42話 クエスト
42話
「あっ、」
招集部屋に転送した堺
広めのシンプルな空間には、中年の男性が1人、男の子と女の子がいた
男の子は大きな机の上で、ぴょんぴょん跳ねている
「どうも、サッカイ君だよね」
中年男性が話しかけてきた
優しい顔つきに、ふくよかな体、メガネをしており、前世はサラリーマンをしていたんだなとイメージできる
「あ、はい、」
「僕は、岡本 大輔、よろしく」
片手を頭の上に置き、ぺこっとお辞儀をする
「サッカイです、あっ、よろしくお願いします…」
「この人が俺たちのチームに入るひとー?なんか弱そうー」
机の上でだらんと寝ている、男の子が発言した
サッカー部だったのか、刈り上げた髪に、半袖半ズボン、元気いっぱいの悪ガキといった感じだ
「ねぇお兄ちゃん、やめてよ、一緒のチームなんだよ」
そう言ったのは机で本を読んでいる女の子
まるメガネに、髪を二つに結んでいる
真面目な印象だ
「へっ、どうせすぐ死ぬんだろうな~」
「だから、、」
「いちいち、うるせーな」
「なに?間違ったこと言った?」
「ちょっと、ちょっと、喧嘩はダメだよ」
今にも女の子に飛びかかっていきそうな男の子、その時であった
「今回のクエストを発表するね」
斎藤がスッと現れる
男の子は席にサッとつき、女の子はパタン!と本を閉じる
岡本は椅子にヨイショと座った
堺も岡本の近くに座る
「今回のクエストは、この人を殺害してもらうよ」
「!!??」
その言葉に堺が驚き、他の人たちは辛そうにグッと感情を抑える
ササササッ
殺害対象の顔写真が配られた
「なんだよ、これ…」
その写真の人物は、極悪人のような見た目ではなく、元気いっぱいの好青年といった感じであった
満面の笑みを浮かべ、希望に満ちている
「今回は、サッカイ君の初クエストということなので、僕も同行するね」
岡本が、はぁ、と安心したかのように息を吐く
「みんな、この転送石に触れてもらえるかな?」
斎藤が机の上にヒョイっと、転送石を置いた
ボウリング玉サイズで、ズッシリとしている
一同が転送石に触れる
堺は震えながら指先からゆっくりと転送石に触れた
その瞬間、一筋の光が走り、目の前の景色が変わった
森林の中、どこか体が重くなるような感覚を感じつつも、空気の美味しさ、溢れる生命力が身体中を巡る
「今日もうまくいったな、ほんと、お前らとパーティが組めて俺は幸せだ」
「急に何言ってんのよ」
「そうだぜ!俺たちの旅はこれからだろ!」
「あぁ、そうだ、そうだよな」
3人は愉快に話し合っていた
堺は木陰に隠れている状態で、彼らが標的なのか見定めていると、
「標的は真ん中の青年、殺害方法は任せるよ」
斎藤が言葉を発した
「………………………」
堺や岡本、男の子と女の子は顔を見合わせ、数十秒ほど沈黙が続いた
すると、
「今回は失敗ということでいいかな?」
斎藤の言葉に、すかさず岡本が声を上げた
「私が、私がいきます」
「サッカイ君、この子達をお願いします」
「え、あ、はい」
「へっ、俺は必要ないんだろ?終わったら呼んでくれ、」
そう言って男の子がどこかに行く
「お兄ちゃん!1人は危ないよ」
すかさず女の子が彼の手を握ると、
「離せ!お前はコイツらといろ!」
そう言って突き飛ばした
「う、うぅ…」
女の子はシクシクと涙を流していた
男の子はその場を駆け出した
(え、まって!あーくそ、嫌だなー、でも頼まれたしな…)
堺はソワソワと体を震わせて覚悟を決める
「え、あ、斎藤さ、さん、この子をま、守ってあげてください」
「うん、いいよ」
そう言い残し、堺は男の子を探しに向かった
「ありがとうサッカイ君…」
岡本は隠れながら様子を伺っていた
(相手は3人、ただ今回の標的は1人、無駄に命を奪わないようにしたいですね…)
「なんだ、、」
「どうした急に、具合でも悪いのか?」
「いや、そうではなくて、」
「しっかり火は通したんだけど、もしかしたら当たったのかもしれないわね」
「だから、そんなんじゃなくて!」
ガガガガガガッ!!!!
