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66話 安堵

66話

火の都を歩き続ける三人。


 堺は色々質問したかったが、何も話すことができず、もどかしい気持ちであった。


 (めっちゃ車乗りたい! あとこれから何するかマジで教えてほしい! あぁ斎藤さん!この気持ち伝わって!)


 堺はキラキラした目で斎藤の後ろ姿を見つめた。


 (……)


 黙々と歩く三人。

 しばらく進むと、


 左右の建物が開けた場所に出た。

 車が沢山とまっており、何かを交換している。

 その他にも武器やピッケルを整備したりする人達がいた。

 人で賑わっており、活気が良い。


「ん…?」

 よく目を凝らすと、赤い球みたいな物を交換している。

 大型の車からバイク、武器までもその赤い球を使用していた。


 (なんだあれ、 いっぱい積んで運んだりしてる…)


 堺はすごく見に行きたかったが、斎藤たちがズンズン進んでいくため、小走りで付いていく。


「ん?……お、おぉー!」


 ガタガタ……


 正面から巨大な車が向かってきた。

 防御力が高そうなガッチガチの見た目、イカつい。

 その車両は先ほどの広場に向かっていった。


「かっけぇ…」

 堺は横目でその車を眺めていると、


 ポフッ


「あた! す、すいません!」


 よそ見してぶつかった相手は、フードを被った女性であった。


 身長は堺よりも高く、フードから見えるその顔は氷の彫刻のようだ。

 透明感のある白い肌に、ダイヤモンドのような瞳。


「…」


 彼女はチラりと堺に視線を向け、何事もなかったかのように人混みに消えていく。


 (なんか、寒い……てか!すっっげぇ美人やった!あと、柔らかっ)


「ゴホン!」


 堺は何かを考えていたが、自制した。


「え、やば!もうあんな所に!」

 堺はランニングくらいのペースで走り出す。


 すぐさま二人の後ろにつき、息を整えながら歩く。


 (はぐれたらヤバいよな〜、それにしても、スーツの人よりも冒険者みたいな人が増えてきたな)


 街の雰囲気が変わっていく。

 煉瓦と鉄骨造りの街に、木造建築の宿や、ギルドが見えてきた。


 すると、


「宿を決めたいんだけど、この辺でいい?」

 真希が後ろを振り向き、二人に向けて話しかける。


「僕は問題ないよ」

 

「あ、えっ!だ、大丈夫です…」


 真希は再び前を向き、一つの宿に入っていった。

 アルテの町にあったような、クエストを受けれる宿。


 真希が受付嬢と話している。


 少しして、


「サッカイ、今いくら持ってる?」

 真希が堺に話しかけた。


「えっ、え… えっと…」

 堺は魔道具の中を確かめる。


 (また俺が負担するの!? くそぉ!ATM扱いかよ!!この魔人が!)


 堺はアハハ、と苦笑いしながら魔道具の中を調べる。


 (金貨が十九枚、、銀貨が百枚くらいあるな……)


「え、えっとぉ〜 九シルバーくらい… あります……」

 堺の笑みがヒクつく。


「そ、なら三シルバーちょうだい」

 真希が手を出す。


「僕も三シルバーお願いできるかな?」

 斎藤も堺を見る。


 (こいつらふざけんなよ!!)



 三人は宿をとった。

 五日間で三シルバー。

 飯はついていない。


 部屋の中に入る。

 六畳ほどの空間にベットと机が一つのシンプルな内装。

 トイレとお風呂が別についており、部屋の中心には机。

 その上にはろうそくが入った箱がある。

 

「五日後の早朝に集合、選抜戦の応募?巨大な建物に行けばわかる?よくわからんけど、とりあえず!じ、自由時間ってことだよなぁ!!」


 堺は噛み締めるように笑みを浮かべ、拳を強く握り、ガッツポーズをとった。


「そういえば二人ともクエスト受けてたな、まぁいいや!風呂入ろー!」

 堺は宿に付いているシャワー室に向かった。


「げっ」


 シャワーの横にコインを入れる場所がある。

 二ブロンズ、と書いてある。

 堺はシルバーコインを一枚入れた。


 ジャラジャラジャラ!

 お釣りが出てくる場所から、ブロンズコインが百枚近く出てきた。

「おぉい!」

 堺は一枚一枚魔道具の中に入れていく。


 気を取り直し、シャワーの水を流した。

 温度を調節できるダイヤルをひねる。


 シャー!と水圧強めに温かい水が出てきた。


「さっいこぉ!!」

 堺は汗とストレスを流したのであった。


 ――――


 外が暗くなり、街灯が付いている。

 堺は窓からその光景を見ていた。


「おー都会だな〜」


 堺は明日いろいろ見に行こうと思い、早々に眠りにつくのであった。


 ――――


「ん、んぅ…」

 堺は日光によって目覚める。


「あー、そっか火の都か…」


 堺は一瞬、地の都のマンションにいると思ってしまう。


「よし!」


 シャワーを浴びて、服の汚れを少し落とし、宿で飯代を払い、食べ、外に出た。

 クエストを受けようとも考えたが、お金には困ってないので後回しにする。


 (まずは服を買おう!そんで、車も見に行こ! あ、たしか応募…なんやったっけ? 明日でいいや!)


