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32話 田中一成  リアム

32話 田中 一成

田中の投げによって、ふんわりと弧を描くオーガ、そのまま上空に飛んでいった

 ウォーー!!

 雄叫びが遠くに消えていく


 ボン!と森の奥地で音がした、地面に激突したんだろう


 ギル達は一瞬の出来事に声が出せずにいる


 (さてさて、久しぶりに楽しみましょうかね)


「少し待っていてください。あ、逃げたら皆殺しですからね」

 田中が楽しそうに微笑む

 すると、膝を曲げて勢いよくジャンプした

 グゥン!

 地面が波打ち、まっすぐ急上昇していく

 

「どれどれ〜」

 片手で日光を遮りながら周りを見渡す


「お、あれかな?」

 空気を蹴っ飛ばし、オーガがいる場所に落撃しにいった

 その時、真っ赤な物体がレーザーのように飛び出してきた


「やりますね」

 急接近する物体を何事もないように殴り飛ばす

 それはまるで、目の前で飛んでいる虫を振り払うようにスムーズであった

 二つの流星が地面に激突

 ド!ドン!!!!


 「ぅ、ゥウウウ」

 ビクビクと痙攣するオーガ

 その背後にネクタイを整え直した田中の姿があった


「おや?顔の形が戻っていく、、」

 ニヤリと笑みを浮かべる田中


 ものの数秒で完全回復したオーガ、そして

「ウゥゥゥオォォォ!!!!」

 激怒の発狂、常人であれば鼓膜が破けちっている程、破壊的な声量だ

 森の動物が次々と生き絶え、鳥が雨のようにポツポツと降ってきた


「これ以上、森に被害を与えるわけには行きませんね」

 (とは言ったものの、出力をあげて攻撃すれば逆に被害が出てしまう、、あ!引きちぎって細々にすれば!でも、体液がスーツに付くのは嫌ですね、、どうしたものでしょう…)

 田中が顎をさすってうーんと考える


「そうだ、ブラックナイトさんに細切れにしてもらいましょう!」

 ポンと腕をつく

 瞬間、残像を残しながらオーガ迫る!

 ブウゥン!!!!と重厚なラリアットをかました!

 格段に威力が上がっており、空と大地が震え上がる程であった 

 ――――――

 

 祝福の森付近にある町、そのひとつの家で、

「婆さんや、今揺れたか?」

「はて、揺れたかのぉ?」

 ふたりは揺れた、揺れてないと話し合った後、いつものように、穏やかに食事を楽しんだ


 ――――――

 田中はオーガのラリアットを防御せざる終えなかった


「す、スーツが、」

 オーガの攻撃によって上半身のスーツが吹き飛び、彫刻のように引き締まった体があらわになる


[[出力20%]]


 田中からドボッ!!!っと溢れる魔力

 ズサっと後退りするオーガにビュン!!と近づいて喉仏を握りつぶした

 ボォォン!!と森を吹き飛ばす踏み込みで、遥か彼方まで飛んでいく

 空気抵抗で皮膚がちぎれそうになるオーガ

 田中は祝福の森を爆速で移動、あっという間に森の中心付近まで辿り着く


 

 祝福の森には祝石という、森に恵みをもたらし続ける魔法石がある

 森の恵み以外にも、森自身が自己防衛の為に魔物を生み出し、加護を与えて祝石の警護に充てている

 バイオーガもその1人で、実力はトップクラス

 だが、祝福の森には絶対的な守護神がいる

 それがブラックナイトである

 10メートルにもなる暗黒の大剣を構え、祝石に近づく者を細切れにする

 そして、ブラックナイトは森が生み出した魔物ではなく、始祖の魔王を森の加護によって生き返らせた姿なのであった



「これ以上は近づくな、ですか」

 田中はギュン!!と急停止

 膨大な魔力を、垂れ流す燃料のごとく使って宙に浮き、はるか先を見つめる

 その先50kmの場所に、ブラックナイトが静寂と同化していた


 発狂しながら抵抗するオーガの喉仏を握りつぶし、さらに力を込める

 そこから腕を引き、槍投げのようにして、オーガを天高くぶっとばした!

 オォォォォォ!!!!

