56話 転生者の力
56話
斎藤はアルファの要塞を駆け上がっていた。
靴底が鉄骨を打ち、乾いた音が連なる。
頂上の展望室──そこにリアムがいる。
窓際に立つリアムは、アルファ全体を見下ろしていた。
異変を悟っているらしく、微動だにしない。
斎藤の掌には黒光りするS級封印具。
頬に汗がにじむ。
「……ここで終わらせる」
斎藤は跳び、強化ガラスを粉砕した。
破片が散るより速く、ボックスをリアムに押し付ける。
リアムの瞳が見開かれた。
反応したが、指先が触れてしまう。
空間が歪み、彼の身体が吸い込まれていく。
斎藤はすぐに岡本へ念話を飛ばした。
「──合図だ」
――――
「ねぇ、あそこ、人いるよ」
ラルトが不思議そうに見つめる。
「ほんとだ、って 一人増えたぞ!」
タイトが後退る。
ナックルは一歩前に出た。
「ついに来たか」
「援護は任せろ」
アンドレスが王笏を握り締める。
狂気の笑い声が戦場に響く。
「あははっ、すごい数の兵士たちだねぇ」
早乙女が舌なめずりした。
「おぉっと、なんやこれ」
和田がテレポートした。その顔は困惑していた。
「ほらぁ、前田のやつ死んだだろ? それで『人』の奴らが攻めてきたのさ、まったく、確証も得ていない理論を鵜呑みにして、馬鹿だねぇ」
早乙女が呆れたように首を振った。
「あ〜なるほど!それなら、彼ら全員ころしていいってことやん」
和田の糸目がさらに細くなる。
すると、アンドレス王が一呼吸をして声を張り上げる。
「時は満ちた――全軍、進撃せよ!!」
体に響く活力。
兵士たちは一斉に吠え。前進した。
――――
「み、みんな! 合図がきたよ!任務に取り掛かって!」
岡本はそう叫び、広い空間へ駆け出した。
魔道具から巻物を取り出し、広げる。
両手を置き、魔力を込めた。
グゥン!巨大な魔法陣が床に広がる。
「こ、この中に転生者たちを集めるよ!」
岡本が叫ぶ。
マリナが本を開き、白色の塔を出現させる。
タイガは目を緑色に光らせ、その塔に触れた。
白色の塔から発せられる金色の光が、緑色に変わる。
人々の表情が消え、目の焦点が合わなくなる。
堺は千体のゴブリンを召喚した。
ゴブリンたちにアルファ内の転生者の確保を命じる。
一斉に飛び出すゴブリン。
一人、また一人と連れてくる。
「魔力解放値15%」
ロアが杖を振るいながら呟く。
岡本たちに魔力が溢れる。
塔から放たれる光がさらに強くなり、ゴブリンたちの動きが何倍にも速くなる。
――――
リアムが封印されたボックスの近くで、斎藤は待機していた。
黒の手袋を外し、瞬きもせず監視する。
――――その頃、早乙女と和田は暴れ回っていた。
早乙女は戦闘機を創造し、空爆を繰り返す。
和田は早乙女からロケットランチャーをもらい。
テレポートしまくって撃ちまくる。
爆音が鼓膜を破り、風圧が頬を削ぎ、焦げた匂いが鼻を突く、戦況はめちゃくちゃだ。
戦闘機にダメージを与えても、すぐに修復される。
そして、魔力さえあれば爆弾は自動生成される。
転生者二人の魔力は桁違いで、爆撃は尽きない。
「みんなっ大丈夫!?」
ラルトが空爆を交わしながら走る。
「どうやって勝つんだよ!!」
タイトが盾を頭の上に担ぐ。
ラルトの後ろに着いていくだけで精一杯だ。
「ちょっと!!メルディア学園最強が集まってるんでしょ!なんとかしなさいよ!!」
リュロは叫びながら走っていた。
「嬢ちゃん、メルディア学園をみくびられたら困るぜ。なんたってこっちにはダイヤランクがいるんだからな!」
ギルが自慢げに言う、同時に――
空に一筋の光が走った。
「分析は終わったか……」
ナックルが爆弾を弾き、空を仰ぐ。
「あれがメルディア学園最強にして、人類最強と言われる者か……」
アンドレス王の瞳に、かすかな希望が宿った。




