8話 メルディア学園へ
8話
「はぁ!!はっはぁ!!」
ベットがギッシィ!とはずむほど勢いよく飛び起きる
「堺さん!?大丈夫ですか!」
顔をグッと覗き込むシュベルツ、目を合わせたままお互いが黙り込む
「え!あ、あ!大丈夫です!ですよ!!」
シュベルツは目を細めて不思議そうにこちらを見ている
「まさか堺さん、死に戻りをされたのではないですか??」
堺は「そうです!」と言いたかったが、勝手に行動したことがバレたくなかったため、嘘をついた
「え!し、してないですよ!ちょっ、と悪夢にうなされて、、」
両手の人差し指を合わせてスリスリと擦る、堺は嘘をつくのが嫌いだった
「そうでしたか、でしたら今夜はぐっすり眠れるスープでもお作りしますね」
笑顔で対応してくれるシュベルツに「ありがとうございます、」と堺は申し訳なさそうに感謝の気持ちを伝える
「それでは、今後について話しましょうか」
シュベルツは以前と同じように選択肢を出してきた、堺は以前と同じように「学校に行きたいです、」と答える
「手続きを済ませてきますね」とフードを深く被り、扉をキィ~と開いて、カチャンと優しく閉める
堺は夕暮れの町のどこかに向かうシュベルツを窓から眺めていた、シュベルツが建物の奥に消えたことを確認したと同時にベットに飛び込む
ギッシィン!とトランポリンのように弾力のあるベットがどこか懐かしかった
うつ伏せのまま布団に顔をうずくめる、爽健美茶のような匂いがした
休んだはずの体が、グッと疲れている、気持ちの整理ができていないのだ
(正直に言えば良かったのかなぁ、、ごめんなさい、シュベルツさん、、)
「あ~~」と頭の中を空っぽにして何も考えないようにする
(そう言えば、ラルトだっけ?、生きてるのかなぁ、)
布団にうずくまっている頭だけをヒョイと起き上がらせて、周りをチラチラと見る
体をくるりと寝たまま回転させて、仰向けの状態から体をコロンと起こしてベットにあぐらをかいて座る
そのままドアの方向に体を向けた
両手をついては離してを繰り返してずっずとベットの外に出る
下にある黒いスニーカーを座ったまま、前屈のように体を傾けて履く
ベットの端に置いてあるフードを身につけて、ドアをキィ~と開ける
廊下をカト、カトと言わせながら奥にある階段を目指す
キィ、キィと鳴る階段の音が以前よりも大きく聞こえた
最後の階段を降り切らずに、顔だけを出して部屋の中を確認する
以前と変わらずに、階段から右側には受付とボード、左側には机が並んでいる、正面が出入り口だ
(ラルト、ラルト、ラルト、、、)
「いた!!」
以前と変わらない見た目で、楽しそうに冒険者であろう女性と話している
「うんうん、よかった、よかった、、」
涙がウルっとこぼれそうになる
「ねぇ、邪魔なんだけど、」
階段上から聞こえた女性の声
振り返らずに「ご、ごめんなさい!」と階段を降りきる
コツ、コツと音をたてながらショートヘアーの女性が降りてきた
その女性は見るからに若い、装備に関しては上半身と下半身が革製だ
両手両足には皮の装備の上に銀色の金属の装備を身につけている
「なにジロジロ見てんの?気持ち悪いんだけど、」
彼女はギロリと堺ををにらみつけた
「は、す、すいませんでした!」
フンっと鼻息をついてから彼女はその場から立ち去っていった
(こ、こえぇ、、でも可愛かったなぁ、)
ラルトの生存確認が終わったため、階段を上がって部屋に戻る
窓から見上げる空がだんだんとあい色に染まっていく
靴をポイポイっと投げてベットにダイブする
感情の浮き沈みに疲れた堺は、いつのまにかうつ伏せの状態でぐっすりと眠っていた
、、、
「起きてください堺さん、起きてください」
ゆらゆらと体が左右に揺れる
「う、う~ん、シュベルツさぁん??、まだ寝ておきたいぃです、、」
グーといびきをかく堺に悩まされるシュベルツ、頭を右に傾けてどう起こそうかと考える
はっと閃いたシュベルツは両腕を胸の前に持ってきて、両手に力を込める
手と手の中央に光の玉のような現れて、ギラギラと輝きが強くなる
ウィィィィィンとモーターが勢いよく回る音が部屋中に響き渡った