 オーガは宙で暴れる猫のように、グネングネンと体をこねくり返すが、なんの意味もなく空の星になった

 赤色の虹がかかる

 オーガの落下地点はジャストで祝石であった

 オーガが祝石に激突、、瞬間、ブラックナイトが大剣をグオン!!と振り上げた


 天に昇る闇の魔力が、暗黒龍のごとくオーガを包み込む

 

 オーガは、再生を許されなかった

 


「お気に入りのスーツでしたのに、」

 肩を落として、あるはずのないネクタイを思わず直す

「あらら」

 はぁ〜と息を吐いて、タイト達がいる場所にソニックブームで向かった



 「逃げるぞ!」

 ギルが叫ぶ、田中が飛んでいって10分後のことだ


 ギルがラルトを背負い、ロアがリュロに肩を貸した

 

「お、俺は残るよ、」

 タイトの声は震えていた


「何言ってるのお兄ちゃん!?逃げるよ!」

 ロアが声を荒げた


「そうだ!今なら大丈夫だ!!アイツもただでは済まない、、それに応援も来ているはずだ!」

 

「魔王軍だなんて、絶対許さないんだから、」

 リュロが壊れた腕を押さえながら、赤くなった目を向ける


「タイト、お願い…」

 ラルトは静かに涙を流した


 タイトが唇を噛んだ


「お、俺だって、俺だって逃げたいさ!!!でもよ、わかるんだよ、ここで逃げたら自分が死ぬよりも辛いことが起こるって、だからさ、頼む、頼むよ!!!」

 肩を揺らすタイト、すかさず目元を袖で拭う


「ダメだよ、お兄ちゃん、ずっとそばにいてくれるって約束したのに!嫌だよ!!嫌だよ!!!!」

 ロアは声を出して泣いた、大声を出すタイプでもなく、人前で泣くのは死ぬほど恥ずかしがるのに、今はそんなこと全て取っ払って、ただ、タイトに逃げてほしい、その思いが止まらないのだ


「ろ、ロア… 」

 タイトの唇から血が滴った

 


 カツ、カツ、カツ

 革靴の足音が、静まり返った森から聞こえ出す

 

















 

 

 一方で転の地、アルファでは

 

 堺が日々のトレーニングを頑張っていた

 それを見守る、前田ことシュベルツ

 (そろそろ魔法の訓練にうつりましょうかね、)

 ふふーんと笑い、今後を考える

 しかし、いつも頭によぎってしまう、彼女のことが、自身の定めた使命感が、彼を不安にさせた

「真希 楓...」

 そう一言こぼし、拳を握りしめた


「っはぁ!っはぁあ!!ま、前田さん、、今日はもうっ!!」

 堺は広大なフィールドにゴロンと転がり、仰向けになる

 整備されたザラザラとした地面がひんやりして心地が良い


「そうですね、今日の訓練はこれ以上にしましょう」

「ま、前田さん!」

 堺は苦しみから逃れれると思って笑顔になった


 シュィン!


 男性が一人、堺と前田の正面にテレポートしてきた

 彼の正体は和田 海成であった


 糸目をこちらに向け、少し険しい表情を浮かべる

 驚く堺を横目に、前田に顔を向けた


「急にすんません、率直に言うと、リアムはんがお呼びです」


「リアム…わかりました、堺さんは部屋に戻っていてください」

 覚悟を決めたかのような眼差しで答える


「いや、堺くんにもお呼びかかってまして、」


「そ、そうですか、」

 ふぅ、と息をこぼす前田


 和田は「それなら行きますね」と二人の肩を優しく触る


「え、え!?」

 トン、と目の前が急に変わり、堺が動揺している


 周りは大きなガラス張りで、アルファ内を一望できる

 どうやら、要塞の上にある建物のようだ

 部屋の中央には近未来の机があり、電気系統で表示された四つの大陸が、宙に表示されてある

 堺の真後ろは両扉で、堺の正面に長方形の机、そしてその先に、リアムがいた


 ドン!と椅子に構えて手を組み、静かにこちらを見定める

 

 彼は筋骨隆々な体を黒紫のスーツに納めており、分厚いジャケットを羽織っている

 顔つきからは勇ましさを感じ、金色に荒々しく逆立つ髪と、鋭く威圧感のある眼差しが、彼の闘志を表しているようだ

 瞳の中には稲妻の模様が刻まれており、見られるだけで全身がビリビリと警報を鳴らす


 (な、なんだよ、この魔力っ!首元が締め付けられるような、ビリビリする!)

