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70話 酷暑

「ふんふ ふーん」

 斎藤の鼻歌、ご機嫌にテクテクと歩む。


 堺は横に並びたかったが、後ろについていく。

 (あれ…… あ!!)


 遠くに見える黒色の制服を着た人たちに気づく、間違いない、メルディア学園の人たちだ。

 ゾロゾロと大群で歩いている。

 その先頭には、七色の宝石が埋め込まれた王笏を持つアンドレス王の姿。


 堺はバレないかドキドキしていたが、斎藤は平然と歩いている。


 メルディア学園の闘気が火の都に広がる、自然と道が開かれ、ズンズンと進んでく。

 堺と斎藤は大通りの端を通り、大群と反対方向の駅を目指す。

 こちらを見てこないか、話しかけてこないか心配な堺。

 すると、


「ねえねえ!すっごいよこれ!もっとガチガチしたのが走ってるよ!!」

 聞き覚えのある声、ふと見渡すと、大通りの中央付近にラルトがいた。

 装甲が施された蒸気車両を見て興奮している。


「煙たいわね」

 リュロが制服の襟を引っ張り、鼻と口を覆う。


「観光に来たわけじゃねぇぞ〜」

 ギルはそう言いながらも、どこか楽しげだ。


「大転送魔法もすごかったけど、この街も凄いね!!タっ……ギル!リュロ!」

 ラルトがはしゃぐ、不意に笑顔が固まってしまい、二人の名前を空元気に呼ぶ。


「……ははっ、大丈夫大丈夫、アイツ起こしてまたみんなで来ような」

 ギルがラルトの頭をポンポンとさすった。

 リュロもここぞというかのようにラルトの背中をそっと触る。

 ラルトは目元をサッとぬぐい「うん!」と言って笑った。


 

「…サッカイくん?」


 呼ばれた声の先を見ると、斎藤が首を傾げていた。


「えぁっ あ、す、すいません!車かっこいいな〜、ってあはは〜」

 ラルトの顔を見て、懐かしさを感じた。

 また一緒に話したいなと思いながら、名残惜しそうにその場を離れる。


 その後、駅に着いた。人々の活気あふれる広大な平地に駅が円形に並んでいる。

 斎藤はクエスト用紙をいちべつ、十一番ホームから汽車に乗り込んだ。

 

 ――――


 ガタンゴトンと揺れ、しだいに熱を帯びる車内。

 堺は窓越しに外を眺めていた。


 (ラルト、悲しそうだったな… てか、暑いな)

 はぁ〜とため息をついてしまい、どこか浮かれない顔をする堺。


「サッカイくん、クエスト嫌だったかな?」

 向かいに座る斎藤の眉が少し下がる。


「えっ、いやっ!全然そんなことないですよ!めっちゃ嬉しいです!、ほんとに、感謝し、しきれないです!」

 両手を振りそんなことはないとアピールする。


 (そうだ!今は斎藤さんとのクエストを楽しもう!てか楽しませよう!)

 斎藤の機嫌を良くするために気合を入れる。


「そ、それにしても、あっ、あついっすね…」


「そうだね、耐熱魔法はかけているかい?」


「あ、ちょっとかけて ます」


「うん、習得が早くて感心するよ」

 マスクの中の瞳が笑っている。

 堺の心臓が脈打つ、汽車の揺れを打ち消すほどに。


 (よし、よし!いいぞ俺!で、でもこれ以上話すこと……と、とりあえずこれでよし!)

 堺があれやこれや考えているのを、斎藤は不思議そうに、楽しそうに眺めていた。


 しばらく進むと、景色がかなり変わってきた。

 黒茶色の大地に火山の山脈。


 (あぁづいぃぃ 耐熱魔法強めるか、てかこんなのまともにクエスト受けられないぞ…)


 堺は熱に耐え続け、思考の余地すらなかった。


 蒸し苦しい時間を堪え続けると――


 シュポォォォォ!!

