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53話 親睦

53話

 ラルトが元気よく挨拶をした。


 タイトが一歩前に出て「本当にありがとうございました!」と深く頭を下げる。

 ロアもタイトの横にちょこんと立ち、同じように頭を下げた。

 リュロもためらわずに頭を下げる。

 ラルトはそうだったと言わんばかりに頭を下げた。


 

 あの日――。

 タイトは田中との契約で魔王軍の兵士になるということが決まり、意を消して反撃した。

 代償魔法で死の瀬戸際を彷徨ったタイト。ハイオーガの攻撃で死にかけたラルト、リュロ、ロア、ギルを救った地の都の兵士たち……。

 その感謝を伝えるため、彼らはこの場で頭を下げたのだった。


「気を失ってた青年は君だったんだね」

 岡本がタイトに視線を向ける。


「まぁ、僕たちも救われたというか、ほとんどサッカイ君のおかげなんだけどね」

 岡本が頭に手を置き笑う、その目線は堺に向けられていた。


「あれ!サッカイ!」

 ラルトが犬のように無邪気に走ってくる。


「え、あっ、ひっ、ひさし、ご、ご無沙汰です」

 堺はどう接していいのかわからなかった。


「転生者と知り合いなのか!」

 タイトが感心したように声をあげる。


「うん!アルテの町で出会ったんだよ!」

 ラルトの目はまっすぐで、曇りがない。


 堺のラルトに対する記憶が混乱して、言葉が詰まっていると、


「二人とも困ってるでしょ」

 リュロがラルトの首元を掴み、堺からラルトを遠ざけた。


 堺は笑顔を作ったが、その手はわずかに震えていた。

 (そっか、死に戻りしたから、みんな覚えていないんだ……)

 

「皆んな座ってもらえるかな?ミッションの説明をするよ。」

 斎藤の声が響く。


 ラルトたちは席についた。


「今回のミッションは、『転』という大陸にいる転生者たちの確保、もしくは殺害だよ。できれば確保してほしいけど、無理なら殺してね。」


「殺しはよくないよ!まずは話し合って――」

 ラルトが席を立って斎藤に意見しようとした。

 その瞬間、斎藤がラルトの首を掴む。

 ラルトは声を出すことができず、口元からは泡が溢れていた。


 (ラルト!やばいやばい!!助けないと!でも!!でも……)

 堺は体を震わせ、拳を握ることしかできなかった。


 そんな中、リュロが戦おうと、席を立とうとしたが、動けない。

 空間に広がる斎藤の魔力。死が間近に迫るような恐怖が、全身を硬直させた。


「君はロアの元にいたいんだよね、口答えされると、面倒だから、大人しくしててほしいな。」


 ラルトの目から光が薄れ、手がだらりと下がった。


 斎藤はふっと手を離し、元の位置に戻って説明を続けた。


「『転』にはアルファという拠点があって、地下にあるよ。そこに転生者たちがいるわけだね。」


 (アルファ!?やっぱり、嫌な予感がしたんだ!ってことはあの人たちが標的!? 前田さん…僕はどうすれば……)

 堺の頭が重くなる。


「それと 気を付けてほしい人物が一人いるよ。」

 斎藤が写真をボードに貼る。


 黄色に逆立つ髪、勇ましい顔つき、鋭い瞳には稲妻の模様。


「彼はリアム・スミス、雷神だよ。彼に見つかった時点で全滅は免れないから、素早くミッションをこなしてね。」


 (あの人はっ、前田さんを詰めてた人だ……ら、雷神??)

 堺の心臓が跳ねる。


 雷神という言葉に、岡本たち、タイトたちは息をのみ、緊張した。


「説明は以上だよ。後日また招集するから、ロアと仲良くしててね。」

 斎藤が部屋から出ていく。圧力が消え、体に入った力が抜けていった。


「ラルト!ラルト!!」

 リュロがラルトの元に駆け寄る。

 タイトやロアもすぐに集まった。


「こ、殺しはよく、ないよ…」

 ラルトは掠れた声で思いを伝える。


 ラルトの意識が遠のく中、マリナが近づき、本を開く。金色の光が溢れ、ラルトに降り注いだ。


 するとラルトがバッと立ち上がり、「ダメだよ!殺しは!!」と叫んだ。

 

 タイトたちは安堵し、マリナに礼を言う。

 マリナは恥ずかしそうに岡本のそばに寄った。


「だからコウト人は嫌なんだよ」

 タイガがぼそっと呟く。


「何よ、クソガキ、文句あるの?」

 リュロの耳はよく、怒った表情でタイガに向かう。


「弱いのに正義感強いところが嫌いって言ってんだよ」

 タイガの目が緑色に光った。


 次の瞬間、リュロが犬のようにゴロンと転がり、舌を出してハアハアと呼吸する。

「お、おい!どうした!?や、やめてあげろよ」

 タイトがタイガに詰め寄るが、タイトも同じように犬のように転がった。


「何やってるの皆んな!」

 ラルトがシンプルに二人の真似をする。

 

 堺はどっちの味方をしていいのかわからず、ただアワアワとしていた。


「ちょっとタイガくん!そんなことしたらダメだよ!」

 岡本がすぐに止めに入る。


――――

 

「ごめんなさい」

 タイガはダランと体を倒して謝った。


 タイトが「大丈夫、大丈夫」と言う中、リュロは隅で顔を真っ赤にしていた。


 その後は岡本が場を収め、皆が自己紹介を済ませた。

 ラルトが無邪気に質問を浴びせ続けるので、タイトたちは粗相を避けるように先に招集部屋を出た。


 岡本たちは一息つき、解散したのだった。

 

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