「ま、まぶしっ!!え、あ!!な、何してんですか!!シュベルツさん!!」
堺は勢いよくシュベルツから離れる、壁にベッタリと引っ付き、びびって体が震える
「おはようございます、堺さん、ちょっと待ってくださいね」
シュベルツは引っ掻くような手の形をだんだんとほぐしていく、パーの形になる頃には光の球の輝きは弱まり、じわじわと消失していった
「びっくりさせてしまって申し訳ありません、メルディア学園行きの馬車の時間が迫ってましたので、起こさせてもらいました」
シュベルツはすっと体を倒して謝る
「え!あ、いや!自分もすいません!あ、朝が昔からよわくて、」
堺は手をビュンビュンと振って、貴方は悪くないですよと無意識にジェスチャーをする
「フフっ、それと、こちらが切符と着替えです、この建物の右側に湯気が出ている建物があるのですが、こちらの宿で寝泊まりをしている人が利用できる浴場がありますので、よければどうぞ」
堺は浴場があることに興奮して「ありがとうございます!!」と切符と服を受け取って階段を駆け降りる
正面出口までスタスタと歩き、外に出た
ギラギラと光太陽がなんとも心地が良い
宿の外の右手に湯気が出ている全体的に深みのある茶色をした建物があった
湯気は建物の正面から左右にある煙突から出ている
さっそく中に入る、左手に受付があり、床はチョコレートのような茶色だ、何か塗っているのかピカっと光っている
奥には扉が2つあり、男、女と書かれた看板が扉の上に固定されている
さっそく男と看板に書いてある扉に向かって小走りで行くと
「あんた!何勝手に入ろうとしてんかね!!」
受付に座っていたしゃがれた女性の声が聞こえる
その人は60代後半で白い髪の毛がパーマのようになっている
「え、あ!すいません!自分、宿を利用している物で、、」
アセアセと慌て、先ほどのワクワクが不安に変わる
「そうかいね、ちょっときんさいや、」
叱られるのかとビクビクしながら受付にトボトボと向かう
「切符は?見せてみんさいや」
堺は恐る恐るポケットに入っているグチャッとなった切符を見せる
「うん、今日の昼までだね、んじゃ、ゆっくりしていきんさいね」
そう言って風呂に通してくれた
後ろをチラッと振り返り、風呂の扉を開ける
扉の奥にまた扉があり、その横に“後ろの扉をしっかり閉める!!”と力強く書かれた看板が設置されていた
後ろをヨシと確認して奥にある扉を開ける、扉の奥は脱衣所になっており、左側に棚がある、その奥にはまた扉があった
たなは2段あり、カゴが2つずつ置かれている
上の段に誰かの衣服が置いてあるのを確認したので、堺は下の段に着替えを置き、身につけている衣服を脱いだ
タオルを腰に巻いて、奥の扉を開ける
ふぁぁぁと湯気が顔を通り抜けた、浴場の中はゆで卵の良い匂いがほんのりと香る
扉の右側には、3箇所ほど絶え間なく流れ続けるシャワーのようなものが同じ感覚で配置されている
扉の左側には長方形の石を削って作られた風呂があり、湯気がムンムンと出ている
タオルを濡れないところに避難をさせて、体を流そうとシャワーの前に立つ
「うぁぁあああぁ!!」
色々な出来事で心身共に疲れ切っていた体がジュワァァ!とスポンジに水を含むように活気が溢れてきた
「はぁ!はぁあ!さいっっっこうだ!!」
シャワーにうたれながら、堺は生きていることに感謝をする
目を瞑り、無意識に両手を合わせていた
(色々あったけど、この世界にきて良かったのかもしれないな、、)
ペタッ、ペタッ、ペタッ
「きっもちい!よね!!僕もお風呂大好きなんだ!!」
ダビデ像のように立っている男がいた
「はぁえ!!!」
堺は今までの言動、行動を思い出して恥ずかしくなり、股間より先に顔を隠してしまう
「ハハッ!君、面白いね!!僕はラルト、ラルトマケットよろしくね!」
恥ずかしくて目を合わせれなかったが、聞き覚えのある名前で目線を顔に合わせる
そこにはラルトが全裸で立っていた
「ら、ラルト!」
急な再開に思わず名前を呼んでしまう
「ん?もしかして会ったことある??」
うーんと顔を覗いてくる
「い、いや!初対面!だよ!なんか、うん、勘違いだったみたい!」
