62話 目的
62話
パチ…パチパチ……
暗闇の中に見えるオレンジ色の光。
堺はゆっくりと意識を取り戻す。
あたりは暗く、砂埃が少し待っている。
意識がもうろうとしており、起きあがろうとしたが、体勢が崩れ、頬が地面につく。
ツルりとしたタイル。
パチっと静電気が走った。
それと、微かに焦げた匂いがする。
タイルはひんやりとしており、細かな砂が頬につく。
目をパチパチとしながら体勢を起こした。
焚き火の周りを見る。
少女が一人すわっている。
「!!??」
堺は思い出した。彼女は極悪な魔人で、ラルトや岡本たちを何度も殺した人物だと。
呼吸がうまくできない、ぼやぼやと視界が動く。
「あ…」
堺は魔道具に魔力をそっと込め、闇の杖を取り出そうとした。
「殺したい気持ち 伝わるけど、無駄だから」
少女は焚き火に薪を入れながら、視点を離さずに堺に話しかける。
堺は頭の整理がつかない。
(死に戻りした!?で、でもこんな場面は一度もなかった!岡本さんの時?俺だけ生かした?わからない!!なんで、そもそもここは何処なんだ!)
堺は改めて周りを見ると、焚き火の近く、人が横になっている。
「……斎藤さん……?」
焦げた燕尾服。黒の手袋。
あの、複製体の斉藤が息をしていた。
焚き火の近くを囲むのは、堺、斎藤、そして少女――真希。
「きみ、死にかけてたんだよ。倒壊した建物の下敷きになってさ。足とか潰れてたから、治してあげたの」
真希は淡々と告げる。
焚き火の炎が、彼女の瞳にゆらりと映る。
そこには、かつての冷酷な光はなかった。
(倒壊… そうだ!前田さんを探してて…意識が飛んで……)
ここがアルファだと気づいた。
白色のタイルがその証拠。
堺は質問をしたいと思ったが、何も考えれない。
それよりも真希に対する憎悪や、殺意が込み上げてくる。
(何もできない自分が悔しいっ……)
堺は歯を噛みしめ、目をぎゅっと瞑る。
「う……あれ? ここは…」
隣で斎藤が目を開ける。
手を見つめ、ゆっくりと自分の体を確かめた。
「生きてる……」
「真希… それにサッカイくん。……僕を助けてくれたのは、真希、君かい?」
「そう、別に死んでもらって構わなかったけど、仕方なくね」
真希の手に握られている。薪がパキッ!と割れる。
「君の兄を殺したってのに、不思議。殺さなくてよかったのかい?」
「偽物を殺しても意味ないでしょ?それに、さっきまで死にたくない死にたくないって、唸ってたくせに」
斎藤は微かに口を開けたまま固まる。
「わたし、魔王軍やめたの、勝手にだけど。それで、ある人を生き返らせたいから、手伝ってくれない?」
真希は焚き火を見つめていた。
「前田かい?」
斎藤はニヤリと笑う。
「そう よ」
その名を聞いた瞬間、堺の心臓が跳ねた。
「まっ、前田さん!がし、し死んだってことですか!?……アッ すみません……」
言葉が喉で絡まり、震えた声になる。
「なんで生きてる人を生き返らせるの?」
真希は冷静に突っ込んだ。
「…僕は手伝うよ。償ってやつだね」
斎藤は自然に微笑む。
「そ、ならよかった。サッカイ?は どうする? 別に強制はしない」
真希は少しだけ口元を緩め、堺に視線を移す。
真希の表情には、もはや魔の影はなかった。
温もりを宿した瞳が、まっすぐに堺を射抜く。
「僕は……」
(何が何だかわかんねぇ、なんで魔人が前田さんを助けたいのかも、斎藤さんがいるのも訳わからない、、でもっ……」
――前田さんと出会って色々あった。
ゴブリンに殺される羽目になって、学園では殺されかけた。
アルファの拠点に行ったら死に戻りして、最初からになった。
それで、何もない俺に魔道具とか渡してきてくれた。
面倒見も良くて、でも少しスパルタ。
一度は疑ったけど……救いたい。
今までの恩返ししないと。
そんで ちゃんと話したい。
だから……
「僕も! 前田さんを 生き返らせたい!です……」
堺は目を輝かせた。
顔から迷いが消える。
真希はわずがに目を細め、微笑む。
「そ、ありがと。 なら これに触れて」
真希は転送石を取り出した。
紫の光を放つそれは、渦を巻くように内部がうごめき、微かに熱を放つ。
「火の都に行くのかい?」
斎藤が呟く。
真希はうなずく。
「ひ、火のみやッ……ゴホッゴホッ!」
堺は質問をしたかったが、これが限界だった。
そして、三人の手が転送石に触れる。
すると転送石が強烈な光を放った。
焚き火の炎が吸い込まれるように伸び、三人を包み込む。
堺は体からゴッソリ魔力が抜けたのを感じた。