 堺はウッキウキで街を探索する。

 巨大な塔を背に歩き、昨日見た広場に向かう。


「おー、沢山とまってるなぁ」


 堺はチラチラと車を観察する。


 風を切るようなオープンボディ。

 銀に藍色が混ざったような金属製の外装は、鈍い光を放っている。

 車体の正面には赤色の球が埋め込まれており、車体の動く速さによって輝きが増していた。

 露出した菅が車体の左右から流れるように後方に向かっている。

 菅から出る白煙は、巨人の呼吸のように力強く唸る。

 歯車のようなホイール、大蛇が巻き付いたかのようなタイヤ。

 街中でたまに見かけるスポーティな車体が沢山置かれている。

 

 堺は目をキラッキラさせていた。

 個性豊かな車体を気付けば舐め回すように見ていた。


 ――――

 

「あっ、そういえば服も見ないと!」


 気がつくとかなりの時間が過ぎていた。

 堺は広場からしばらく歩き、スーツ屋を見つける。


「め、めっちゃ入るの気まずい、どうしよ…」


 店舗の前を行ったり来たりした。

 数十分ほどして、意を消して入ることにした。


 ガラス張りの店舗、取っ手が金色で高級感がある。


 ……


「いらっしゃいませ。当店へようこそ」


 店舗に入った隣にカウンターがあり、清潔な男性店員が頭を下げる。


「あ、ど、ここんにちは…」

 堺はガチガチな体で店を物色する。


 (こんにちはってなんだよ!! 何いってんだよ俺!もう最悪、出たいぃ、今すぐこの店から出て宿に戻りたいぃ!!)


 はぁ、とため息をつき肩を落とすと、


「お客様、当店は初めてですか?」


「えっ!あ、そうです」


「では、お求めのスーツに何か条件があればお聞かせください」


「そ、そそうですね、た、耐久性に優れたものがいい、です…」

 堺は無意識に自分が来ているボロボロのシャツを見てしまう。


「承りました。ご予算はお決まりでしょうか?」


「え…」

 (予算?ど、どうしよ、すごく高そうな店だし…)


「ご、五ゴールドくらい、ですかね…」


「!!??」

 店員が驚愕した目を向けた次の瞬間


 パチン!


 店員が指を鳴らした。

 すると、マネキンがキャットウォークでこちらに向かってきた。

 真っ黒なスーツを着ている。


「こちらのスーツ。耐久性には絶対の自信がございますっ」

 そういうと、店員は懐からナイフを何本も取り出し、マネキンを切り刻んだ。


 スパスパッ! ザシュシュシュ!!

 

 激しい斬撃が雨のように降り注ぎ、マネキンは粉々に砕ける。

 ……が、スーツは傷一つ付いていない。


「魔力をほんの少し使用しますが、自動調整機能も完備しております。着用者の体形に合わせて、ぴたりと!サイズが変化します」


 さらに店内から複数のマネキンが歩み出てきた。

 ふくよか体型、モデルのような細身体型、子供体型。


 先ほどのバラバラになったマネキンからササッとスーツをとり、太っちょ体型のマネキンに着せた。


 シュルルル、シュルン!


 体型に合ったスーツに自動で変化した。

 モデル体型、子供体型でも同様であった。


「素材にユニコーンの毛を贅沢に一〇%使用!抗菌・消臭効果は通常素材の七十倍です!」


「そして、軽く水をかければ!」


 店員が手から水魔法を出す。


 ピシャ! キラン!


「新品同様の美しさに!」


「どうでしょう!通常価格十ゴールドのところ、選抜祭割引でジャスト五ゴールドでご提供します!」


 店員はふぅ、と呼吸を落ち着かせる。

 マネキンたちは濡れた床や、バラバラのマネキンを片付けていた。


 堺は輝くスーツをじっと見て、

「か……買います!」と即決した。


「お買い上げありがとうございます! こちらは見本ですので……」

 店員はドッシリとした金庫から丁寧に商品を取り出した。

 流れるような手つきで梱包し、袋に収める。

「お待たせいたしました。最高の一着でございます」

 店員は爽やかに笑みを浮かべる。

 堺は震える手で五ゴールドを支払い、袋を受け取った。


 (やばい、バリ金使ったかも!!? で、でも凄い性能だったよね!そ、それで半額って絶対買いだよね! うん!いい買い物できた!できた!)


 堺はそう思いつつも、足元には力が入っていなかった。


 ほんのりと陽が落ち始めた街中は、ほんわかと街灯がつき始め、白い煙が空を登っていく。


 堺は自然と足の震えがやみ、その景色に心があったかくなる。


「なんか、クリスマスみたいだな…」

 

 不安だらけな世界、辛いことばかりで嫌になっていたけど、今は少し楽しいと思えている。

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