堺はブンブンと首を横に振った
「そっか!なら良かった!とりあえず風呂でも浸かって話さない?」
誘われるがままに、チャポンと湯船に体をつける、シャワー以上に活気と心地よさをもたらしてくれた
そこからは色々と以前のように話した
ラルトは「どこからきたの??冒険者?名前は??」と質問をしてくる
堺は勢いに押されて「えっと田舎すぎて、どこからか、、、あ、それと、ぼ、冒険者です、、名前は、サッカイです、」とトボトボと話す
ラルトは「そっかぁ!、わからないことがあったらなんでも聞いてね!」と言ってくれる
しかし、わからないことしかなかった為「うん、ありがとう、、」と言いながら少しうなずき、何も聞かなかった
「これからどうするの?」とラルトが聞いてく
堺は「め、メルなんとか学園にいく」と伝えると
「もしかして、メルディア学園?」とラルトが尋ねてくる
堺はうんうんと首を振ると、
「そうなんだ!なら一緒に行こうよ!」
ラルトと一緒に学園に向かいたいと思う堺だったが、
「えっと、ごめん!じ、自分師匠がいるんだけど、その人と馬車で行くんだ」
勝手すぎる行動はまずいと思い、ラルトとは同行できないと遠回しに伝える
「馬車!自分も馬車だよ!同じだったらいいね!」
汚れのない満面の笑みで答えてくる
「そ、そうだね、」
一緒に風呂から上がり、脱衣所で着替え、宿に戻り、階段を上がる
その間、ラルトは偉大な戦士になりたい、世界を救いたい、と堺に話していた
堺はうんうんとラルトの話を真剣に聞いていた
「僕、この部屋だから、またねサッカイ」
ラルトは他の部屋を気にしてか、声のボリュームを落としていた
高速で手を振るラルトに堺は手をちょこんと手をあげて部屋に入る
「おかえりなさい、お風呂は気持ちよかったですか?」
シュベルツは立ちながら本を読んでいる
(どうしてこの人は俺なんかをサポートしてくれるんだろう、、)
堺は何も変わらない自分が情けなくなっていた
「大丈夫ですか?」
心配そうに眉間をハの字にしてこちらを見つめてくる
「だ大丈夫ですよ!!お、お風呂最高でした!」
床を見続けていた堺は気を取り直そうと笑顔を作る
「そうですか、それはよかったです!それと、心配事や相談事はなんでも言ってくださいね」
ホワンと優しく微笑む
堺も自然な笑顔で「ありがとうございます」と感謝の言葉を伝えた
「さぁ、メルディア学園行きの馬車が宿の近くに来ているはずです、いきましょう」
シュベルツはフードを深く被って宿を出る
「ついてきてください」と言い、街中の中心に向かって歩いていく
人がだんだんと多くなり賑わってきた
音楽や人の声が入り混じる、シュベルツとはぐれないように気を張りながらお祭り騒ぎのようになっている場所を通り抜けると、広い空間に出た
奥には馬車が10列並んでおり、馬車が止まっている手前に看板が建てられてあった
全ての文字が大きく、縦に書かれているのでわかりやすい、メルディア学園行きの馬車は中央にある
シュベルツは馬車の前で椅子に座っている太り気味の商人に切符を見せた、「ハイヨォ」と何を言ったかわからないような低い声で答える
荷台には先客が3人おり、左右と奥に座っていた
荷台の中は暗く、目が闇に慣れていない堺は座っている人達の顔が見えなかった
「じゃぁ、しゅっぱつ、しますんでぇ」
ノゾノゾと奥から声が聞こえたと同時にヒィィン!!と馬の叫び声が聞こえる
ガタゴトと馬車は進み出した、すると、馴染みのある声が荷台の布の奥から聞こえる
「ねぇ、これはメルディア学園行きの馬車かな?、違う?わかった、ありがと!えっと、これはメルディア学園行きの、、違うかぁ~」
外から聞き覚えのある声が聞こえる、荷台にはかかっている布をさっとめくると、ラルトが困った顔で馬車を探していた
ラルトは看板の後ろからギョウシャに向けて話しかけている
「ラル!、、」
叫ぼうと思ったが、中の人のことを気にして声が出なかった
だんだんとラルトと馬車は遠のいていく、そんな中、堺は自分と戦っていた
(俺は、こんなことを躊躇するのか、、あの時、ラルトは俺を死に物狂いで助けてくれたのに!!)
