最下層①:エレベーター
機械から出た青年の足取りは、2歩目からも変わらず頼りないものだった。
長らく眠っていたであろう足は辿々しく、地面を踏み締める様はあまり力強いとは形容しがたいものであった。
青年も自覚があったのだろう。まずは、よろけながら壁に向かって歩き始めた。
壁にたどり着くと手をつき、重たい体を支える。
彼の目に映るのは、何を目的としているのかわからない機械ばかりで、似たような見た目の筐体は、表面に錆が浮いていた。
壁の高いところには無数のパイプが天井に向けて巡らされ、この謎の施設には他の階があることが察せられる。
下に向かうパイプはない。
自分が眠っていた機械を離れ、目の前に長く続く廊下を歩いていく。
幸いにして一本道になっているため、迷うことはなかった。
壁を支えにしたことで、足取りは幾分かマシになったが、つまづくもののない道を、青年は度々つまづきながら歩みを進めた。
手のひらからは、錆のざらざらとした感触と、金属のひんやりとした冷たい温度が伝わってくる。
変わり映えのしない、似たような景色の中を歩き始めて十数分。
おぼつかなかった足取りは、歩くことを思い出したようで、健康な青年のそれと表現しても遜色ないまでに回復していた。
足裏から固い地面の感触が伝わってくる程度に、感覚も戻ってきている。
いい加減に、そろそろ何かが見えてきてもよい頃合いだと思われた頃。
行き止まりの壁に、三基のエレベーターが現れた。
各扉のそばの薄汚れた壁には、三角形のボタンが一つずつ用意されていた。
三角形の向きを見るに、やはりこのフロアは最下層で、上ることしかできないようだ。
真ん中のエレベーターは、扉が歪んでいた。
隙間から向こう側を覗くと、向こう側は潰れた箱が見えた。
どうやら、真ん中のエレベーターは壊れて使えなくなっているらしい。
加えて、その潰れ具合からすると、かなり上から落ちてきたのだろう。
幸いにして中身は空のようだ。もしも誰かが乗っていたのなら、命はなかっただろう。
青年は試しに、右のエレベーターの呼出しボタンを押してみた。
凹みはするものの、明かりは灯らず、何も反応はない。恐らく、どこかで断線でもしているのだろう。
ここが何の施設なのかは相変わらず不明だが、ここまでのわずかな道のりでも、施設自体が古いことだけは嫌でも理解させられたが、改めて事実を突きつけられてしまった。
諦めて左のエレベーターのボタンに手を伸ばす。
しかし、反応はなかった。
引き返すという選択肢が過る。
だが、戻ったところで、ここまで歩いてきた平坦な道をもう一度歩くだけだ。
ダメもとで、もう一度だけ左のエレベーターのボタンを押す。
気のせいかもしれないが、一瞬だけ光ったような気がした。




