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60話 大地

60話

――空。


 紅の装甲を纏う女が、風を切って浮かんでいた。

早乙女。空に漂うその姿は、まるで燃え尽きる星のようだった。

「さ〜て、戻ろうかな」

 あくびをしながら背筋を伸ばす。

 目の端に涙を含み、顔に力が入っていない。


 ドォン——。

 遠く、地の果てで空気が裂けた。

 爆発の残響が空を震わせ、早乙女の目がわずかに光を宿す。


 「使ったんだぁ……」

 唇が吊り上がる。狂気にも似た笑みが浮かんだ。


 ウィィィン……

 背中の装甲が紅く光を放ち、空が一瞬、茜に染まる。

 ジュン!

 レーザー銃のような音と共に超加速する。

 音すら残さない、まるで光そのもののようだ。


 ――和田、??。


 爆炎の跡。焼け焦げた大地には兵士たちの影が刻まれ、空は血のように赤い。

風が泣き、砂を巻き上げる。だがその中に、ふと――静寂が生まれた。


大地が、呼吸を止めたのだ。


重く、深く、地の底から何かが“起き上がる”。

その存在に、和田の頬がひきつる。


 彼が現れた。

 地属性を司る転生者――。

 

 金と黒の衣が風に揺れ、眼差しが空を射抜く。

 その瞳に映るのは憤怒でも悲嘆でもない。

 ただ――この世界を正しき形へと戻すという、揺るぎなき意志のみ。


「現れよったで! まぁ、流石にこれ以上は許さんわな」

 和田は無邪気に笑う。


「これ以上、その兵器を使用することは 許されない」

 地の神は目線を下に向ける。

 焼けこげた兵士たちに目を向け、和田を見た。


「俺なぁ、自分より強い奴にしか従わない主義なんよ。

 アンタがそれを証明してくれるんやったら、考えたってもええわ」

 和田は何かあればテレポートで逃げれると考え、舐めた態度をとった。


 だが、地の神は何も答えない。

 そのまま、掌を地に向けた。


 ゴゴゴゴゴ……!!


 遥か遠くの山脈が崩れる。

 大地がうねり、渦を巻く。

 山が砕け、谷が反転し、空を突き抜けるように黄金の樹が伸び上がった。


 その葉は金に輝き、枝は雲を突き抜け、光が降り注ぐ。

 それは、まるで神が涙を流して創った世界樹。

 

 焼け焦げた兵士たちの肌が、金の光に包まれる。

 剥がれ落ちる焦げ、再生する肉体。

 彼らは息を吹き返し、涙を流しながら地を掴んだ。


「……まじか。これは敵わんわ」

 和田は笑いながら、手にしていた魔道具をぽとりと落とした。


 黄金樹の光がゆっくりと消え、葉が緑へと変わる。

 その瞬間、地の神の声が和田の脳に響いた。


「二度目はない。」


「……はっ!?」

 我に返ると、地の神の姿はもう消えていた。

 残されたのは、鳥のさえずりと、柔らかな風だけ。


 戦場を包む光は、もはや“戦”の色ではなかった。

 草が芽吹き、空気が澄み渡る。まるで世界が浄化されていくようだ。


 ――


「さすがに敵わないねぇ〜」

 早乙女が戦場の上空から兵士を見渡す。

 

「早乙女はん、これからどうします?」

 和田が声をかける。

 彼の顔には、まだ呆然とした笑みが残っていた。

 

「そうだねぇ〜、アルファにはもどらなくていいかな〜、前田が死んで皆んなうるさいし、ブラブラ旅でもしようかねぇ」

 早乙女は両手を後ろに組み、黄金樹を見上げる。

 紅の装甲に夕日が反射し、まるで赤と金が混ざり合うように光る。


「旅……また魔族狩りでも始めるんか?」


「さぁ、どうだろうねぇ」

 早乙女は笑った。

 風が髪を揺らし、装甲の羽がかすかに鳴る。

 その目の奥には、紅い光が宿っていた。

 

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