も大好き♡」

「そうですか・・・」


次は、食事だ。

ヤミコさんがどうしても行きたいと言うので、どんな黒魔術の店かと思いきや、老舗の喫茶店。

意外だ。

「そんなことないよぅ。まぁ、ヒロくんとならどこでもいいけどね♪」

思考を読むなっ!

こうしていると、まさか本当に普通のカップルに見えて・・・待て待て待て相手はあの、雨ヶ崎ヤミコ、だよ。

無い無い。

僕には、ちゃんと心に決めた人が

「お待たせしました、アベックフルーツオレです。」

店員さんがバチコーンと音がしそうなウィンクをかまして置いていったそれ。

アベック

アベックって何だ

机を見ると、どでかいコップに黄色い液体が並々と注がれ、

その上には、ハートの形を模して二股に出口が別れたストローが突き刺さっている。


・・・帰ろう。

無言で席を立とうとすると、強風が店のドアを揺らした。

「帰るの?」

ヤミコの顔は下を向いて表情が見えない。

「だいすきなヒロくんと、いっしょにのみたいな。

いっしょうけんめいしらべたんだ。

だいすきなヒロくんと、いっしょにのみたいな

どこいくのかな?おといれかな?

そうだよね、かのじょをおいてどこかにいったりしないよね。

おいてかれちゃったらどうしよう?

ありえないありえない。ヒロくんやさしいもん。

でももし、

おいてかれちゃったらどうしよう?

おいてかれちゃったらどうしよう?

おいてかれちゃったら・・・」

「だぁー!喉乾いた!ヤミコさん、さっさと飲むよ!」




生まれて初めて息がぜぇぜぇするほどストローを吸った。

果肉が凄くて全然口の中に入って来ないったら!

ニコニコのヤミコさん、クタクタの僕。

ちなみに味は滅茶苦茶おいしかったです。




簡単な軽食を済ませて、今度はヤミコさんが行きたい店があるらしい。

考えるのが段々馬鹿らしくなってきた僕はそのまま着いていく。 

着いた先、シルバーアクセサリーショップ。

「今日の記念に、お揃い買いたいな♡」

「こ、こんな高そうなところ」

「大丈夫だよ。私が、ぜーんぶ、出してあげるから。」

もう好きにしてくれ。




何となく想像はしてた。

「どれかなー♪どれにしようかなー♪」

ヤミコさんが見てるのは『指輪』。

指輪て!

いくらなんでもペアリングは不味い。

それに、流石に映画、食事と、ここまで付き合ったんだ。




いい加減、もういいでしょ。

もう、無理。付き合いきれない。

「ヤミコさん、まだかかる?」

「もう少しだけ、もう少しだけお願い。」

「じゃあ、僕外で待ってるね。」

そのまま僕は店の外に出て、




駅に向かって走り出した。




そのまま電車に乗って、僕は自宅の最寄駅に向かう。

あー疲れた。

せっかくの休みに何をしてんだろう僕は。

帰って漫画でも読もう。




最寄駅に着く頃には、雲行きが怪しくなってきた。

黒く重い雲。

梅雨の本来の空模様。

家まで持ってくれよ、と思いながら歩を進める。


ポツ


ポツ


あー、駄目か。降ってきた。

どこかコンビニで雨宿りでも


ポツ


ポツ


・・・あれ?

全然来ない。


ポツ


ポツ


何だか、小雨でもない。

ずっと、ポタポタしてる。

まるで、


・・・誰かが、泣いてるみたいに。



「あーもう!!」

僕は踵を返し、最寄駅に走り出す。



アクセサリーショップに戻るころには、大雨になっていた。

店の前には、ずぶ濡れで空を見上げながら、雨ヶ崎ヤミコが立っていた。

「あー!ヒロくん♡」

「何でだよ!」

僕は思わず怒鳴った。

「僕は、君を置いて帰ったんだ!もう、うんざりだったんだ!好きでもないのに毎日毎日絡んできて!迷惑なんだよ!!」

「今日の態度でもわかったでしょ!?僕は、君を置いて帰るような、酷い奴なんだよ!!待ってた君を怒鳴り付けるような!!」

「なのに」

雨でよかった。

「なんで、まだ、待ってられるんだよ・・・」

多分ひどい顔だから。




「私はそうは思わない。」


「だって」


ヤミコさんは僕の左手を優しく握ってくる。

「こうして、戻ってきてくれた。ね?」

いつもより透き通ったヤミコさんの声に心が傾きそうになる。

今日だって、僕なんかと一緒でも、ずっと楽しそうにしてくれてた。

僕、もっとヤミコさんのこと・・・



ん?



「何してんの?」

「お揃い♡」

ふとヤミコさんの方を見下ろすと、

僕の「左手」の薬指に、

指輪が嵌められていた。

「なぁーにしてんだよおおおお!!」

嘘だろ!

全っ然とれない!!

「ヒロくんと、お揃いの指輪♡」

「お、そ、ろ、い、じゃ、ねぇぇぇぇぇ」

ま、ま、マジかよホントに取れない!?

ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ!


ポンッと小気味のいい音と共に、指輪が外れる。

チッ

舌打ち聞こえてるぞ。


でも、

「今日の思い出、指には付けないけど、大事にするよ。」

「え?」 

鳩が豆鉄砲くらったような顔をする。

「半分出すよ。いくらだったの?」

「いいの?ヒロくんとお揃い、いいの?」

「恥ずかしいから何度も言わせないで!で、いくらだったの?」

2~3万くらいなら、お年玉貯金で何とか、

「20万円。」

「えっ」


僕は完全に見くびっていたようだ。この雨女のことを。

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