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9話 オーク戦

9話

馬車がガタゴトと揺れる、それに合わせて荷台に座っている人も揺れていた

「ねぇ、サッカイ、師匠さんはなんでフードかぶってるの?」

 隣に座っていたラルトが堺の片耳に向けて、手を使ってこっそりと話す

「え、じ、自分もよくわからない、」

 (そう言えば、なんで正体を隠してるんだろう、、)

 堺はなんでだろうと少し考えたのちに、まぁ良いかと思い、ぼーっと外を眺める

 ラルトは「そっかぁ」とニコニコ笑っていた

 しばらく沈黙が続いた時、馬がヒィィィン!!という叫び声と共にダダダダと止まる

 堺は何事かと思いハァハァと呼吸が荒くなっている

 シュベルツは寝ているのかと思うほどに冷静で動かなかった

 休んでいたであろう2人はビックっと体が震えて周りをキョロキョロと見渡す

 奥に座っていた彼女は「いったじゃない!何事よ!!」と荷台の奥にいるギョウシャに向けて、壁を蹴って怒りをぶつけている

 ラルトは衝撃と共に荷台から飛び出していた

 堺はラルトが心配で荷台から、ヌッと飛び降りる

 シュベルツは今だに微動だにしない

 彼女は「文句言ってやるんだから!」と顔を赤くしながら荷台からピョンっと飛び出す

 そのままギョウシャがいるところに向かうと、

 「ひぃひぃい、」と怯えているギョウジャが馬車の綱を手放して、頭を手でおおいながら怖がっていた

 ラルトはギョウジャが怖がっているモノの先に剣を構えてじっと真顔で見つめている

 堺は何がいるのかと思い、ズズズと、ゆっくりラルトの先にるモノを確かめる

 そこには緑色の体で体調は2メートルを超えている人型の魔物がいた

 熊のような大きな動物の皮を腰に巻いている

 筋肉がボディービルダーのようになっており、ヒグマだろうと素手だけで倒せるような体格だ

 幸いに武器は持っておらず、パイナップルくらいありそうな拳をグッと握ったままこちらを見ている

「馬、オイテケ、イノチダケハ、タスケテヤル」

 相手はカタコトに話しかけてきた、声はこもっているが、声量がしっかりしている

 堺はビビって動けなかった、ガタガタと震える足がいうことを聞かない

 ラルトは「それは無理だ!!お互いのためにここは一旦引いてくれ!」

 強気に応えるラルトに堺は感動していた、自分とはかけ離れた存在だと無意識に思い込む

 すると荷台からぴょんと身軽に降りてきた彼女が「何よ、オークごときでいい身分なことね、いいわ、相手してあげる」

 そう言ってラルトの前方にコトコトと自信満々な足取りで向かう

「加勢にきてくれたの!ありがとう!」

 ラルトはオークからの目線を彼女に向けて、ほわーっと笑顔になる

「ばっかじゃないの?別にあんなやつ1人で十分なんだけど?邪魔だからどいててくれる?」

 しっしと手だけを振ってラルトを払いのけ、オークをギロリとにらみつけた

「馬、ワタサナイ、ナラ、コロス」

 オークはドシ、ドシと歩きながら近づいてくる

 彼女はオークが歩き出したと同時に「攻撃力上昇、素早さ上昇、回避率上昇」と唱えていた

 攻撃力上昇と唱えた後は体の周りが赤色にシュインとひかる

 素早さ上昇は緑色にひかり、回避率上昇も緑色にシュインとひかった

 (お、お!!これはバフか!俺も使ってみたい!!)

