65話 火の都
ガタンゴトン…ガタンゴトン…
「ん、んんぅ…」
堺が唸り声をもらす。
ポタ、ポタポタ
「あ、あつい…」
堺が目を開ける。
意識がフラッとしており、全身に汗をかいている。
ペストマスクの中はべっちょりしており、思わず脱いでしまった。
「ぷはっぁ!!」
汽車に立ちこむ熱気。
窓の外を見ると、自然の風景が、黒色の大地に染まっていた。
遠くに見える山からは赤いマグマが流れている。
「はっ…?」
脳の処理が追いつかない。
(そ、そういえば火の国とか言ってたよな?そういうこと!?)
堺は何処か納得してしまい、暑さに耐えようとする。
呼吸をする空気が暑い、まるでサウナにいるかのようだ。
「え……」
堺は斎藤と真希を見た。
二人ともスースーと寝ている。
(おいおいふざけんなよ、こちとらこんなに苦しんでいるのに… 多分魔法だな、くそ!俺もつかいてぇ!!)
堺は苦しさに耐えることができず、魔法を使うことに決めた。
(イメージ、氷…… 涼しい…… よし、かき氷!)
堺の手から氷がジャリジャリと出てきた。
「っは!きもちっ!」
堺は手から出る氷を顔に擦り付け、首元に当て、服の中に入れた。
びっちゃびっちゃになりつつも、暑さを凌ぐために魔法を止めなかった。
すると、
「ん...?」
隣に座っている斎藤が目を覚ました。
「サッカイ君?」
斎藤は首を傾げた。
「あ!さ、斎藤さんすいません!お、起こして!あっ、暑くて、ちょっと、涼んでました!」
堺は手から出る氷を塗りたくる。
「サッカイ君、暑さを凌ぎたいなら耐熱魔法を付与するのが効果的だよ」
斎藤は苦笑いを浮かべる。
「耐熱魔法!そんなのあるんですか!?」
「とりあえず、その魔法やめようか、僕も濡れてるし」
堺は謝りながら氷を出すのをやめた。
「耐性系の魔法もイメージが大切。例えば、ひんやりとした海に浸かってる。とか、涼しい季節を思い浮かべるでもいい。」
斎藤は目をつぶり、瞑想のように穏やかに呼吸した。
(な、なるほど、えっと… イメージ、、クーラ!冷えたあの空間! ピッと電源入れたら涼しくなるあの感じ)
堺がイメージを膨らませると、
「お、おぉ! 凄い!涼しい!!」
全身がクーラーの風に包まれているようだ。
はしゃぐ堺。
斎藤はマスク越しに笑みを浮かべていた。
ガタンゴトン… ガタンゴトン……
シュポォォォォ!
……ガシャ、ガシャン!
汽車が停まった。
堺は窓の外を見る。
「おー!」
遠くに見える火山。
鋼鉄の駅。
筋骨隆々な男たちが、ピッケルを持って汽車の扉が開くのを待っている。
ガチャ!
