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30話 祝福の森

30話

「パパ!!行かないで!」

 幼いリュロが片腕を力いっぱい伸ばした


「大丈夫。パパは必ず帰ってくるから」


 リュロの父親は「心」大陸での戦争に出征しなければいけなかった


 激化する魔転人戦争に人類国が劣勢になった為、地の国で徴兵が始まる


 Bランク以上の冒険者が強制参加させられ、リュロの父親はAランクだ


 人々の期待を裏切るわけにもいかず、家族にお別れを告げる


 「あとは頼んだ」

 そういって深々と帽子をかぶって扉を開ける


「あなたっ」

 リュロの母親が声を漏らす、彼女の目尻は垂れ下がり、紡いだ唇は震えていた


 しかし、目に輝きが灯る


 彼なら大丈夫、どんな困難も越えてきた、その活躍を側で見続けた

 私が信じなければ誰が信じるんだ

 

 リュロの母親は深々と礼をした


「ありがとう、」


 彼は振り返ろうとする足を指先で踏みとどめ、鉛のような重い足で歩み出す

 鼻を啜り、拳からは血が滴っていた


 ―――――――――――――――――――――

 

 そうして時が経ち、魔転人戦争の徴兵に終わりが告げられる

 

 火属性を司る転生者が戦争に参加した為、人類の戦力に余裕が生まれた為だ

 

 そして、父親の帰りを待つ二人の元に、一人の兵士が尋ねてきた

 

 兵士の一言で、母はひざから崩れ落ちる


「彼は民の平和を想い、家族の幸せを願って、魔族の脅威に屈せず、勇敢に戦い続けました」

 兵士の声は震えていた


 幼いリュロは言葉を理解することはできなかったが、何が起こったのかを心で理解する


 母はリュロを優しく抱きかかえ、静かに肩を揺らす


 リュロは涙をポタポタと流し、声が枯れるまで叫び続けた

 それは、父に会いたいという心の叫びであった

 

―――――――――――――――――――――

 

 (魔族を、魔王を殺す、母のために、父のために)

 光沢を帯びた綺麗な爪にヒビが入るほど、拳を握りしめた

 

「おいおいどーした、辛気臭い顔をして〜」

 ギルが目を細めて、口角をあげる


「何?別に普通だけど、」

 斜め上をチラリと見て、組んでいる腕の人差し指をトントンと動かす


「あ!まぁまぁ、そろそろ目的地につくわけだしさ〜、仲良くいこうぜ!」


「そーだよ!仲良く仲良く!」


 タイトとラルトは「なっかよく!なっかよく!」とお互いの肩を組み合いながら口ずさむ


「うん!うん!」

 ロアがリュロに顔を向けて頷く


 五人は地の都から馬車でまっすぐ続く高原を進んだ

 数時間すると、

 崖下には緑色の海がどこまでも広がっており、それはなんと一つの森であった


 大波のように見えるその凹凸は、複数の巨大樹の集まりだった


 五人は馬車を降りる


 ラルトが転がるように馬車を降りて、タイトもすかさず降りる


「すごーーーい!!」

 ラルトが体を前のめりにする

 その声はどこまでも遠くに向かい、帰ってくることはなかった


 タイトはその場で固まっている

 心は踊っているはずなのに、なぜか足が震えているような気がする

 

 景色を見たリュロは「圧巻ね、」と言い、爽やかな風と重なるような深呼吸を繰り返した


 ロアからは一粒の涙がしたたる、すぐさま袖で拭い、鼻をすすって、甘味のある空気を体いっぱいに取り込む


 ギルはラルト達の反応をじっくり見た

 そして、じわりと目を細め、壮大な森の先を見つめる

 体をほんの少し丸めて、はぁ〜と小さくため息をついた


「あ〜、いけねーいけねー」

 目頭をグッと抑えてラルト達に、


「お前ら〜観光しにきたわけじゃないからな、森に続く道はこっちだ〜、ついてこい」


 ラルトがノリノリでギルについていき、そこからリュロとロアが、遅れてタイトがついて行く

 