「避けろ!!」
ジャギン!!!
「なんだ!?」
「きぁゃっ!!」
あたり一体が吹き飛ぶ
「っそ、間一髪だったぜ、ってロッタ!!」
「ゔぅっ、交わしきれなかった、2人とも、怪我はないか?」
「私は大丈夫…でもロッタ、腕が、、」
「ゔっ、無傷ならよかった、俺は大丈夫だっ、とにかく戦闘体制を…」
3人は武器を持って構えた
女性は回復魔法を使ってロッタの止血を行う
砂埃がだんだんと晴れ、
(獣人か??いや、それにしては魔力が桁違い過ぎる……ってことは!)
「魔人!!」
「なんだって!」
「それだとまずいわね…」
3人の前に岡本が立つ、筋骨隆々の体に、狼男のような見た目、赤眼は夜の森でも淡く輝いている
獰猛さはなく、紳士な佇まいである
「何が目的だ!!!」
ロッタが叫ぶ
岡本はロッタに手を向け、
「あなたの命を、奪う、それが、目的です」
人間の時よりも低い声質で、一言一言に圧を感じる
「くそっ!、、2人とも逃げてくれ…」
「!? 何言ってんだ!!お前1人置いて逃げる?笑わせんな!」
「そうよ、私達はどんな困難だって超えてきた、これもその1つにすぎない!」
「違う、違うんだ!お前たちはわかってない!!コイツが、どれだけ異次元か!もう立っておくので精一杯なんだよ!!だから頼む、、この場から逃げてくれっ!!」
ロッタは震える足を必死に落ち着かせる
「それでも、お前の判断が正しくてもな、俺は見捨てない!断固としてここから逃げる気はない!!」
グッと地面を踏み締め、ニッと笑い、鼻息を荒げる
「いつもロッタは正しい判断で私たちを導いてくれた、今度は、私が貴方を導く!」
希望の眼差しで杖を構えた
「2人とも………あぁくそぉ!!!そんならやってやるよ!やってやるよこんちくしょうがぁ!!!」
ロッタが剣を握りしめる
「それでこそロッタだ!!」
「やっといつもの調子に戻った」
「うるせー!後悔しても知らねーからな!!」
3人は一致団結!岡本に立ち向かう
「ロッタ!!ロッタ!!!!」
「なんで、なんでなの…」
体のほとんどを損壊したロッタに2人が駆け寄っている
女性は放心状態で、ひたすらに回復魔法をかけ続けていた
男性は混乱しており、この世界は夢であると信じていた
無傷の岡本は、帰還命令を今か今かと待っている
その時、
「うあ゛ぁぁ!!!!」
男性が狂ったように襲いかかってきた
(頼む、来ないでくれっ!!)
岡本の手が震え、一粒の涙がこぼれる
「上出来だね」
斎藤が音もなく現れた
襲いかかってきた男性の肩に、サッと触れる
ドサッ!!
男性は気絶したかのように息絶えた
「ナイン!ナイン!!!」
女性が声を上げて叫ぶ、涙でぐちゃぐちゃになり、精神が崩壊している
「活かしておいても面倒だし、」
斎藤は女性の目の前に立ち、その頭に触れた
女性は、スン…と息を引きとった
斎藤は真っ黒な手袋をはめて、岡本に、「皆んなを連れてきてもらえるかな?」と指示を出す
岡本によって全員が集まった
無惨に殺害された死体に、苦しみの表情を浮かべる一同
「よし、帰ろっか」
斎藤の言葉に、皆は従う
王都に戻り、解散、と告げられる
そのあっさりさに現実なのかと疑ってしまう堺
「お疲れ、サッカイ君、……」
堺は岡本の声に反応することができず、フラフラと部屋に戻った
食事をすることはなく、布団の中で、ただ、震えていた