 堺のいうことを聞かなかった足は、興奮のおかげで正常に戻っていた

 女性は唱え終わるとすぐに左右にヒュンヒュンとジャンプをしながらオークとの距離をつめる

 「なんて足捌きだ!!」と堺は叫び、彼女を目で追う

 彼女は相手の腹を殴ろうと右腕でパンチを打ち込もうとするが、後ろに飛び上がる、フェイントだ

 2回ほどフェイントを入れた後に、相手から背後をとったため、距離をつめる際に斜め上にジャンプをした

 そのまま2メートルの高さにある後頭部に蹴りを入れようとしたが、オークはヒュイと首を右に傾けて蹴りをかわす

 彼女の膝蹴りをしていない左足を、オークは左手で掴み、グワンと頭の上に振り上げる

 まるでヨーイドン!の時に使用するピストルを上に向けて撃つかのように、

 彼女は「え、、、?」と困惑してた後に状況分析をするまもなく、ハエ叩きを振り下ろすように地面に叩きつけられた

 叩きつけられた時にギャシャン!!!という衝撃音がしたが、それは彼女が腕で顔を守った結果、腕につけている金属の装備が砕け散った音だった

 女性は「ぁぁはっっあぁ」と呼吸でできなくなっている

 オークは掴んでいる手を離さずに、ズズズと彼女を引っ張って、上にゆっくりと持ち上げる

 彼女に息があったため、また叩きつけようとしているのだ

 彼女は口から血を吐きながら「すけて、た、助けて、、」と息を吐き切った後の声で助けを求める

 (やばい、やばい、やばいぃ!死んじゃう、死んじゃう、死んじゃうよ!!)

 堺はブルブルと足を震わせて、助けに向かおうとしていた

 オークの腕が真上に行き、彼女の体がオークの背にくっつく、手がぶらんとなり地面につきそうだ

 途端にビュン!と彼女の体は円を描くように回る、その瞬間に最後の力を振り絞るように「たすけて!!!!」とスカスカになった声で叫んだ

 堺は彼女が死ぬところを見たくないため、目を瞑って首だけを横に向ける

 何も音がしなかったため、目をジワジワと開けて、正面を向く

 そこに写っているのは右腕のないオークと、気を失った彼女に寄り添いながら、座った状態で剣を構えているラルトがいた

「ごめん!我慢できなくて助けてちゃった!ってあれ??大丈夫!?」剣で相手をしっかり捉えながら彼女を心配する

「オマエ、ナニヲ、シタ」

 ズシっと後ろに後退りする

「今なら許してあげるけど、どうする?」

 ムッと怒るラルト、テンションが子供を怒る母親のようだ

「ワ、ワカッタ、オレガ、ワルカッタ、イケ、ナニモシナイ」

 ズシ、ズシとなくなった腕を押さえながら道のすみに移動する

 ラルトは右手に持っている剣を片手でクルリと腰に装備しているサヤに収めて、彼女をお姫様だっこして荷台に向かう

 堺はラルトの強さに動揺して、ラルトが横を通り過ぎる時に何も言えなかった

「たすかったぜ、それにしても、あ、アンタすげぇな、オークをいとも簡単に、、」ギョウジャは垂れた汗を拭う

 ラルトはスッと頭を倒して荷台に向かった

 気を失った彼女を抱えたまま、ヒョイとジャンプをして荷台に乗り込む

 堺は後に続いてヌッと荷台に乗りこんだ

 ラルトは荷台の奥に彼女を仰向けで寝かせる

 荷台の左右に座っていた2人は「オークを倒したんだろ?すごいな!お前!」と男性が「た、助かりました」と女性が関心を寄せていた

 ラルトは「あまり大きな音は出してあげないでください」と小声で注意をする

 その気遣いに感動した2人はラルトに惚れ惚れしていた

 (ラルト、お前はこの世界の主人公か?俺とは住む世界が違うな、、)

 親近感のある対応に同じ土俵だと感じていた堺だが、一連の流れを通してラルトは自分とは違う完璧な人だと捉えてしまう

「サッカイ、顔色悪いよ?大丈夫??」

 心配そうにのぞいてくるラルトに堺は「だ、大丈夫だよ、」と無理やり作った笑顔で応える

 一方でシュベルツは普通に寝ていた

 荷台の奥から低い声が聞こえた後に、馬車が再び動き出す

 ラルトは疲れたのかウトウトとしており、奥の2人はあれやこれやと小声で何かを話していた

 彼女はいまだに気を失っており、シュベルツは寝ていた

 堺は道の横にいるオークを見続けていた

 何故か恐怖心はなく、だんだんと小さくなっていくオークに切なさを感じる

 オークがだんだんと見えなくなり、道に沿うように生えている木々を堺は眺めていると、だんだんと眠気が襲ってきた

 その場で横になり、腕枕でガタンガタンと揺れる振動の中眠りにつく

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