 ゔっ、と喉を鳴らす堺


「そんなとこで突っ立ってないで、座って話そうや」

 重くのしかかる声に、堺の足が震える


「堺さん、大丈夫ですから、」

 握った拳が解けない前田であった


 二人が席に座る


 沈黙が流れる、最初に口を開いたのはリアムであった


「そいつが新しい住人か?」

 前田に視線を送る


「はい、そいつではなく堺 誠さんです」

「すまんすまん、堺だな、これからよろしく頼むぞ」

「え、あ、、はいっ、」

「それと堺よ、特質は時間操作と言ったところか?」

「とくしつ??あ!え、えそ、そです」

「すごいじゃないか!!ちなみにどういった能力なんだ?」

 堺が前田をみると、前田は安心してと言わんばかりに微笑んでいた

「え、えっと、死に戻り、、です」

「し、死に戻りか…」

 リアムは前のめりになった体を椅子に戻した、深く息を吐き、凛々しい眉毛が柔らかくなる

「そうか、それは分かったとして、前田、その魔力はなんだ?」

 リアムの表情に阿修羅が宿り、額に青筋を浮かべる

「リアム、これは、、本当に申し訳ない」

「わかってんだろ??人類が、魔王軍が、ここに攻めてこねぇ理由をよ、前田、お前が万全だったからだ」

「なのに、なんだよその魔力量!!そこらの転生者と変わんねぇじゃねぇか!!!!あぁ!!??」

 リアムの膨大な魔力が、アルファ全体を揺らした

 チカチカと停電のような現象が起き、すぐさま灯がともった

「ひ、ひぃ!」

 顔を隠す堺


「返す言葉もありません、」

「ま、ま前田さんっ」

 頭を下げながら何も言い返せない前田を見て、悔しい気持ちになる堺


「ちがっ!まえだ、さんっは、僕をっ、すくっ救う、ためにっ!」

 ゴニョゴニョと言葉を発し、ほぼ天井を見ながら話す堺


「そんなことはわかってんだよ、、まあいい、前田、お前のやり方は今日で終了だ、こっからは俺のやり方で行く」


「でも、それでは戦況を悪化させることになってしまう」

「俺だって平和的な解決を望んでいる、だけど仕方ねーだろ、もういつ誰が攻めくるかわからねぇ状況だ、だからこそ、こっちから先手を打つ」

 前田は何も言い返せず、それを見たリアムはため息をついた

「話は以上だ、今後の戦闘に備えておけ」


 その言葉を最後に、トン、と目の前の景色が移り変わる


 「リアムはんも切羽詰まってるんよ、理解してあげてな」

 前田の肩にポンと手を置く和田


 堺がフッと振り返ると、「ほな、俺はこれで失礼します、それと堺くん、リアムはんに口答えするとは、なかなかやるやん、見直したわ」

 和田はニッと笑ってそそくさとテレポートした


「ちっ」

 前田が不意に舌打ちをする

「ま、前田さん?」

「あ、あー!すいません、ちょっと考え事をしていました」

 

 二人はそのまま部屋に戻ることに決めた

 前田は部屋に戻る間、考え事をしている様子であった


 堺の部屋に着き、

「ふぅー!つっかれたー!」

 堺がボフンとベットにダイブする


「堺さん!」

 急に前田が口を開く

 

「え、あ、はい!」

「これから、戦が始まります」

「は、はい…」

「堺さんも参戦する可能性が高いです」

「ま、まじすか、」

「マジです」

「ま、前田さんも参加、するんですか?」

「はい、参戦せざる終えない状況です」

「で、でしたら!前田さんと!お、同じ部隊?になりたい!です、」

「もちろん、その予定です」

 堺の顔に笑顔と安心感が戻った

「明日から魔法の練習をするはずだったのですが、時間がありません、堺さんには魔導具をマスターしていただきます」

「ま、魔導具ですか!!」

 堺の心臓がドクンと鳴った

「はい、ただ、今日は魔導具を販売しているお店が閉店しているので、また明日、いつもの時間にお尋ねします」

「あ、明日〜」

 堺の興奮が、風船の空気が抜けるように落ちていく

「落ち込まない、明日からは魔導具の訓練も始めます、ですので、しっかり寝て、体力と魔力を回復させるように!」

 微笑む前田に「はい!」と元気よく返事をした堺であった

 

 

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