「シュ、シュベルツさん、ちょっと失礼します」
覚悟を決めて、走り出した馬車から飛び降りる
何か言われるのが怖かったので、話しかけながら飛び降りた
シュベルツは飛び降りる堺に微笑んでいる
ゴロンゴロンと転がる、すぐに起き上がり、勢いに任せて
「ラルト!」と叫んだ
ラルトはすかさずこちらを向いて、進んでいく馬車と堺の状況を察して勢いよく走り出した
あっという間に堺に近づき
「サッカイ!ありがとう!僕のために、」
砂をパンパンと払ってくれる
「よし!なら、はい!追いつくよ!」
そう言ってラルトは体制を低くして地面に両手のこうを付ける
何かと思ったが、おんぶの体制だと気づき、ラルトの背中に覆い被さる
「しっかり捕まっていてね!」
グッとラルトの体を全身で締め付けると、グオォン!と地面がへこんだ
途端に後ろに吹き飛ばされる感覚
しかし、吹き飛ばされたわけではなかった
ラルトの加速が早すぎて、後ろに置いていかれそうになったのだ
「うぁぁあああ!!」
まるでシートベルトのないジェットコースターにしがみついている感覚だった
一瞬で馬車に近づき、ラルトは勢いよく荷台に飛び乗った
堺はぶつかると思い目を瞑っていたが、何も起こらなかった
堺が目をジワっとあけると、ラルトが上におおい被さってスゥウンと横になっている
何事かと思い、とりあえずシュベルツを見ると、シュベルツの服ががフワァアンと風をまとっているようになびいていた
奥にいた2人は何がなんだかわからずに困惑していた
さらに奥にいる人は「ちっ」と怒りの感情で舌打ちをする
「ば、万事解決だね!!サッカイ!」
ニンマリと笑顔を作るラルト、堺は状況整理が追いつかず、ハハハァととりあえず苦笑いをしていた
「サッカイ、その方は誰ですか?」
シュベルツはフード越しで目が見えないはずなのに目を合わせてくる
「え、えっと、ラルトって方で、友達です」
「君が~師匠さん?なかなかのオーラだね!僕はラルト マケットよろしくね!」
ラルトは右腕をグッと出した
シュベルツは「よろしくお願いしますね、ラルト」と出されている手を両手で握る
「それにしてもさっきのすごかったねサッカイ!体がフワァンってなって、スーンって感じでさ!」
ラルトは手を広げてどれほどすごかったのかを再現する
すると、奥に座っていた人がこちらに向かってきて怒り出した
「さっきからうっさいのよ!全然休めないじゃない!!そういうのはよそでやってよね!」
その人が近づいた事で全体像が見える
(あの時の可愛い子だ!一緒の馬車かぁ、なんか嬉しいなぁ)
堺はほわーんと彼女を嬉しそうに眺める
「なにチラチラ見てんの?気持ち悪いんだけど、やめてくれる?」
彼女はギロリと堺をにらみつけた
堺は「すいません、」と目線を下に向ける
「お騒がせして申し訳ありませ、」
「アンタはさっさとフード脱いでくれる?顔が見えなくて怖いんだけど?」
シュベルツはお辞儀をして黙り込んだ
「ごめんね!うるさかったね、でも、今のところ君が1番迷惑をかけてると思うよ!」
彼女は最初から荷台にいたもう2人の人にじっと嫌な顔で見られていた
「わ、私は悪くないんだから!」
そう言って彼女は荷台の隅に戻りブツブツと何かを言いながら体操座りで丸くなっていた
「学園、楽しみだね!」
ラルトは笑顔だった、堺はその前向きさを分けてほしいなと思う
堺は気分転換のため、荷台からアルテの町を眺めた




