58話 和田
58話
地の都の兵士とメルディア学園の生徒たちは息を呑む。
十万の軍勢。しかし、先ほどの攻撃で数多くの仲間が倒れてしまう。
前衛には近距離が得意なものを配置し、中衛にはバリアを展開する者たちがいる。
後衛には遠距離を得意とする魔法使いたちが、バリアの陰にひしめいていた。
前衛には空を飛べるものたちがおり、高度を上げて攻撃魔法を展開している。
「みんなっ大丈夫!」
砂にまみれたラルトが叫ぶ。胸の奥で嫌なざわめきが膨らむ。
「ら、ラルト! 俺は大丈夫だー!」
タイトは手を上げアピールをする。
(あの巨大な鳥もいなくなったし、もしかして…勝ったのか……)
希望が見え、強張りながら笑顔を作る。
「リュロとギルと、はぐれちゃったね」
ラルトがぴょんと跳ねながら遠くを見渡す。
周りにいる兵士たちは、声も出せずに武器を構えていた。
重症に苦しむものは、後衛まで必死に運ばれていた。
数分ほどの静寂が戦況に訪れる。
誰もが荒い息をつき、土と血と焼けた金属の匂いにむせている。
握った武器は汗で滑り、視線だけが四方に走る。
――またどこかで爆発するかもしれない。背後に爆弾を置かれるかもしれない。
兵士たちの頭には、和田の悪魔のような笑みが焼きついていた。
「――そんならこれ、試してみようか」
和田は空中にテレポートしていた。
同じ場所に連続的にテレポートすることで空に立つ。
和田は魔道具を握り、魔力を込めた。
「地球最強兵器やろうな……」
和田が地表をみてニヤける、魚が群れる池に石を投げ込む子供のような、好奇心まじりの悪意。
そして、魔道具から一つの塊が落ちた。
数メートルを超える黒光する物体が、敵陣の真ん中へと落下する。
「……なんだ、この胸騒ぎは…」
アンドレス大は空を仰ぎ、背筋が凍るのを感じた。
迫ってくる。何か取り返しのつかないものが。
王笏を突き、バリアの強度を限界まで高める。
中衛の魔法使いたちも一斉に魔力を注いだ。
その刹那、青空が閃光に染まった。
——光。熱。風圧。
轟音とともに、熱波が兵士を焼き尽くす。肉体が溶け、影が地に貼り付く。
バリアなど紙切れのように消え、破滅の波が瞬時に膨張した。
――ラルト。
一瞬の出来事だった。
空が光って、まぶしさに目を閉じた。大きな音がして世界がひっくり返る。
意識が戻ると、焦げた鉄と脂のようなにおいがした。
呼吸がうまくできない。体が思うように動かなくて頭が割れるように痛い。全身が炎の中にあるみたいに熱い。
「みんなっ……」
黒煙に包まれた戦場には、唸り声と断末魔だけが残っていた。
「……ら、ラルト……」
かすれた声が耳に届く。
「タイト...!」
正面で仰向けになっていたタイトの顔は、真っ黒だった。
口を開けたまま、声にならない息だけが漏れている。
「タイト、ここにいる... ねぇタイト...!!」
ラルトは彼を抱きしめる。
「……ラルト……よかった……」
その言葉を最後に、タイトは動かなくなった。
どれだけ願っても、現実は変わらない。
そして、ラルトもゆっくりと固まっていく――
――――
「いやぁ〜、えげつない威力やな!中央は更地やし、 まだ周りに残ってるな」
和田はニヤリと笑い
「もうほとんど魔力残ってないけど、あと六発、周りの兵士含めて一気に吹き飛ばしたろうか」
和田は感覚が麻痺していた。
攻めてきたのは向こう、どれだけ殺そうともそれは正義になると言い聞かせる。
空に立つ。一気に六発の核兵器を投下しようとした時。
「動くな」
低い声が、正面から響いた。




