52話 新たな仲間
52話
「う、ゔ〜ん…」
堺はまぶたを重く開け、背筋を伸ばして、のそっと起き上がった。
部屋の中にある冷蔵庫には、新鮮なお弁当がぎっしり詰め込まれている。
無言で食事を済ませ、シャワーを浴び、身支度を整える。
それでも胸の奥のざわめきは消えない。
ロビーに出ると、広い空間にひとりきり。
時計の針の音だけが、カチ、カチ、と響く。
岡本、タイガ、マリナ、クレインにセラ――彼らの姿が頭から離れない。
あの時の血の匂い。魔人の笑み、倒れていく影……。
(みんな……)
鼻がツンとし、堺は袖で目元を拭った。
「さ……サッカイくん!」
振り返ると、岡本が走ってきた。
その後ろには、タイガとマリナの姿――生きている。
「み、皆さん…よかった……」
堺の胸にあたたかいものが広がる。
岡本は息をつき、
「よかった!ずっと起きないから、ほんと心配してたんだよ!」
「ちょっとは頼れってんだよ!」
タイガは堺のお腹にパンチした。すぐさま後ろを向いて、鼻をすする。
「サッカイさん。ありがとうございます。おかげで皆んなこの通り無事です」
マリナはぺこりと頭を下げる。笑みの端に涙が滲んでいた。
「でも、サッカイくん、ほんとに起きなくて、1ヶ月くらい気を失ってたんだよ!」
岡本が両手で長さを示すようにジェスチャーをする。
「えっ、そ、そんなにですか!」
堺は口に手を当て、目を丸くした。
「斎藤さん、色んな回復薬試してたよな、全部効かなかったけど」
タイガはヘヘッと笑う
「そ、そうなんだ! 今度、お礼言っとかないと…」
堺はいつかしようお礼をしようと考えた
「水の都で水神様の治療を受けたと聞いてますが、水神様はどんなお方だったんですか!」
マリナが堺に近寄り、目をキラキラさせる。
「え、えっと、凄く綺麗で、まさに神様って感じだったかな?」
堺の水神に対する記憶が、夢のように薄れていく。
マリナは本をぎゅっと握り、目を光らせて胸を躍らせた。
その後――
あの日についての話で盛り上がる。
正義のヒーローのように、魔人を蹴散らした彼、田中の正体について色々聞かれたが、堺は何も知らないと答える。
岡本たちが、いかに田中と魔人の戦いが凄かったと説明する中、堺の頭では悲惨な光景が、脳裏に浮かぶ。堺の顔から笑顔が消え、岡本はそんな堺に気を使い、また明日話そうと提案した。
皆が解散し、堺は一人、街を歩いた。
行き交う人々の笑顔を見ていると、どこか安心する。
堺はゆったりと時を過ごし、心身を回復させていく。
すっかり日が暮れ、自宅に戻り、風呂に浸かる。
ベッドに潜り、岡本たちの笑顔を思い出して、以前よりも気持ちよく眠りについた。
――そして翌日。
岡本たちと出会い、食事を楽しんだ。
ゆったりと過ごす。
そんな幸せな毎日が続いた。
堺はオススメの店を見つけ、お気に入りの紅茶を飲んでいた。
「あぁ… 幸せだなー こんな日々がずっと続けばいいのに」
リリリリリン!!
頭の奥でベル音が響いた。
手からカップが滑り落ち、粉々に砕ける。
堺は立ち上がり、過呼吸気味に胸を抑える。
覚悟を決めて、招集部屋に向かった。
「っはぁ!」
転送の光が消え、堺は変な汗をかきながら周囲を見渡す。
招集部屋には、岡本、タイガ、マリナがいた。
堺は軽く挨拶を済ませ、部屋の中央にある机に向かい、椅子に座る。
隣の席で座っている岡本は不安そうな顔をしている。マリナは本を読んでおり、タイガは椅子を並べて暇そうに寝ていた。
「皆んな集まったね」
斎藤が現れた。机の奥で立ち、無機質な笑顔をこちらに向ける。
タイガがすぐさま椅子に座る。
マリナはパタンと本を閉じた。
岡本は目に力を入れ、気合を入れる。
堺の心は今にも押しつぶされそうだった。
「今回は新しいメンバーと、今後のミッションについて説明するよ」
斎藤がそう言うと、
バタン!
招集部屋の扉が開かれる。
「皆んなはじめまして!僕の名前はラルト・マケット!よろしく!」
満面の笑みで青年が飛び込んできた。
その後ろには、やれやれと首を振るリュロ、チラチラと周りを警戒するタイト、そしてタイトの影に隠れるように立つロアの姿。
「新しいメンバーのロアと、その一行だよ。皆んな仲良くしてね」
斎藤の無機質な声が響く――。