駅の扉が開いた。
野郎たちが乗り込んでくる。
汗の匂いが車内にムアムアと立ちこむ。
野郎たちは今日の収穫について話し、騒いでいた。
防具をつけたものや、ピッケルだけ持って薄着のものもいた。
女性も少しいたが、華奢な体は見つからず、太ももや腹筋が立派であった。
(うわぁー、席座っててよかったぁ)
堺はフゥと息を吐く。
ガララララ…
車両の両側から音が聞こえ、先ほどのロボットが二台、前と後ろから向かってくる。
皆、お金をチャリンチャリンと入れていく。
あんなにも静かだった車内がザワザワとうるさい。
堺は眠気はなかったが、話しかけられないように目を閉じていた。
――
暇。
そのため周りの人が何を言っているのか無意識に耳を傾けてしまう。
「今日はやばかったな!」
「まさかレッドドラゴンに出くわすとは、流石に死んだと思ったぜ」
「全員生きててほんとラッキーだった」
数人の男が話している。
堺はドラゴンという言葉に興奮してしまい、鼻息が荒くなる。
「それにしても、ドラゴンがこの大陸までやってくるとはな…」
「何やら、ここ最近で転生者が何人も死んでるそうだ、それが影響しているらしい」
男たちは、今後が心配だと話し、家族に早く会いたいと盛り上がっていた。
堺はドラゴンや転生者のことを頭の中でグルグルと考えていた。
(前田さんの死とか関係あるのかな、アルファの転生者…そういえば!岡本さんたち大丈夫なのかな? また、皆んなに会いたいな…)
堺は以前の出来事を考えたり、周りの人の話に耳を傾けたりして時間を潰していた。
しばらくして――
(うっ、やばい!魔力ずっと消費しているせいか、めっちゃ体ダルい、、このままだとまた気絶するっ)
体は動いてないのに、頭がグルグルと回る感覚がしてきた。
(や、やばい、ちょっと魔法を解いてみるか…)
ヒュオォォ
魔法を解いた瞬間、頭がフワッと軽くなる。
途端、熱風が全身を包み込む。
(あ、あづいいぃ、、)
夏の日陰にいるような状態で、ポタポタと汗がで始める。
車内の温度は下がってきているが、先ほどよりも暑く感じる。
堺はすぐさま耐熱魔法を展開した。
(こ、堪えてやる!!………)
酔ったように頭が回り、なんの思考もできずに時間だけが過ぎていく…
鋼鉄の駅から何時間が経とうときた時――
シュポォォォォ!!
汽笛がなる。
周りの人たちが席から立ち上がる音が聞こえる。
(きた!!)
堺はス…と目を開ける。
(おぉ!!!)
窓を見ると、一定間隔で駅が並んでいた。
駅は街を囲むように作られており、各駅からまっすぐと線路が続いている。
空港のように広大な平地。
たくさんの人が行き交っている。
ガチャガチャン!
汽車の扉が開き、野郎どもが雪崩のように出ていく。
スン…
真希が立ち上がり、斎藤はその後に続く。
堺も立ちあがろうとした、が、
「やばっ」
フラッと体がよろける。
「……」
唾液をごくりと飲み、耐熱魔法を解いた。
「あ、暑くない…」
堺はフゥと息を吐く。
そしてバッ!と立ち上がり斎藤の後ろについていった。
汽車の外に出る。
キラッと太陽が目を刺激した。
「おぉー!」
ブルジュハリファみたいな形の巨大な建物が一つそびえている。
正面は広々とした道が続き、その左右にはレンガと鉄骨造りの建物が並んでいる。
モクモクと煙を発した煙突、シュポシュポと音を鳴らせながら走る車やバイク。
堺はポケーっとその光景を眺めていた。
「サッカイ君、迷子になるよ」
斎藤が肩をチョンチョンと指差す。
堺はビクッと体を震わせ、情けない声を出す。
真希がこちらをジッと見ており、あの時のトラウマを感じて、ササッとついていく。
――街。
人で賑わっており、鉱石を売っているものや、武器や防具を売っているものがいる。
「あれはっ!」
街中で走っている蒸気を出す乗り物を販売している店があった。
「ん……?」
気のせいだろうか、奥の方にスーパーカーのようなものが展示されていた。
堺はすっかりテンションが上がってしまい、ニッコニコで観光のように楽しむ。
(それにしてもスーツの人多いな、マジかっけぇ ああー 俺の服もうボロボロだし、そろそろ新しいの買いたいなぁ)
堺は周りの目線が気になり、マスクを被る。
(よし!乾いてる!)
三人は歩く。
その先、巨大な塔がそびえていた。
――――街の中心にある塔。その最上階にて
「選抜戦をやらないといけないなぁ!!」
「そうですね、心大陸への上陸制限の緩和、全く、どれだけの馬鹿が死ぬと思っているのか… アンドレス王も血迷いましたね」
「おいおい!そう人を悪く言うな! きっと何か考えがあるんだろう!」
「そ、そうですね、それと、船の建造は完了いたしました。あとは地神様に選抜場の件をお伝えください」
「うむ!いつも助かっておるぞ! わかった!!伝えておく!」
「では、火神様、失礼します」
そう言って彼は頭を下げて出ていく。
「今年は最高に盛り上がりそうだな! ハッハハッ!!」
火神は高らかに笑うのであった。




