タイムパトロール・アーム(15)
「死ねええええええ!」
レイコが手製のゴールにダンクを決めようとしてポストに嫌われていた。もう吸収することにしたらしい。勝手にしてくれ。俺は薬だ。こんな場所にいるとビオフェルミンを飲むのが一大イベントに感じられる。快便にしてやんよ!なんて下品な冗談はここだから言える。キリイがいたら絶対に言わない。もっともキリイのいる交番はそういうのに寛容だという話も聞くが実際のところ行ったことがないので定かではない。
久しく書いていなかったラブレターとか文面を考える。なにせ電話がつながらないのがデフォルトだから一度送り始めたらたくさん送る。不思議と届いている様子がなく会っても何も言ってもらえないから届いていないのだろうか。キリイはこっちにいるときとあっちにいるときでキャラが違うとかそんなことがない限りないと思うが。
得意の「月がキレイですね」の文言というか定型句が時間流の中では意味をなさず、たまには月が見たいなあというのは全職員の願いだ。さて、「月がキレイですね」の代わりになる言葉を考えよう。この世には言葉が少なすぎる、ぐう。
レイコに相談したら「とりあえず考えたのを私に言ってみなさい」と言われて、なんでお前に言わにゃならんと普通にケンカになりかけた。さっそく躓いているが、俺が思うに今まで置きに行きすぎて3バント失敗みたいなことになっていたのだからもうちょっと攻めないと。デッドボールで出塁みたいなことになるとこういう場所だから氷河期に落っこちて戻ってこれないかもしれない。そんなのはもうやめた。
あーあ、とサランラップの芯をくわえる。こんな場所だからタバコなんて手に入らずもうくわえて吸えればなんでもいいと思ってこういう手ごろなものをストックしている。不思議と気分だけ楽だから癖になった。恋文の次の文言は、なにせ何の参考もなく頼りになる人は百歩譲ったって恐竜時代に消えていった同僚くらいしか思い当たる人がいない。そいつは、何か言っていただろうかと思い出してみた。
「タイミングなんだよ」
ファミレスでもらう水と砂漠でもらう水は意味が違う。どちらの方が嬉しいかは明白で、普通の言葉から今喜ばれるものを選ぶのが、一番なのだそうだ。タイミングかあ。キリイのことを考えて文面に起こした。
急に冷たくなって そっぽむかれたり なんで……
なぜかわからないけどいけない気がした。版権とかその手の物が。
ここで一句
「賞レース 自分が出なけりゃ ただのネタ」