 

 限界まで熱が溜まった汽車が、一呼吸つくように煙を吐き出す。


 ガタン!と停車し、ガチャン!と扉が開く。

 歯車の鈍い音と共に、巨大な砂時計が中央車両から出てきた。


 斎藤が立ち上がり、堺も後に続く。

 ちなみに運賃は斎藤が払ってくれた。

 

「十二番駅はこっち側だから、この範囲に生息してるみたいだね」

 斎藤は鋼鉄の駅をカツンカツンと歩く。

 

 駅から一歩出ると大自然の光景。

 黒色のボコボコとした大地、ゴロッした岩。

 なだらかな山が多く、果てしない。

 

 耐熱魔法をかけているのに、猛暑のように汗をかく。

 地熱で靴の中がサウナ状態だ。


 (ぁああ!!汗ベットベトやん!もう帰りだいぃ)

 堺は心の中で弱音を吐き散らす。


 クルン

 斎藤が滑らかに振り向く。


「サッカイくん、ファイアベアが現れるまで魔法の訓練をしないかい?」

 何かを思い出したかのように話す斎藤。

 堺は好奇心と緊張が入り混じりながら「わ、わかりました」と頷く。


「うん、それなら防御力を高める訓練をしよう」

「ぼ、防御力…」

 どうせならカッコいい攻撃魔法を学びたいと思ってしまう。

「そんな顔しないよ、防御力といっても防御魔法を教えるわけではないよ、そんなことしても心大陸では即死するだろうからね」

 堺の喉が鳴る。

「防御というよりは回避だね、サッカイくん、得意魔法を教えてくれるかい?」


「とくい…」

 (得意か…重力…それと、 )


「かみなり…」

 堺は無意識に、かぼそく呟いた。


「雷、いいね それなら今できる範囲で雷魔法を使ってくれるかな?」


「え……あ 、、はい…」

 (間違えて声が漏れてしまったぁ!本当は重力系ですとか言いたいけどめんどくさいやつだと思われてしまうぅ!!)


 歯がゆい気持ちを抑えつつ、雷魔法をイメージする。


 (足がバチバチってなって、体が軽くなっていく…)


 ビリッ、ビリビリ!


 両足に纏う稲妻の閃光。

 (おぉい! かっけぇなこれ!)


 改めて見てみると、漫画のキャラみたいで心が躍る。


「うん、上手に魔力の変換ができてるよ、イメージがうまいね」

 堺に近づき、まじまじと体を見る斎藤。

 堺は変なことを考えないように、姿勢を正して遠くの火山を見た。


 (なんか褒められた!!うれしいぃー!あとめっちゃ近いぃ〜!!へいじょうしんん!)

 褒められた喜びを噛み締め、全ての感情を押し付けるように冷静さを保とうとする。


「サッカイくん?おーい」

 ふと斎藤の声が聞こえ、

「す、すいません!」と頭を下げる。


「あっ」

 斎藤は屈んでおり、思った以上に距離感が近かった。

 互いのマスクのクチバシが当たる。


「ごめんね、感心してつい近づきすぎたよ」

 一歩下がる斎藤の微笑む目元。堺は数秒固まってしまう。


「………あ!いや!すいません!!火山、みて見てて、す、すいません!」

 ぺこぺこと謝る堺に「大丈夫だよ」となだめる斎藤。

 

 堺は視線が定まらず、恥ずかしさと恋心が同居して汗が止まらなくなっている。


「基礎的なことは問題ないね。それなら、実践を積もうか。そうだね、僕と手合わせをしよう」

 優しい声色、柔らかで暖かい瞳に圧を感じる。


 いきなりのお誘い、嬉しさを感じたのは束の間、内容に背筋が凍った。


「あっ…… く、クエストは……」

 あの斎藤と戦うなんて無謀だと、生存本能が訴えかけている。

 昔の斎藤のサイコパスモードを思い出してしまう。


「クエストは大丈夫、お金なら僕があげるよ」

 斎藤はニコッと笑い、拳を握り構える。


「あっ… いやっ、ちょっと…」


 後に引けなくなった堺。恋心が吹き飛び、腹痛が押し寄せる。

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