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最下層③:少女との会話

言葉もなく、ただ見つめ合う二人。

ほんの数秒に満たない沈黙が、その何倍にも感じられた。

警戒心を全開にする青年に対し、少女の方は全く警戒している様子はない。

ただ見つめ合っているだけなのに、青年は不思議と自分の全てを彼女に見透かされているような気がした。


そんな膠着した沈黙を破ったのは、彼女の鈴を転がすような声だった。


「上に行きたい?」


問いは至極シンプルだった。

「先に進みたいか」と言い換えても良いだろう。

だがそのための道――エレベーターは全て壊れている。

他に道はないはずだ。少なくとも、彼の歩いてきた道には、それらしいものはなかった。


先に進むためにはエレベーターで上るしかない。

だが、エレベーターは先に確認した通り、その役目を放棄している。

彼女の問いかけと、今できること、青年の置かれている状況の全てが噛み合わない。


「見ていたかはわからないけど、全部死んでる。ボタンを押しても、何も起きない。」


青年は肩をすくめ、腕を広げて手を広げながら、ただ事実だけを返した。

いつからいたのかは知らないが、自分にできることは全て試したうえで、この先には行けない。

上に行きたいのか。その問いは無意味だと暗に伝えるように。


「そうみたいだね。」


だが、彼女はそれをただ肯定した。

回答とは認めなかった。


一拍。


「真ん中は壊れてる。他の二つも。左はまだ何とかなるかもしれないね。」


彼女も、青年が試した結果を反芻するように整理して伝えるだけだった。

彼の様子を全て見ていた。その上で、君はどうするのかと。


「それでも、上に行きたい?」


彼女の目が、まっすぐに青年の目を見つめ、改めて問う。

軽やかな声に反して、青年は妙な重圧を感じた。

目を逸らそうとしても、逸らすことを許さない圧があった。


青年がここにとどまる理由は何もない。

先に進めるのならば、進んだ方が良い。実際、彼はわからないなりに歩みを進め、エレベーター前まで来たのだ。

それに、引き返したとしても、その先に道はない。

ならば、回答は「先に進みたい。上に行きたい。」という他にない。

それでも彼は、なぜか即答することができなかった。



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