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2層目⑦:皮肉なもんだ
喉の渇きから意識をそらすように、ヒカルはめぐるに声をかけた。
「それにしても、ここは一体、何なんだ。最初は埃っぽい、薄暗い、やけに機械だらけ。次は暑くて、歩きづらくて、植物しかない。」
吐く息とともに、短く区切りながら、これまでのことを振り返る。
「ただの温室だったんじゃないかな。森林浴とか、散歩のための。」
「森林浴?浴びるどころか、倒れて森の一部になりそうだ。」
「誰も居ないのは、もしかしたらそういうことかもよ。」
「人間も自然の一部ってか。」
その後もいくらかのやり取りを続けながら、二人は歩みを進める。
「ヒカル、大丈夫?」
「……何がだ。」
ヒカルは余裕なさげに応える。
「喉、渇いてきてるでしょ?」
「そうだな。」
「……水。」
「必要ない。」
「でも、せめて休憩くらいは……。」
ヒカルは頑なに歩みを止めようとしなかった。
「人がいなくなっただけで、こうなるんだね。」
「俺はもう十分だ。これ以上は必要ない。」
「そうだね。もっと人にやさしかったかも。」
「少なくとも、こんなハードじゃなかっただろうよ。」
めぐるからの返事はない。
ヒカルは続けて、吐き捨てるように言う。
「作り物の自然で、作った側が苦しむとはね。皮肉なもんだ。」




