体育祭の快晴のためにヤンデレ女とデートすることになった僕の話
これは、体育祭の快晴のためにヤンデレ女とデートすることになった僕の話。
「なぁ、頼むぜヒロト!病み子に、な?」
「おれたち、この日のために頑張って来たんだよ!」
友人というものは、かくも薄情なものか!
「(出来たら兄貴のツテで、3年の生徒会長とふたりっきりにしてやるからよ!)」
最高最悪のカードをよくわかってるな・・・!
僕の憧れの先輩、薬師丸ナオコ会長・・・ぶっちゃけ同じ空間で同じ空気吸ってるだけで幸せ、です。
お近づきになれたら嬉しいなデヘヘ・・・仕方ない。
男にはやらなきゃいけない時がある。今さ!
「ちょっといいかい?」
「なぁに?ヒロくん♡」
雨ヶ崎ヤミコ。
通称『病み子』
何が病んでるって?そりゃあね・・・
「今日は、朝すこしだけ、平均より3分玄関から出てくるの遅かったね?昨日の晩、夜更かししてたせい?そういえば火曜日だもんね!タライガンマクスマム、リアタイしてるもんね!寝不足で眠たいヒロくん、可愛いよ♡」
そう、こういうの。
「あの、さ、雨ヶ崎さん。」
「ヤミコって呼んでよ?」
「や、うん、雨ヶ崎さん。」
「や・み・こ?」
「あまが」
「なまえでよんでくれないんだ」
ヤバい!
「ふーんそうなんだわたしとあなたのなかなのに、たにんぎょうぎにみょうじでよぶんだ?
おさななじみのかわむらさんは、ひなこってなまえでよぶのに、わたしはみょうじでよぶんだ?
そうやってせいしんてきにきょりをとって、なに?ためしてるの?わたしのあいを、ためしてるの?
ほうりつがゆるせばいますぐにでもしやくしょであなたとおなじみょうじに」
「ごめん!ごめん!その、ヤミコ、さん。」
「なぁに?ヒロくん♡」
中学校入学一日目にして僕に一目惚れしたという、とんでもない女子。
最初こそ、髪は長いけど素顔は可愛いなんて少しでも思った自分の両肩をガッシリと掴んで「あの女には絶対に関わるなぁぁぁ!」と過去の自分に言ってやりたい。
かろうじて今は「おともだちからはじめさせてクダサイ」という要望が通り、おともだち(アプローチ強め)という立ち位置でクラスメートやらせてもらってます。
こんな感じだから脱線するの、ゆるしてね。
最初に言った、天気のためにというあれ。
あれをこれからこの雨ヶ崎さんにお願いするわけなんだ。
「や、やみこさん、来週の体育祭なんだけどさ。」
「うそ!?ヒロくん!!まさか中学校生活始まって最初のイベントからふたりで過ごしてしまおう会!?会長!!それは時期尚早では・・・静粛に」
静粛にしてほしいのはこっちだよ。
「じゃなくて、体育祭の日、ね?そのー・・・」
「雨を降らさないで欲しいんだ。」
雨ヶ崎さんはきょとんとする。
「なぜ?」
「みんな、楽しみにしてるんだよ。友達、3年生の部活の先輩に目にもの見せたいんだって。」
急に窓の外が暗くなる。
「『みんな』?それ、知らない。」
ピシャーン!!
カミナリが鳴り始める。
「それ、わたしとあなたに関係、ある?」
汚泥の底のような瞳が、まっすぐに僕を貫く。
ま、負けない!
「せ、せせせせっかくはじめての、そう、ふたりのはじめての中学校でのイベントだからさ!!どうせ一緒なら、晴れた虹の下で、なんて素敵だと思わない?」
すると、今度は雲間から光が差してくる。
「そうよね♡」
「じゃ、じゃあ・・・」
「じゃあ、今週末はデートね!!」
「え?」
「体育祭イベントの前に、お互いのこともっと知り合わなくちゃ!!」
「え?え?」
「・・・嫌、なの?」
「めっそうもない!あ゛ー楽しみだなぁ!!」
雨ヶ崎ヤミコ。
天候を自由に操れる能力を持った、『雨女』
僕は雨女に惚れられている。
そう、これは、体育祭の快晴のためにヤンデレ雨女とデートすることになった僕の話だ。




