2層目⑨:まだ先は長いから。
「……まずは、中に入ろう。早く涼みたい。」
「それもそうだね。」
扉が閉まり、人工の日差しと植物たちが向こう側に閉じ込められた。
きっとこれからも変わらず、その根や枝葉を伸ばし続けるのだろう。
一方、こちら側のヒカルは、階段に腰掛けていた。
少し寒いくらいの温度が、熱された体に心地良い。
肌に張り付く服が、不快感と共に失った水分の重みを感じさせる。
「とりあえずは、お疲れ様。倒れるんじゃないかって冷や冷やしたよ。」
「もう森林浴は当分ごめんだ。あんたは余裕そうだな。」
「私は特別だから。ヒカルこそ、無理しすぎてない?」
「水が飲みたい。その次は、着替えて、風呂で汗も流したいかな。」
「どこかにあるかもね。まだ先は長いから。」
めぐるはそこで言葉を切ると、踊り場から伸びる先をそれぞれに見つめて――
「上にも、……それに、下にも。」
――それぞれに行く先を示した。
「念のため確認なんだが、最初に居た機械だらけの階。アレは、この真下?」
「多分。エレベーター、そんなに長くは上に上がらなかったし。確かめに行く?」
「そんな余裕はないな。上るとしよう。」
ヒカルは立ち上がると、階段を上り始めた。
数段上ったところでふらつき、反射的に手すりにつかまる。
垂れる蔓は、ヒカルを支えきれずに千切れた。
だが、無機質な手すりはヒカルを支えた。
ヒカルの足取りは重い。それでも一段、また一段と階段を上った。




