2層目②:渇き
植物がひしめく通路の上を、ヒカルは悪戦苦闘しながら進む。
その後ろを軽快な歩みでめぐるがついていく。
何かコツがあるのかと思い、めぐるの歩みを観察するが、何もわからなかった。加えて、彼女はヒカルの後ろを歩いている。後ろを振り返りながら歩き、何度も転びそうになったので、ヒカルは観察を諦め、黙々と先を目指した。
「人間の手が入らないだけで、こんなに野生的になるもんなんだな。」
しばらく前なら、自然への畏怖を込めた素直な感想だっただろう。今となっては、悪路への文句にしか聞こえない。
そんなことは意に介さず、めぐるは答える。
「そうだね。剪定されて、成長も管理されてたんだと思うよ。この暑さだし、水がなかったら、この子達もここまで大きくは育てなかっただろうね。」
「水、か。」
めぐるの言葉で、ヒカルは、ふと思い出す。
目が覚めてから数時間、自分が何も飲食していないことを。
自覚してしまうと、意識は向きやすくなる。
汗を拭う手に伝わる水の気配。
青々としげる植物の瑞々しさ。
暑い。喉が渇いてきた。水が欲しい。
少しでいい。日陰で休みたい。
しばらく黙ったまま歩くヒカル。
そんな彼を心配したのだろう。
「ヒカル、大丈夫?」
いつもと違い、口元の笑みはなく、視線と声に心配が滲む。
その些細な違いに気づくのが遅れる程度には、ヒカルは参っていた。少しボーッとした視線のまま、小さく口をついたのは、飾りのない、まっすぐな欲だった。
「水が欲しい。」




