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75話 禁域

リリリリリリン!!


 頭の中に響く鈴の音、私は転送と念じた。


 一面が白の部屋。広い空間の中心には巨大なテーブルが鎮座している。


「あ、岡本さん」


 そう言ったのは岡本の後に転送されてきたロアであった。

 その後、マリナとタイガも転送される。


 いつもの四人、場に安心が溢れた。


 すると、斎藤が部屋の奥に転送された。

 いつも通りの流れ、なのに慣れない。

 岡本たちは席に着き、耳に神経を集中させる。


「今回のミッション―」

 斎藤がそう言いかけた時、また人が転送されてきた。


「すんません!遅れましたマジすんません!」


 頭痛を消すように頭を叩きながら一人の男性が現れた。

 寝癖のようなパーマのような髪型に眠たそうな目。

 三十代前半に見え、身長は平均的だ。

 顔は整っているが、腑抜けた印象がそれを台無しにしている。

 彼は首だけをペコペコと倒して謝っている。

 見ない顔に皆驚いていると、斎藤が口を開いた。


「新メンバーの、」


(ぜん) カケルと申します!以後よろしく」

 斎藤の言葉を遮り、「っす」と言いながら席に座った。


「うん。ミッションを説明するよ」

 その一言にカケル以外の者は真剣な表情になった。


「今回は禁域に出現したダンジョンの探索、それと新メンバーの育成だね。誰かが致命傷を負った場合のみ、早期帰還とするよ」

 斎藤はそう言い終わると、転送石を岡本に渡した。


「っていつのまに消えてる!」

 カケルの声が空間に響いた。


「さっきからうっせーな」

 タイガが舌打ちをした。


「んだ坊主、ちんちくりんな見た目っ!?」


 ドン。

 カケルが膝をついた。

 そのまま自分の顔を一発殴る。


「ちょっとお兄ちゃん!」

「タイガくん!」

 マリナと岡本が止めに入った。

 ロアはアワアワしている。


「す、すっげぇ…マジで動けんかったわ」

 カケルは自由になった体をマジマジと見ている。


「申し訳なかったね全さん…あ、僕は岡本 大輔 これからどうぞよろしく」

 岡本はカケルの体を支えながら自己紹介を済ませる。


「いやいや いいんすよ、僕も調子乗りすぎましたわ」

 

「そんなことはないよ……ってそうだ!とりあえずみんな自己紹介しようか」

 岡本はぎごちなくなった空気を変えるために少しテンションを上げる。


「それならロアさん、自己紹介を…」


「えっ、あ、や… ロア ティーナです……」

 モジモジとしながら体を倒す。微かによろしくお願いしますと聞こえた。


「私は白石マリナです。先ほどはうちの兄が失礼しました」

 丁寧に謝るマリナ。それとは対照に

「タイガ」

 唾を吐き捨てるような自己紹介をしてタイガはそっぽを向いた。


「あ~おけおけ。岡本さんにロアちゃん、マリナちゃん、んでタイガな。よろしく頼むぜっっ」


 ドン!

 

 またもや膝をつくカケル。


「呼び捨てすんな」

 タイガの目は緑色に光っていた。


「お兄ちゃん!」

「た、タイガくん」

 またもや二人が止めに入る。


 ――――


「ゴホン、それならさっそく禁域に向かおうか」

 岡本が転送石を掌に乗せる。

 マリナ、タイガ、ロアは転送石に指だけ触れていた。

 カケルはなるほどとうなずき、それを真似る。


 岡本が全員の顔を一瞬見て魔力を込めた。

 ピカッ!とまぶしい光が五人を包む。


 ――――

 

「……おぉーこれがダンジョン!すげーな!!ピザの何ちゃらみたいだ」

 カケルはダンジョンのてっぺんを見上げている。


「それを言うならピサの斜塔です……」

 マリナが囁くように呟く。


「いつ見てもすごい…」

 ロアは口元に手を置き、チラチラと見渡す。


 転送した先は森の中。

 聳えるダンジョンの周りは、不思議と木々が生えていない。

 外壁は薄茶色で、コンクリートのような無機質。

 均等な間隔でくり抜かれた窓があるのだが、その先は完全な暗黒で覗き見ることはできない。

 正面には巨大な両扉があり開放されている。しかし、その先も闇であった。


「よし…みんな付いてきて」

 岡本は固唾を飲み、先頭を歩く。


 ダンジョン入り口前には横に広い階段がある。

 登りきったところに見える闇。

 入った者を二度と返さない、そんな圧がある。

 岡本は後ろを軽く振り向き、コクンとうなずいて暗闇に足を踏み入れた。


 ブワンと肉体が震える。

 すると、ダンジョン内部に入った。

 背後はすでにレンガ状の壁に変わり、出口は消えている。


 岡本に続き一人また一人とダンジョンに入る。


「っておい!壁だぜ!?逃げられねぇよこれ!」

 カケルは不安そうに後ろの壁をペチペチと叩いた。

 

 タイガはカケルの慌てる様子を見てフッと鼻で笑った。


 岡本はすぐさまカケルの肩に手を置き、落ち着かせるように優しい声色で一言。

「大丈夫、」と言った。


 カケルが不思議そうに岡本を見る。


「禁域のダンジョンはね、出口が入ったところとは別にあるんだ」


「なるほど」

 カケルは壁をペチペチしながら落ち着きを取り戻した。


「とりあえず出口を探して、その後にボス攻略だね」

 岡本の言葉にマリナとタイガがうなずく。


「よし、それならさっそく進もうか…ってもう魔物がいるみたいだね」

 薄暗く真っ直ぐ続く通路の先、巨大な棍棒を構えたオークがこちらを警戒している。


「よし、僕が担当するよ。マリナちゃん、タイガくんサポートおねがっ」


「よっしゃ!んなら俺が行きますわ、俺の能力知りたいっしょ?」

 実力を示したいのか、ドヤ顔で前に出るカケル。


 一同に困惑が起きたが、

「う、うぅん、わかった。無理はしないようにね」

 岡本がそう言うと、


「あーサポートとかも必要ないんで、まぁ見ててくださいよ」

 相変わらずヘラヘラしており余裕綽々だ。


 タイガの目がすぐさま通常に戻り、どこかイライラしている。

 マリナもパタンと本を閉じて、カケルに任せることにした。

 ロアは怖くて杖を握り締めている。


「うっしゃ!ほんならいきますか!」

 カケルはそういうと、どこかからサイコロを取り出した。

 そのサイコロは魔力を帯びるとレインボーに光り出し、一から六の目に小さく文字が現れた。

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