 沈黙が続いた為か、ギルが咳払いをして、森について説明を始めた


 

 現在歩いている森は、祝福の森と言い

 地の国と火の国、その間に覆うように広がっている

 

 凶暴な魔物や魔族が自然発生する場所であるそうで、地の国から直進して火の国に行くことが困難となっている

 

 馬車で直進できれば一ヶ月ほどで抜けられるところを、迂回することで一年以上かかってしまう

 それほどまでに森は広大であった


 森の中心に近づけば近づくほど強力な魔物が存在し、森の中心には祝福に満ち溢れた魔石、祝石がある

 

 祝石は木々や水、空気などに溢れんばかりの恵みをもたらしているそうだ


「ってな感じだ、どうだ?ワクワクするだろう?」

 ギルの口角が上がる


「そんな凄い魔石があるんだ!盗まれたら大変だね!」


「そうだな〜、盗まれちまったらこの甘い果実も、そこの透き通る川も、ぜーんぶダメになっちまう」

 ギルは水色の果実をカシュリとほうばる


「あ!先生いつの間に!」

 ラルトのほっぺが膨らむ


「あ〜わりぃ、ほれ、お前らの分だ」


 そういって四つの青い果実を同時に投げる


 皆キャッチして、ラルトが迷わず喰らいつく


「うんまい!」

 頭をブンブンと振って、口角が自然と上がる


「うま!!」

 肌が明るくなるタイト

 カシュ!カシュ!と頬張り、一瞬にしてなくなった


「美味しい、」

 リュロが小さい口を広げて食べている


「うん!」

 (グレープのような甘さにりんごのような食感、極め付けはこの果汁!たまらない!)

 ロアがタイトに負けず、カシュカシュと果実を食べる


「これも冒険の醍醐味だな、よーしお前ら気合い入れて行くぞ!」


「はい!」

 

「おう!」

 

「ええ、」

 

「うん!」


 タイト、リュロ、ロアの緊張が解け、会話が弾むようになった


 ギルの笑顔は自然なものになり、冒険を心から楽しんでいる


 そして、そのまましばらく歩く、先頭にいたギルが立ち止まり


「この辺でリザードマンが目撃されたらしいが、」


 五人は周りの木々を見渡した


 すると、ラルトが、

「ねぇ、あそこに赤い木が立ってるよー」


 皆がどれどれというと、確かに木々の奥に赤い木が二本たっている


「さすが祝福の森だな…またうまい果実でもあるのかな?」

 タイトのお腹がなる


「ほんと食いしん坊なんだから、」


「たしかに、お兄ちゃん食べ過ぎ、お金、すぐなくなるよ」


 タイトがエヘヘと頭をさする


 

「逃げるぞ、今すぐ逃げるぞ」

 ギルが目を見開き、ズロっと後退りする


 四人は困惑していたが、それがなぜだかすぐにわかった


 皆が注目していた二本の木、それは、巨大な足であった


 その真っ赤な足が、こちらに一歩ずつ近づいてくる


 草木のパキ!キシ!バキ!という音が重なる


 地響きが大きくなり、奴、が走ってきているのがわかった


「お前らだけでも逃げろ!!」

 ギルは立ち止まり、右腰につけている魔道具からダガーのような両手剣を引っ張り出した







一方その頃、転の大陸。転生者達の拠点であるアルファでは、


堺 誠が、汗水を垂らして地下のグラウンドで這いつくばっていた


「もう無理、むりむり!」


咳き込み、大の字でうつ伏せになっている

今にも溶けそうだ


「さかいさーん!今日のノルマ達成しなかったら、お昼ご飯なしですからねー!」


はるか先にいるシュベルツこと前田 明が、オーイと微笑むような笑顔で声をかける


「ろくに飯も食えない、毎日走ってばっかり、つらい、帰りたい、家に帰りたいいい」

目を赤くして、ヨロヨロの声を絞り出す


堺は震える足でなんとか立ち上がり、強くなるために、最強を目指して走り出した


 

 


 

 


 

 


 


 

 

 

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