51話 戦
51話
「はっ……こ、ここは!?」
堺は目を覚ました
水色に輝く空間。透き通る水中のようで、体は仰向けにゆらゆらと浮いている
1匹の色鮮やかな魚が、堺の目の前を横切った
「え、水中!?」
堺は口元を手で覆い、息を止め、その場でバタバタと暴れる
「プハっ! ってあれ? 息ができる…」
胸がざわめく、夢なのか、それとも――。
「ようやく目覚めましたね」
落ち着いた声が頭の奥に直接響く。堺が辺りを見渡すと、温かい光がふわりと彼を包んだ。
光の中に立つ女性――水色の髪が滝のように背へ流れ、白い顔立ちが柔らかく微笑む。
瞳はアクアマリンのように澄み、青の着物が水面に揺れていた。
堺は息をのむ。声が出ない。
「動揺するのも無理はありませんね」
彼女は両手をそっと堺の頬に添えた。温かい指先が触れた瞬間、頭の中に光景が流れ込む――。
岡本たちが魔人から逃げる姿。気絶した堺を励ます声。
王都に戻り、斎藤が治療を試みる。
そして水の都、水神へと運ばれる堺。
「はっ……!」
堺の意識が引き戻された。
「私の役目はこれで終わりです。堺さん――あなたがこの世界の光となることを願っています」
水神は微笑んだ。次の瞬間、堺の身体が泡に包まれ、水が口に流れ込む――。
堺は咄嗟に泳ごうとした。だが足先が床に触れ、ブハッと水面に顔を上げる。
「え…」
そこは地の都の招集部屋だった。
部屋の中央に置かれた二メートルほどの長方形の水槽。その中から堺は身を起こした。
「さすが水神というだけあるね」
斎藤が目の前に現れた。ニヤリと笑みを向け、じっと堺を見ている。
「体力も落ちてるだろうし、家に帰って休むといいよ」
そう言うと、斎藤は扉を開けて出て行こうとする。ふと立ち止まり、振り返った。
「魔人を一人、殺せたんだってね。感謝しているよ。これからも君の活躍、楽しみにしているね」
パタン、と扉が閉じる。
堺は水槽にもたれかかりながら溶けるように息を吐き、しばらく目を閉じた。
「訳がわかんねぇ… あ! 岡本さん!、タイガくん!、マリナちゃん!」
三人の容体が気になり、堺は水槽から身を乗り出す。机の上に服とタオルが置いてあり、周囲を確認して、慌てて着替えた。
そのまま、いつものマンションへ戻る。
「って、みんなの部屋どこかわかんないや…」
不安を抱えたまま、堺は自室のベッドに倒れ込む。
「体が重いぃ…」
まぶたが落ち、意識が深い眠りに沈んでいった。
――そのころ、王宮の一室では
地の都の王と、メルディア学園校長ナックルが、険しい表情で対話していた。
「本当に始めるのか?」
ナックル校長が尋ねる
「前田が死んだ今、『転』を攻める絶好の機会。体制を整えられる前に叩くべきだ」
王が7つに光る王笏を握り、声を上げる。
「新たな転生者を呼ぶために、どれだけの血が流れると思っている? そこまで魔族が恐ろしいか?」
「田中が死んだ」
王が目線を落とす。
「田中が死んだだと!?嘘を言うな!」
ナックルの言葉に、王はただ目を曇らせることしかできなかった。
「そうか……わかった、アンドレス王よ。我々メルディア学園もこの戦に参戦する」
地の都の王、アンドレス王は頭を下げ、二人は握手を交わした
その後、ナックル校長は王宮を出て、戦いに備えるのであった
アンドレス王は、窓から外を見下ろした。街を行き交う人々の笑顔が、愛おしい。
「斎藤よ…この決断は正しかったのだろうか……」
覇気を失った声に迷いがにじむ。
「堕落した転生者は癌のようなもの。我々はこの世界を救うために生を授かった。この戦いは人類を救うために必要だと考えますよ」
斎藤は王の肩にそっと手を置き、ニヤリと笑って窓の外を見た




