64話 火の国
堺の意識が冴える。
朝日が眩しく、爽やかな風が肌をかすめる。
「こ、ここは… 駅?」
目の前に線路が見え、はるか先まで続いている。
どうやらここが終点のようだ。
街灯が一本たつ簡素な駅。
周りは自然に満ちているが、その草木をくり抜いてガッチリとした線路が真っ直ぐ続いている。
「はい」
真希が不意に魔道具からマスクを取り出した。
その手にはペスト医師のようなマスクが三つ、プラリと垂れ下がっている。
斎藤が一つ手に取り、堺は受け取らずにいると、
「サッカイ君も受け取った方がいいと思うよ」
斎藤がマスク越しに話す。
堺は「あ…は、はい」と言い、真希の顔をみずに、スッとマスクを受け取った。
ぐ、ぐっ、ぐ…と被る。
視界が狭く、呼吸がしづらい。
でも、
(いい匂い…)
堺はなんか悔しい気持ちになった。
ペストマスクをつけた三人。
真希は黒いドレスのため、どこか馴染んでいるが、
焦げてボロボロ燕尾服の斎藤は少し浮いていた。
堺に関しては白の汚れたシャツに黒ズボンの為、違和感しかない。
三人はマスクを被り、駅に突っ立っている。
何も話さず、しばらく時が経つと、
シュポォォォォ!
遠くから汽笛が聞こえる。
黒い物体、機関車が白い煙を上げながらこちらに向かってきていた。
「おぉー!」
堺は目を光らせた。
(って、ここ異世界だよな ま、まぁ 汽車くらい走ってるか…)
電車ではなかった為、特に気にしなかった模様。
カジュガシュシュシュシュ!
先頭車の巨大な車輪がグワングワンと回り、線路を力強く進む。
かすかに地面が揺れを帯びてきた。
そして、
シュポォォォォ!
汽車が駅に停まった。
ガチャ、ガチャン!
巨大な砂時計が列車の中央車両から出てきた。
真希と斎藤が車両に乗り込む。
堺も、フン!と鼻息をついて乗り込んだ。
三人は向かい合う席に座る。
堺と斎藤がとなりで座り、その正面に真希がいる。
ガチャガチャガチャ
何か音が聞こえてきた。
堺が席から顔を出すと、
大型犬くらいのロボットが動いていた。
シュシュと煙を出している。
カクカクとした頭部と体に、足はキャタピラーになっていた。
そのロボットは三人の席につくと、
「サンニン、ナカマ」
首を傾げるロボットに、斎藤が微笑みながら頷く。
「モクテキチ、イエ」
「火の都」
斎藤がそう言うと、
「サン、シルバー」
ロボットの口がクワッと開く。
真希と斎藤は、堺を見つめた。
(え、さんしるばー?……あ!三シルバーか!)
堺は魔道具から三シルバーを取り出そうとする。
(え、俺が全部払うの?……魔人のも??いやなんだけど、自分で払えよな 全く…)
堺は渋々、ロボットの口に三シルバーを入れた。
「カクニン、アリガトウ」
ガチ、と体を倒して、また進み出すのであった。
「サッカイ君、ありがとう。また借りができたね」
斎藤が笑いかける。
堺はドキッとした。
マスク越しからみえる斎藤の目。
今までサイコパスな雰囲気だったのに、今はすごく自然だ。
堺は「あ、いいですよ!ま、任してください!」とぎごちなく笑った。
「私も、ありがと」
真希もお礼を言う。
堺は微かに頭を下げる。
(斎藤さんはともかく、こいつだけはマジ許さん……で、でも、なんなの!?二人の以前の面影どこいったの!? そうだ!今度、斎藤さんには聞いてみよう!二人っきりの時に色々話してみよう!)
堺は胸をドキドキさせながら、拳を強く握った。
シュポォォォォ!!
汽笛と共に汽車が動き出した。
ガタンゴトン…ガタンゴトン…
会話もなく、ただ時間が過ぎていく。
堺は窓の外を見たかったが、窓側の席には斎藤がいる為、見るのを諦めた。
正面には真希がおり、チラチラ見ているのがバレていそうだったので、目を瞑ることにした。
ガタンゴトン…ガタンゴトン…
心地よい振動、心地よいリズム。
堺はいつのまにか寝てしまっていた。




