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2層目③:それ、飲むの?
ヒカルの声は小さく、かすれていた。
ほんのしばらく前、最下層に居たころは、もっと普通に話せていた。
ニセモノの太陽が照らす中、汗を流し、蔦の這う悪路を、ただ歩みを止めずにいる。
それだけのはずなのに。それだけで、ここまで削られるのか。
惰性で前に踏み出す。
「っ!」
十分に足が上がっていなかった。
普段なら転ぶ前に建て直せただろう。
だが、今のヒカルには傍に垂れている蔓をつかむだけでも精一杯だった。
生憎、その蔓はプツリと音を立て、ヒカルを支えることなく千切れてしまった。
半端に支えられたからだろう。
衝撃は背中から伝わってきた。
視界は葉の隙間からの光で白く染まった。
ヒカルは起き上がることなく、しばらく上を見上げていた。
ここに空はない。あるのはニセモノだけ。
エレベーターを出たのが、もうずいぶんと前に感じられる。
こんなところで何をしているのだろうか。
思考がほどけかけたその時、ヒカルの顔に何かが触れた。
ヒカルが千切った数本の蔓から、雫が落ちたのだ。
先ほどまでの様子が嘘のように飛び起きる。
蔓を掴もうとした、その瞬間――
「良かったね、水があって。それ、飲むの?」
その時、傍らで座り込んでいためぐるが声をかけた。




